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【毎日杯】持続力勝負でも結果を出したサトノインプレッサの可能性とは?

2020 3/30 17:08勝木淳
毎日杯位置取りインフォグラフィックⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

序盤からけん制しあった先行勢

毎日杯位置取りインフォグラフィック

皐月賞出走をかけた最終便、もしくはNHKマイルCを狙う組が集まる毎日杯は2番人気サトノインプレッサが直線で馬群を突き破って勝利した。武豊騎手の手綱さばき、インパクトある勝ち方は新星誕生を予感させた。

スタートを決めたアーヴィント、ダノンアレーらが先行していくが、先頭にはどの馬も立ちたくないようで互いに手綱を引きながら様子を伺い合うような序盤となった。外からメイショウラツワンがたまらずハナを主張して隊列が決まったのはスタートから600m、残り1200m標識を通過したあたりだった。一見スローペースでの攻防のように見えるが、前半1000m通過までは

12.9 - 11.1 - 11.4 - 11.9 - 12.3

11秒台前半が2回記録され、メイショウラツワンがハナに行ったことで12秒3とペースダウン、流れたが落ち着いたのだった。1000m通過59秒6でミドルペース。先行勢にも待機組にも厳しく、実力が結果に直結するような展開だった。

サトノインプレッサの勝利を決めた場面とは

スタートをゆっくり出たサトノインプレッサは後方待機を決め、先行勢のごちゃつきに巻き込まれることなく悠然と追走。勝負所でも外には出さずに馬群へ突っ込んだ。

2、3着のアルジャンナ、ダノンアレーの間、狭いスペースを狙う。そうはさせまいとアルジャンナが進路を締めに行く、この攻防は見ごたえたっぷり。アルジャンナが締めに行くより先にサトノインプレッサを武豊騎手が促し、首を突っ込ませる。一瞬だけサトノインプレッサの動きが早かったため、アルジャンナのライル・ヒューイットソン騎手もダノンアレーの福永祐一騎手もそれ以上強引に締めるとラフプレーとジャッジされてしまうため進路を譲るような形となった。正確には譲ったのではなく、フェアプレーへの意識の高さによる判断だったと思われる。

この攻防が勝敗を決した。進路を得たサトノインプレッサは一気に抜け出しにかかる。アルジャンナのヒューイットソン騎手が再度馬を寄せて抵抗を試みたが、サトノインプレッサはそれを弾き返すような強さを見せた。

皐月賞、そしてその先へ

先述の通り前半は厳しい流れだったので、後半800mは

12.1 - 11.7 - 12.1 - 12.4

ゴール前600~400mの直線入口で11秒7が記録されたもののその後は12秒台が2回、上がり600mは36秒2と上がり時計を要する競馬となった。速い上がりが記録されなかったことで皐月賞やマイルC路線への試走としては好都合となった。

というのも皐月賞は今年の毎日杯のようなレースラップになりやすい。前半からラップの落ち込みがなく、後半に極端に速いラップが刻まれない、11秒台後半から12秒台前半のラップが2000m続く、連続開催最終日の皐月賞を想定すれば稍重馬場の毎日杯はそれに酷似したラップ構成であり、そこに対応してきたサトノインプレッサとアルジャンナには皐月賞で一発穴の可能性を感じさせる。

また毎日杯組はしばしばNHKマイルCで上位に食い込んでくる。これもNHKマイルCが皐月賞と同様に緩みない持続的なラップになりやすいからであり、今年の毎日杯はNHKマイルCの試走に十分だった。有力馬が思わぬ分散をしていく今年のクラシックはどの馬がどこに出走するのか読めないところもある。毎日杯組の動向も注視しておきたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。