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【天皇賞春】大阪杯がGⅠに昇格して割を食ったのは日経賞!今年も厳しい戦いが待っている?

2020 5/2 06:00東森カツヤ
2020年天皇賞春前哨戦インフォグラフィックⒸSPAIA

ⒸSPAIA

大阪杯との路線分化で生じた傾向

5月3日(日)に京都競馬場で行われるのは天皇賞・春(GⅠ・芝3200m)。有馬記念から直行で連覇に挑むフィエールマンの一番人気が予想される一戦だ。今回の記事では天皇賞・春を予想する上で大きなヒントとなる前哨戦4レースを振り返る。本番で馬券を買える“試運転”ができたのは果たしてどの馬だったのか。

まず、天皇賞・春の前哨戦事情を語る上では外せない、大阪杯との関係について触れておきたい。

かつて天皇賞の主要な前哨戦と言えば阪神大賞典、日経賞、そして大阪杯の3レースだった。過去10年だけでもキタサンブラックは大阪杯からのローテで連覇、ヒルノダムールも天皇賞を勝利している。

しかし、大阪杯がGⅠに昇格して以降、大阪杯と天皇賞の両獲りを狙う馬は減少傾向で、昨年・今年はついにこのローテをとる馬が1頭もいなくなった。

さて、意外にもこの路線分化のアオりを大きく受けたのが日経賞。中距離向きの有力馬は2000mの大阪杯に行き、長距離歓迎の馬は3000mの阪神大賞典をステップに選ぶ。しかも「休み明けでのGⅠ」が一般化してきたことで2月以前のGⅡ競走も選択肢として存在感を増し、GⅠ級の馬があえて2500mの日経賞を使う理由がほぼ消失した。その結果、レベル低下を招いた日経賞組は大阪杯のGⅠ昇格(17年)以降の天皇賞3回で 【0-0-0-14】と、大苦戦している。

天皇賞・春過去10年の前哨戦別成績インフォグラフィックⒸSPAIA

天皇賞・春の前走レース別成績ⒸSPAIA

前提としてこのことは頭に入れた上で、ここからは天皇賞の前哨戦となる有馬記念、ダイヤモンドS、阪神大賞典、日経賞の4レースを振り返っていく。

かなりの消耗戦だった有馬記念

昨年末の有馬記念は、マイルGⅠでも逃げを打っていたアエロリットらの参戦もあり、前半1000m58.5秒という超ハイペース。レースラップは

6.9-11.1-11.4-11.4-11.5-12.2-12.3-12.1-11.7-12.3-13.4-12.2-12.0

で、前半じっくりと後方に構えていた馬が上位を独占した。先行した馬、早めに動いた馬は着順以上に評価したいレース。

4着フィエールマンはアーモンドアイをマークして上位勢の中では最初に仕掛けていき、一旦は先頭に出る場面も作った。海外遠征で極悪馬場を走った後の反動が心配される中で、地力健在をアピールした好内容だった。

5着キセキはスタートで出遅れ。後方インで溜めに溜めて展開を味方につけた。フィエールマンとはクビ差だが、内容的には少し実力差を感じる。

10着エタリオウ、13着スティッフェリオはハイペースを果敢に先行した分の大敗で、このレース単体は言い訳できる敗戦。もっとも、両馬ともその後レースを使っているので、“有馬記念の大敗による人気落ち”を狙うなら前走だった感がある。

レベル疑問もダイヤモンドSからはメイショウテンゲン

ダイヤモンドSはレースラップが

13.2-12.0-12.1-12.6-12.7-12.5-12.5-12.4-12.3-11.7-12.1-12.3-12.2-12.5-12.4-12.7-13.0

と、3400mの長丁場にもかかわらず中盤で13秒以上の区間がない、非常にシビアなレース。言い換えれば、全馬が限界まで絞り出して走っているわけなので、こういうレースは勝ち時計が速くなりやすい。

それなのに今年の勝ち時計3.31.2は昨年のユーキャンスマイルがスローペースから上がり33.4の差し切りで叩き出した3.31.5とさほど変わらない。もちろん馬場差もあるので一概には言えないのだが、決してレベルの高い一戦ではなかった。そもそもこの路線は過去10年で天皇賞【0-1-0-14】と結果も出ていない。GⅠ通用の可能性があるとすれば3着以下を5馬身離した1・2着馬くらいか。

1着ミライヘノツバサは最低人気、単勝325.5倍という低評価を覆して驚きの勝利。好発から中団、内から2頭目の馬場がいいラインを終始通り、中盤で他馬が早仕掛け気味になっても慌てず騒がずジッと我慢する鞍上の好プレーが光った。

2着メイショウテンゲンは対照的にやや出負けしたスタートから後方待機。4角では大外を回した距離ロスもあり、かつ最後は勝ち馬に寄られる不利もあってハナ差。再戦すれば勝ち馬を逆転できる公算は高い。

良くも悪くもキセキが目立った阪神大賞典

1番人気に推されたキセキがスタートで5馬身ほどの大出遅れ。中盤から抑えが利かない感じで上がっていき、先団にとりついていく形。前は早めにプレッシャーをかけられたため、レースラップは

13.2-12.2-12.3-12.2-12.7-12.4-12.2-12.4-11.6-11.7-11.9-11.9-11.8-12.0-12.5

と残り1400m地点から11秒台を刻み始める超早仕掛けの競馬で、後方待機勢が台頭。

1着ユーキャンスマイルは長距離得意の馬らしくピッタリを折り合い、キセキが動いて行くのを我関せずで見送り、最後も内から悠々抜け出す盤石の競馬。ただ、この馬は右にモタれる面があって左回りがベターではある。

2着トーセンカンビーナもキセキほどではないが出遅れ。初の3000m戦だったが折り合いに苦労するような面は全くなし。最後も4角から何度もステッキを入れながら馬群を捌いて、ゴール前までバテずに伸び切った。長距離適性の高さを感じる内容で、本番で人気薄なら面白い存在だ。

3着メイショウテンゲンはダイヤモンドS同様、後方待機から外を通ってよく伸びた。3000m以上のレースを4連戦したあとの天皇賞というローテになり、その消耗は少々気になるところ。

7着キセキは前述したように大変な競馬をして0.6差で、負けて強しとも評価できる。ただ、父ルーラーシップも晩年にゲートがとんでもなく悪化したように、同馬も気性面が難しくなってきた。菊花賞を勝ってはいるが、もともと中距離戦でも力みながら走るような面があるので、3200mに向くタイプではない。地力でどこまで頑張れるか。

外差し馬場で行われた日経賞

最後に日経賞。冒頭でケチをつけてしまったが、データはあくまでデータ。内容についても吟味していく。レースラップは以下の通り。

6.9-11.2-11.7-12.9-12.6-13.2-12.7-12.0-11.3-11.8-12.4-11.7-12.5

ヤマカツライデンが飛ばして行って早々と脱落したため、ラップは歪な形になっている。Aコースでの開催10日目ということもあって馬場は完全に外差し有利に振り切っていたし、展開面もラスト1000mから11.3というスパートがかかって差し馬向きの競馬だった。

1~3着馬はいずれも外差しに徹した馬。1・3着ミッキースワローとスティッフェリオはどちらも中山の中距離巧者で、京都替わりと距離延長がネック。強いてこの中から狙うならモズベッロか。

5着エタリオウは上位馬より前のポジションから早めに動いて行く策に出たものの、結果的には裏目。有馬記念もハイペースを追いかけすぎての敗戦なので、楽なペースでの先行になれば一変する可能性は感じる。

前哨戦のまとめ

各レースからの推奨馬はフィエールマン、メイショウテンゲン、トーセンカンビーナ、エタリオウ。この中で1頭本命を決めるならトーセンカンビーナ。前走の走りっぷりを見ていると3000m以上のレースでようやく本領発揮というステイヤータイプ。実績では劣るがオッズ含めて楽しみな存在だ。

また、今回振り返ったレースは奇しくも全て前半が速い、もしくは中盤かなり早仕掛け気味の展開になって差し馬が台頭したものだった。そのため、先行馬へのマークが例年以上に薄くなりそうで、数年に一度起こる伏兵の先行押し切りにも警戒しておく。

今週もテレビ画面を通して、長距離戦らしい名手たちの駆け引きを存分に楽しみたい。

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