女王に迫るディープ包囲網
2020年5月17日(日)に東京競馬場で行われる第15回ヴィクトリアマイル。1週前登録が出て、まずアーモンドアイの名前を確認。その後にぼーっとメンバーを眺めていると、やたらとディープインパクト産駒が登録していることに気づいた。
数えてみると、登録馬19頭中9頭が該当。いやいや、確かに昨年もディープインパクト産駒が7頭出走していたけれども、今年はさらにその上をいくのか。そういや、第1回ヴィクトリアマイルはサンデーサイレンス産駒が10頭出しをしていたような。
その時は同産駒が1~3着を独占したのだが、果たして今年はどうなるのか。今回も2010年~2019年に行われた10回分のデータを中心に検証していきたい。

先週のNHKマイルC、今週のヴィクトリアマイル、そして6月7日に行われる安田記念。東京マイルのGIが短期間で3つ行われる。安田記念の参考にもなるので、2010年以降に行われた東京マイルGIの種牡馬成績(今回登録している馬のみ)を調べてみた。
最多はディープインパクト産駒の7勝。続いてクロフネ、ダイワメジャー産駒の3勝となる。2位のクロフネは勝率、連対率ともディープインパクト産駒を上回っており、相性のいい条件といえるだろう。今年の出走馬でクロフネ産駒はビーチサンバただ1頭だけ。ちょっと注目してみたい。

今度は、2010年以降に行われた牝馬限定の芝GIにおける種牡馬成績(今回登録している馬のみ)も調べてみた。こちらも1位はディープインパクト産駒で21勝(2018年に京都で行われたJBCレディスクラシックを含めると22勝)。

確かに出走頭数も断トツで多いのだが、続くのがダイワメジャー、ハービンジャー、ロードカナロア産駒の3勝だから、牝馬GIで圧倒的な存在だといえるだろう。
年明け初戦の好走例はないが……

人気となるアーモンドアイ、ラヴズオンリーユーの2頭が出走して来る限り、出走間隔については触れないわけにはいかないだろう。最もオーソドックスなのは前哨戦を使い、中3~8週でここへ挑んで来たパターン。【10-8-8-99】で、1着馬の全て、またほとんどの馬券対象馬がこれに当てはまる。
一方、中9週以上開いてしまうと【0-1-0-13】。最も長い出走間隔で連対したのは2015年のケイアイエレガントで、京都牝馬Sから中15週でのもの。注目の年明け初戦は【0-0-0-4】。この4頭のうち3頭はGI馬、もしくはGI2着の実力馬だった。
今までなら「実力馬2頭を消せる!」と喜んで飛び付くデータだが、今年だけでも皐月賞で年明け初戦の馬がワンツー、天皇賞・春でも年明け初戦の馬が勝った。近年の傾向からいえば、むしろプラス評価を与えていいローテーションとなる。
問題は両馬とも当初から予定されたローテーションではないということ。実際に昨年の有馬記念のアーモンドアイは、予定していた香港を回避から挑んで敗れた。もちろん、敗因はそれだけではないのだが、予定通りのぶっつけでないし、やはりデータを重視している限りは本命にはできない。
なお、中2週で挑んで連対したケースも過去にはあるが、今年は該当する馬がないので割愛する。

前哨戦で有力なのは阪神牝馬S組。勝率、連対率とも高いとはいえないが、8連対しており最大派閥となっている。続いて中山牝馬Sで、3連対ながら勝率、連対率では高い数字を誇っている。
以下、高松宮記念、京都牝馬S、ダービー卿CTがそれぞれ1連対。なお、昨年ダービー卿CTを経て2着となったプリモシーンは、今年も同じローテーションをたどっている。


年齢では4歳馬が6勝、2着7回とほかの世代を圧倒している。また、東西所属別だと、美浦3勝に対して栗東が7勝と西高東低。特に、美浦所属馬は4歳馬しか勝っていない。
このレース荒れる、の前提で

最後に前走着順を見ると面白いことが分かる。前走1着馬が【0-1-2-34】と全く勝てていないのに対し、前走5着に敗れている馬は【7-5-2-78】と結構な頭数が巻き返しに成功している。
要するに、前走着順はうのみにできず、荒れる可能性が高いということか。現にここ8年で6度の馬単万馬券が出ており、残る2年も7,000、9,000円台と本命決着とはいえない配当が出ている。
冒頭で書いたように、今年もディープインパクト産駒が多数出走している。サンデーサイレンス産駒が10頭出走した第1回は1~3着まで独占、ディープインパクト産駒が7頭出走した昨年も2着に来ていることから、9頭出走している今年は悪くても連対は確保するとみて、ディープインパクト産駒から軸を選択。
さらに「4歳馬」「栗東所属(4歳馬なら美浦所属もOK)」「阪神牝馬Sか中山牝馬S経由」、そして荒れることを前提に「前走5着以下」を満たしている馬を抽出。この全てに該当するのがコントラチェックとダノンファンタジーだけとなった。
どちらを上に取るか。2010年以降における東京芝1600mのGI、および牝馬限定の芝GIの騎手成績を調べてみると、意外なことに武豊騎手が未勝利。今回はこの条件でも好成績を残している川田騎手騎乗のダノンファンタジーを軸に指名する。
騎手成績を調べて気づいたが、牝馬限定のGIでひときわ目立つ成績を残しているがルメール騎手。トップの9勝を挙げており、勝率、連対率ともに3割台のハイアベレージ。同様に東京芝1600mのGIでも好成績を残している。
今回騎乗するのはアーモンドアイだ。有馬記念の時は予定外の出走、コース形態への不安、そして何より相手がそろっていたことからノーマークにできたが、さすがに今回は同じようにはいかない。ラヴズオンリーユーも同様。こちらはディープ産駒で栗東所属、しかも4歳馬。押さえた方が無難だろう。
あとは「クロフネ産駒」「4歳馬」「栗東所属」「阪神牝馬S組」のビーチサンバも注目の1頭だ。
もう1頭挙げるならノームコア。高松宮記念組が勝ったのは過去に2015年のストレイトガールしかいないのだが、当時が香港で好走→高松宮記念で大敗からの巻き返しだった。
今回のノームコアも同じパターンで、しかもこのレースを勝つとストレイトガールと同じくヴィクトリアマイル連覇となる。偶然にしては重なりすぎているような気が?
◎ダノンファンタジー
〇コントラチェック
▲ビーチサンバ
△ラヴズオンリーユー
×アーモンドアイ
×ノームコア
《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。東京で5週連続GIが行われていますが、距離は2パターンだけ。物足りないと思うのはぜいたくな悩みですかねえ。