勝利の占有率約38%の新潟を分析
デビュー5年目を迎えた菜七子騎手は春の福島でJRA通算100勝を達成。騎乗する姿、道中での馬との呼吸、最後の追うフォームまで見違えるほどカッコよくなった。冬の小倉ではケガも経験したが、着実に騎手として階段を駆けあがっている。
JRA唯一の女性騎手、その人気はまったく衰えることがなく、競馬学校に入学する女性も増えるなど影響力も変わらない。注目の的だけに、馬券的には実は買いにくいところがある。馬の評価より人気になる、いわゆる過剰人気が目立つ。どうにか菜七子騎手と上手に付き合う(あくまで馬券的に)方法はないだろうか。
馬券的な傾向を通算【109-125-90-1959】(7月20日終了時点)、全109勝中41勝、勝利数における占有率なんと約38%の新潟を例に検証することにした。データは16~20年春までの新潟成績を使用する。
まずは芝とダートの成績を比較する。新潟では芝263レース、ダート269レースとほぼ同数ぐらい騎乗、芝17勝(勝率6.5%)、ダート24勝(勝率8.9%)とややダートの勝利数が多いようだが、どちらがどうということはない。
ちなみに全勝利数は芝40勝、ダート68勝で新潟は全体と比較すると芝ダートの差が少ない競馬場になる。
つづいて芝の距離別成績である。騎乗数を加味すると、直線1000mが勝率ではダントツの【8-4-2-52】勝率12.1%、複勝率21.2%。17勝中8勝の直線1000m戦はあとで掘り下げるが、その前に芝1200m【3-4-2-19】勝率10.7%、複勝率32.1%と短距離戦に強いという特徴がある。
2キロ減という女性騎手減量特典が生きているのもあるが、1400m【0-1-3-31】と新潟芝1400未勝利は気になるところ。短距離といっても1200m以下限定、この線引きは非情ながらきっちりしたい。また、1600m【0-0-2-40】と未勝利、1800m【2-4-3-25】、2000m【2-1-1-41】で2200m以上は全体数が少ないこともあるが率が反転して上昇する。
お気づきだろうか、新潟競馬場は1600~2000mは外回り、2200m以上は内回りになる。どうも直線競馬は十八番でも直線が600m以上ある外回りは得意とはいえない。
新潟だからと手を出すのではなく、直線1000m、1200mで買い、1400~2000mは様子を見るという冷静さを忘れたくない。では直線1000m戦を掘り下げよう。まずは前走着順別成績だ。
なんと、前走4着馬は【3-0-0-0】のパーフェクト中。残念ながらデータは見つけたときにウラが出るという格言もあり、これが継続するとは限らないものの、ひとまず直線1000mで前走4着馬はマークしよう。
5着【0-2-0-6】、6~9着【2-0-1-8】、10着以下【3-0-0-29】と前走敗退した馬を直線1000mで復活させるという特徴がある。反対に主に昇級馬にあたる前走1着【0-0-0-4】は振るわず、2着【0-2-1-2】は勝利こそないが馬券圏内に持ってくる。
次は直線1000mにおける前走脚質別成績と脚質別成績だ。前走で中団より前だった馬に乗り、直線1000m戦で一発逃げ、もしくは一転先行させるという特徴がある。直線1000mが得意だというのはうなずけるデータだ。
このコースの攻略法をつかんでいるからこそ、前走脚質にこだわらず積極的な競馬を仕掛けるわけだ。逃げは【5-1-1-4】勝率45.5%、複勝率63.6%、この積極性が菜七子騎手の長所。だからこそ新潟の1000~1200mの成績がよく、ダッシュ力が命の短距離戦において逃げ、先行で好成績を収めるのは彼女のスタートセンスが極めて高いことを示している。
同時にスタートの比重が短距離戦より下がる外回り戦(向正面が長くいくらでも挽回できる。出遅れが多いデムーロ騎手は得意コース)ではその長所を活かせないのだろう。今後は必ず克服すると信じながら、現状は短距離戦で勝負をかけたい。