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渋野日向子フィーバーの陰で諸見里ら30代の引退相次ぐ女子ゴルフ界

2019 12/30 06:00田村崇仁
諸見里しのぶⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

「黄金世代」がツアー席巻で厳しい現実

今季の女子ゴルフ界は8月のAIG全英女子オープンで21歳の渋野日向子が日本勢42年ぶりのメジャー制覇を果たし、大フィーバーを巻き起こした。1998年度生まれの「黄金世代」は渋野を筆頭に、河本結、原英莉花、小祝さくら、浅井咲希が初優勝を果たすなど計12勝と席巻。米ツアーを主戦場とする畑岡奈紗も日本女子プロ選手権、日本女子オープンの四大大会で2連勝と同世代のエースとして実力を示した。

一方で世代交代が加速する中、ツアー通算9勝で33歳の諸見里しのぶ、通算7勝で35歳の佐伯三貴ら30代半ばまでの選手が相次いで一線を退く意向を表明。苦悩と葛藤を抱えるトップ選手の厳しい現実も浮き彫りになった。優勝経験を持つ中堅の引退ラッシュの背景にはどんな事情があるのか―。

諸見里しのぶ、肋軟骨痛などで近年低迷

来季の賞金シード50人は平均26.3歳で、この20年で最も若い顔触れだ。今季の賞金女王は25歳の鈴木愛。11月に史上2人目の3週連続優勝でトップに立ち、歴代2位に並ぶシーズン7勝で渋野との白熱した争いを制して2度目のタイトルを獲得した。

11月中旬、ジュニア時代から活躍して将来を嘱望された諸見里は、大王製紙エリエール・レディース(愛媛)を最後に第一線を退くと表明。近年は肋軟骨痛などもあって苦しい成績が続いていた。今季は10試合すべて予選落ちで、賞金ランキング160位タイ。飛距離が出て、アグレッシブなゴルフを展開する若い世代の台頭に心技体で押される状況だった。

沖縄県出身。2005年にプロテストに合格し、飛躍の年となった2009年に6勝を挙げ、自己最高の賞金ランキング2位に入った。2011年にはスタンレー・レディース(静岡県東名CC)最終日の前半9ホールでマークした9アンダーが女子ツアーでのギネス世界記録にも認定されている。来年はツアーのコース設定の仕事にも携わる予定という。

佐伯三貴は「楽しいツアー13年間」

東北福祉大時代の2007年にフジサンケイ・レディースで初優勝した佐伯も同時期に大王製紙エリエール・レディースを最後に一線を退く意向を自身のブログで表明。「2度のけがと手術を経験し、近年では万全の体調で試合に臨むことが難しくなり、決断に至りました。今後はゴルフ界の発展のためのお手伝いができたらと思っております。楽しいツアーでの13年間でした」と記した。

広島県出身。2012年に2勝を挙げて賞金ランキング5位、2013年も2勝で同6位と活躍した。今季はシード圏外の賞金ランク70位(約1442万円)にとどまった。

通算3勝の一ノ瀬優希や大江香織も一区切り

通算3勝で31歳の一ノ瀬優希はマネジメント会社を通じて一線を退くと発表。来季ツアー出場資格を争う12月の最終予選会に出場せず、選手としての活動に一区切りつけることになった。

熊本県出身で2007年のプロテストに合格し、2013年に初勝利。2014年に2勝したがその後はけがなどに苦しみ、今季は賞金ランク78位(約1167万円)にとどまった。

29歳の大江香織も一線を退き、第二のゴルフ人生をスタートさせる。宮城・東北高を出て2009年にプロテスト合格。2012年のツアー初勝利から昨年まで通算3勝を挙げた。大きな故障はないが、今季賞金ランキング82位(約1082万円)と苦戦した。シーズン終了時点で50位以内に与えられるシードを逃すと、来季出場権を獲得するには最終予選会に回ることになるが、彼女たちは自らそれを取りやめた形だ。

宮里藍は32歳で引退、女子特有の選手寿命も

元世界ランキング1位で、米ツアー通算9勝の実績を挙げた宮里藍は32歳だった2017年9月に現役を引退。30代で脂が乗ってくる男子と比べ、女子は「黄金世代」などの活躍もあって「選手寿命」が短くなりつつある女子特有の傾向が現実問題として指摘されている。

今季は19歳の古江彩佳が10月の富士通レディースでツアー史上7人目のアマチュア優勝と次世代も台頭。アマ時代からプロツアー経験が豊富な若手は用具の進化もあり、飛距離やショット力をベースにしたスタイルで戦える強みがある。伸ばし合いになるコース設定でバーディー合戦となる試合が増えており、技巧派のベテランが勢いとパワーに押される場面も今や少なくない。

厳しいプロテストに合格しても、長期にわたって上位50人のシード権を維持し、第一線で活躍できるトップ中のトップ選手は数えるほどしかいないのが実情だ。

もっとも生涯獲得賞金を見ると、諸見里は31位の約4億9267万円、佐伯は24位の約5億6934万円。一ノ瀬や大江も2億円以上は稼いでおり、サラリーマンの平均的な生涯賃金を軽く上回っている。厳しいプロの世界で十分活躍した成功者ともいえるだろう。

女子ゴルフ生涯獲得賞金

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