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鈴木愛、東京五輪代表へ主戦場とするべきツアーは日本か米国か【女子ゴルフ】

2019 11/13 11:00akira yasu
TOTOクラシックで優勝した鈴木愛Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2020年6月30日時点での世界ランキング15位以内が現実味

11月8日から10日に滋賀県の瀬田ゴルフコースで開催された米ツアーTOTOジャパンクラシックで鈴木愛が今季6勝目を挙げ、賞金ランキング首位の申ジエに約700万円差に迫り2年ぶり2度目の賞金女王が見えてきた。さらに、世界ランキングを11月11日時点で19位とし、一時は厳しいかと思われた東京オリンピック日本代表圏内に迫ることになった。

鈴木は今回の優勝で2020年の米ツアーの出場資格を獲得した。海外挑戦意欲があることや、年齢、経験、実績を考えると挑戦を選んでもおかしくない。しかし、メディアの米ツアーへの意欲を問う質問に「気持ちだけなら70%。総合的に考えたら20%ぐらい」と答えている。恐らくこのタイミングでなければ、鈴木は挑戦を明言していただろう。というのも、米ツアーへの参戦には五輪代表争いへのリスクをはらんでいるからだ。

ゴルフの東京オリンピック代表になるための基本的な条件として、世界ランキングの15位以内かつ同じ国の選手の上位4人までに入るか、同じ国の選手が15位以内に1人以下の場合は日本人の上位2人に入らなければならない。女子のオリンピックランキングはロレックス・ランキングを基に算出されており、2年以内に出場した最新の52試合に割り振られたポイントと大会成績から算出される。

米ツアーは日本ツアーで戦うよりも各試合で獲得できる世界ランキングのポイントが高いため、上位に入れば世界ランクを一気に上昇させることができる。しかし、上位に入れなければ減速どころか後退させてしまうこともありうる。東京オリンピックまで1年を切った今、オリンピック日本代表入りを考えると日本ツアーで戦い続けるよりもリスクを伴うのだ。

鈴木愛の海外での米ツアー成績

ⒸSPAIA

今回優勝したTOTOジャパンクラシックでは2017年にも2位に入っているが、海外での米ツアーでの成績は芳しくない。参加した大会がすべてメジャー大会という米ツアーの中でもより一層厳しい試合ではあるものの、目立った成績を挙げられていないのは不安だ。9戦して予選落ちが3度、最高が14位タイとなっている。

鈴木自身、米国で戦うことの難しさを感じているだろう。

12年前の上田桃子と比較

2007年に5勝を挙げ賞金女王になった上田桃子は、2007年のミズノクラシック(現TOTOジャパンクラシック)での優勝で米ツアー出場資格を獲得したことをきっかけに翌2008年、米ツアーに参戦した。

データで見る当時の上田は、今季の鈴木以上の強さがあった。年間5勝、29戦中トップ10が23回。今季の鈴木と比較すると、優勝回数では鈴木の方が上回っているが、安定感では上田が圧倒している。

2019年の鈴木愛と2007年の上田桃子の比較

ⒸSPAIA

その上田でも米ツアーでは思うような結果を残せず苦しんだ。毎年日本ツアーにも参戦しながらの為、17~19試合の出場にとどまったとはいえ、賞金ランキングは参戦1年目の2008年は45位、2009年は33位、2010年は44位と、米ツアー参戦前の日本での強さからすると満足できるものではなかった。

鈴木のこれまでの海外での米ツアー成績や、今季の鈴木以上の強さを誇っていた上田が米ツアーでは苦しんだ過去を振り返ると、鈴木が2020年の米ツアーに挑戦した場合、1年目から結果を出すことは険しい道となるだろう。

東京五輪代表入りのためには日本ツアーが賢明な選択か

黄金世代の河本結は東京オリンピック日本代表入りを目指し米ツアーに参戦する。ただ河本の場合、代表入りするためには米ツアーでより高いポイントの獲得に挑戦するしかないため、というのが理由にある。

しかし、鈴木の場合は2020年も日本ツアーで戦っても、代表入りの可能性は十分にある。鈴木の世界ランキングは約1年前の2018年11月12日時点では29位だったが、その後、多少の変動はありながら2019年11月11日時点では19位まで上昇。日本ツアーでこれまでと同程度の結果を出すことができれば、2020年6月30日時点で代表圏内に入る可能性は高い。

米ツアーの方が上位に入った時の世界ランキングに反映されるポイントが高いが、鈴木の最近の日本での成績、海外での成績、上田桃子ら海外に挑戦した先輩達の成績を含めてトータルで考えると、代表入りの為に必要なポイントを獲得する可能性が高いのは日本ツアーといえる。渋野日向子との2番手争いとなっているが、ここ2年間の通算出場試合が少ない渋野は世界ランキングの算出方法の関係で、ポイントが引かれることがなく、周囲がポイントを上積みしない限り、順位が下がらない。

オリンピック出場だけを考えるならば、2020年も日本ツアーを主戦場にすることが、鈴木にとって堅実な道となりそうだ。

米ツアー登録期限は米国東部時間18日午後5時(日本時間19日午前7時)。これまで通り日本か。リスク承知で憧れの米国か。ゆっくりと考えていられる時間は無い。どちらを選択するにしても、2020年6月30日時点で決まるオリンピック日本代表入りへ向けて覚悟を決める決断となる。