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見どころがいっぱいの「パラリンピック馬術競技」を知ろう

2017 7/10 10:25masumi
乗馬
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Photo by Margo Harrison/Shutterstock.com

パラリンピックの馬術を観戦したことはあるだろうか? 「パラ馬術」には、この競技ならではの魅力がいろいろある。成り立ちを知り、ルールや見どころを知ると、観戦の楽しさは倍増す。 次のパラリンピックは2020年の東京だ。自国開催のパラリンピックで、ぜひ馬術を応援しよう。

「パラ馬術」がパラリンピック正式種目となるまで

障がいを持つ人にとっての馬術は、もともとはリハビリの方法の1つとして始まった。歴史を遡ると、古代ギリシャ時代には負傷した兵士を馬に乗せることによって治療しており、20世紀には理学療法の一環として活用されるまでになっている。この後に乗馬療法は世界中に浸透し、障がい者乗馬も広まっていったのだ。
パラスポーツとしての馬術では、一般的には馬場馬術が行われている。「パラ馬術」が正式に競技種目となったのは、1984年の「ニューヨーク・アイレスベリー大会」からだ。これはアメリカとイギリスの2か国で開催された第7回の夏季パラリンピックだった。

パラリンピック競技の「馬術」とは

パラリンピックの競技種目となっている「馬術」は、技の正確性と芸術性を競い合う競技だ。
馬術競技には2種類の種目があり、「チャンピオンシップ」ではあらかじめ決められている規定の演技が、「フリースタイル」では選手自身が選んだ楽曲に合わせた自由な演技が行われる。
出場対象になるのは、肢体不自由の選手と視覚障がいの選手だ。通常の馬具では使用や安全性に問題が生じる場合は、障がいを補助するための工夫が加えられた手綱や鞍などの使用が認められている。

パラリンピック「馬術」のルール

パラリンピックの馬術競技には、種目のほかにグレードによる分類がある。これは障がいの種類や度合いに応じたクラス分けで、グレードの設定は、障がいの重い順に、Ia、Ib、II、III、IVとされている。個人戦ではこのグレードごとに競技を行い、団体戦ではグレードに関わらずチームを組んで行う。
競技は、演技による獲得得点によって競われる。各運動項目ごとに10点満点で採点され、その点数の合計によって勝敗が決定するのだ。採点を行うのは馬場の外に配置された5人の審判で、それぞれが採点して平均点が用いられる。審査基準は、馬の動きの正確さや活発さ、そして美しさだ。これは通常の馬術競技と変わらない。

パラリンピック「馬術」の注目選手

鹿児島県出身の宮路満英選手は、脳卒中の後遺症で右半身にマヒがある。また、記憶を保つことができない、集中力が続かないなどの症状がある、「高次脳機能障がい」でもある。グレードは重度である「Ibクラス」だ。
宮路満英選手は数々の大会で活躍しており、2015年はイギリス大会とフランス大会で6位、ドイツ大会では8位、ジャパンオープンでは優勝に輝いている。2016年にはリオデジャネイロパラリンピックに出場し、当時10歳であった愛馬のバンデーロ号と共に演技を披露した。 今後の活躍も期待される、注目度の高い選手だ。

パラリンピック「馬術」の見どころ

パラリンピックの「馬術競技」には、およそ20もの課題がある。馬に乗って円を描いたり、決まった速さで走らせたりと、それぞれの課題をクリアするだけでなく、そこには美しい演技が要求される。このためには正確に馬を操るテクニックはもちろんのこと、馬との信頼関係を築き、馬の能力を最大限に引き出せる技量も必要なのだ。
演技の中では、障がいを持っているからこそ繰り出されるテクニックや、馬と心が通っていることが感じられる場面にもたびたび出会う。障がいを持つ選手が自身の能力を最大限に生かし、人馬一体となって繰り広げられる美しい競技なのだ。

まとめ

パラ馬術の選手は、自分自身の鍛錬だけでなく、馬とのコミュニケーションを図り、信頼関係を築くことに日々努力している。 選手と馬とが一体とならなければ成すことができないこの競技には、心を動かされる観客も多いようだ。 ここで紹介した選手以外にも、2020年東京大会を目指している選手はたくさんいるだろう。 ぜひパラリンピックで馬術を応援しよう。