馬に安心感を与える
それは2019年の秋競馬が始まった頃だっただろうか……。毎週末競馬場で取材をするようになり、ゴール前の撮影はもちろんのこと、暇を見つけてはパドックでも積極的に撮影するようにしていた。そんな時にメンコの下にウェットスーツのようにピッタリとしたマスクを着けている馬を見つけた。当時は「変わってるなあ」というくらいで気にとめなかったが、今では毎週多くの馬が着用するなど“今流行りの馬具”となっている。そんな謎のマスクについてご紹介する。
そのマスクは「コンプレッションフード」と呼ばれている。いくつかのメーカーで製造されているようだが、最も有名なのはHIDEZという海外のメーカーだ。馬の顔の3分の2を覆うこのコンプレッションフードは、騎乗中に緊張しやすい馬や馬房で落ち着きのない馬に効果的だと言われている。
ではなぜコンプレッションフードは馬に落ち着きを与えることができるのだろうか。その秘密は東洋医学に基づいた仕組みにあった。私たちが普段“ツボ”と呼んでいる経穴は、刺激を与えることで体調を整えたり、諸症状を改善させることができるポイントだ。
馬にも同様にツボがあり、このコンプレッションフードは顔にあるツボを圧迫することで、馬の心拍が下がる。その結果、馬に安心感を与え、落ち着きが出るという効果がある。実際に競走馬を担当する厩務員さんからは「ゲートの出が良くなった」という意見も出ているという。















