上がりのかかる特殊なGⅠ
宝塚記念は、他の主要なGⅠレースとは異なる特殊な傾向がある。それは「上がり3Fがかかる」ということだ。論より証拠で、まずはデータをご覧いただきたい。

主要なGⅠレースと比べると、天皇賞秋、大阪杯、ダービー、ジャパンカップが34秒台に対して、宝塚記念は平均の上がり3Fが35.7秒と遅いのがわかる。この要因としては、
・直線が短い内回りコースで行われる
・開催の最終週で、馬場が荒れていることが多い
・6月末という開催時期が梅雨と重なり、含水率の高い馬場
という3つが考えられる。宝塚記念と同じく上がり3Fの平均が35秒台となる有馬記念も同様の傾向があり、それゆえ、”グランプリホース”と呼ばれ、両GⅠを得意とする馬が誕生する。
具体的に言えば、昨年もリスグラシューが両グランプリを制覇したし、ゴールドアクターは有馬記念を8番人気1着、宝塚記念を5番人気2着と、人気以上に好走し、その適性の高さを示した。ゴールドシップやグラスワンダーといった名馬たちも、上がりがかかる流れを得意としていたため、”グランプリホース”に輝くことができたのだろう。まずはこの傾向を頭に入れて、以下の章を読み進めていただきたい。
ステイゴールド産駒が過去10年で4勝
宝塚記念でステイゴールド産駒が強いことは、競馬ファンなら何となく知っていることだろう。ゴールドシップ(2勝)、オルフェーヴル、ナカヤマフェスタと、この10年でも4勝を挙げている。ステイゴールド産駒は、重い馬場を苦にしないガッツ、内回りのタイトなコーナーもうまく回ってこられるピッチ走法、などがレースで問われる適性と合致して好走していることが考えられる。
『そんなこと知ってるし、そもそもステイゴールド産駒がもう少ないだろ!』という声が聞こえてきそうだが、ここで伝えたいのはそれだけではない。「ステイゴールド産駒が得意なレース」ということから、様々な考察が広がるのだ。
切れるサンデー系は軽視
反対に、速い上がりの瞬発力勝負を得意とするサンデーサイレンス系は、本質的には宝塚記念には向いていない。ステイゴールドもサンデーサイレンス系だが、瞬発力よりも持久力に優れて”サンデーぽくない”ため、適性は異なる。
サンデーサイレンスの後継種牡馬でもあるディープインパクトの産駒も、宝塚記念で好走した馬と言えば、ヴィルシーナやダノンバラード、マリアライトなど、持久力勝負に強く、”サンデーぽくない”馬たちだった。さらに11番人気で3着に激走したショウナンパンドラも、ディープインパクト産駒ではあったが、おじにステイゴールドがいる牝系で、内回りの秋華賞なども制しており、持久力勝負に強い馬であった。

データだけを見ると、【1.2.4.18】で回収率も優秀。こう見ると宝塚記念でもディープインパクト産駒は狙えるような気がする。ただ1頭1頭を見ていくと、同じディープインパクト産駒でも個性はさまざま。世間の認識でもある、「切れるディープインパクト産駒」は好走しにくく、GⅠ7勝を挙げた名牝ジェンティルドンナでさえも1番人気で3着に敗れていることが、このデータの本質だと筆者は考える。
競馬において、データや統計は大切だが、データの切り取り方次第で、見解も大きく変わってしまう。1頭1頭の個性を見たうえでデータを分析することで、未来の的中につながるのだ。
必要なのは、持久力、重い芝をこなすパワー、小回り適性
まとめると、宝塚記念を予想するときには
・上がりがかかるレース
・道悪や時計がかかる馬場
・直線が短いコース
の3つの実績に注力して予想するのがいい。またステイゴールド産駒が好走していることから、父にステイゴールドを持つオルフェーヴルも産駒も今後はトレンドになっていく可能性がある。
今年はステイゴールド産駒のスティッフェリオだけでなく、オルフェーヴル産駒のラッキーライラックの走りにも注目したい。そしてディープインパクト産駒ながら唯一勝利したマリアライトのいとこにあたるダンビュライトも、母系が宝塚記念に高い適性があると予想できそうだ。
ライタープロフィール
鈴木ショータ
競馬伝道師。競馬エイトトラックマンを経てフリーに。オリジナルのweb競馬新聞「PDF新聞」を毎週発行。根っからの大穴党で、馬券格言は「人の行く裏に道あり”穴”の山」