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【F1】ハミルトンが通算1000回目の大会を勝利 過去に節目のレースを制したのは?

2019 4/17 17:02河村大志
2019年F1中国GP表彰台,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

メルセデス完勝!第3戦中国GPをプレビュー

今季も2戦が終了しメルセデスが連勝しているが、マシンのポテンシャルはフェラーリも負けておらず、中国では激しいバトルが期待された。

F1が通算1000回目の開催という記念すべきレースでポールポジションを獲得したのはバルテリ・ボッタス(Mercedes)。開幕戦では去年のうっぷんを晴らす完璧な勝利を挙げたが、チームメイトであるルイス・ハミルトン(Mercedes)が得意としている中国でポールポジションを獲得したところをみると、今年のボッタスは去年とは違うようだ。

2位にはハミルトンが入り、セカンドローにはセバスチャン・ベッテル(Ferrari)、シャルル・ルクレール(Ferrari)の順でフェラーリ勢がつけた。

優勝争いはスタートが全てだった。好スタートを決めたのは偶数列からスタートしたハミルトンとルクレール。ハミルトンはボッタスの、ルクレールはベッテルの前に出てポジションアップ。

スタートで前に出たハミルトンの後ろで乱気流を受け、近づくことができなかったボッタスはハミルトンに追従するのみとなった。チームもこのままの順位でゴールさせることに決め優勝はハミルトンとなった。スタートが全てだったが、予選で0.023秒差につけたハミルトンに対してボッタスはスタートが鍵になると考えていただろう。しかしそれが焦りを生み、ホイルスピンさせてしまう結果となってしまった。

一方、フェラーリは前に出たルクレールのペースが上がらずベッテルを前に出すよう指示。しかし、そのベッテルもペースが上がらない。ルクレールはピットストップを遅らせたが、結果5位のマックス・フェルスタッペン(Red Bull)にアンダーカットを決められ5位となってしまった。 ベッテルは今季初の表彰台を獲得するも、内容はいまいち。チームはベッテルをエースドライバーとし、レースの優先権を与えると明言したが、才能に溢れすでに結果を出しているルクレールをエースにすべきとの声も上がっている。

中国GP結果,ⒸSPAIA

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今のところフェラーリは2人のドライバーをコントロールできていない。最速のマシンを持っているにもかかわらず、メルセデスに開幕3連勝を決められてしまったフェラーリ。ドライバーのコントロールにフレキシブルな戦略、フェラーリがやらなければいけないことはマシン開発だけではなさそうだ。

F1GRAND PIRX 1000戦目が終わり次の時代へ

第2次世界大戦が終戦し、人々は再びモータースポーツを復活させ、1950年にF1世界選手権が始まった。 記念すべき節目のレースを制したドライバーは以下の通り。

F1過去の節目の勝利,ⒸSPAIA

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チャンピオン経験者、そしてチャンピオンを獲得できなかったドライバーも人々の記憶に残る名ドライバー達が名を連ねている。今回1000戦目となるレースでも様々なイベントや往年の名車によるパレードラップも行われた。

節目のレースで印象的だったのが1990年。レースはネルソン・ピケが制したが、印象に残っているのはレースではなく、500戦目となるオーストラリアで行われたジャッキー・スチュワートとアイルトン・セナの対談である。

当時2度目のチャンピオンを決めたばかりのセナに、スチュワートが過去のチャンピオンに比べてセナが起こした接触や事故が多いことを指摘したのだ。それに対してセナは「ドライバーは常に危険と隣り合わせで競争しなければならない。隙間を突いていかない奴なんてドライバー失格だ。」と反論。このレース哲学を巡っての論争は平行線に終わったが、一つ言えることは両者とも正しいということだ。

まだまだ死亡事故が多く、今とは比べ物にならないくらい危険だった時代に戦ってきたスチュワートは、レースを見守る立場として、チャンピオンとしてセナのスタイルに一石を投じたかったのだろう。一方セナはレーサーの根底にある「勝ちたい」というものすごく強い気持ちをかつてのチャンピオンにぶつけた。追い抜きが難しいように設計されたサーキットで、性能が近いマシンで争うには限界の走りをしなければいけないというセナの意見はまさにレーシングドライバーの意見だった。

「プロとして勝つ信念がないと下位に甘んじてしまう。2位や3位になるためにレーサーをやっているのではない。ナンバーワンになるためにレースをしているのだ。」世界で最も負けず嫌いな連中が集まる厳しい世界で、人一倍負けず嫌いだったセナは勝利への執念ゆえに彼のドライビングについて度々批判されることがあった。

その2年後、F1では一つの若い才能が虎視眈々と世代交代を狙っていた。そのドライバーはのちに7度のワールドチャンピオンに輝き、通算91勝という大記録を作ったミハエル・シューマッハだ。1992年のフランスGPでスタート直後にシューマッハがセナを巻き込みクラッシュするアクシデントが起こる。その時セナはシューマッハに対して「このままお前の失敗を見過ごしたらお前のためにならないだろう。」と忠告する場面があった。どこか若い頃の自分に言葉を贈っているようにも見えた瞬間だった。

80年代でいうと速くて才能がありながらもリタイヤが多かったピケやプロストがラウダから「勝つ」とはどういうことかを学びとり、その後何度もチャンピオンに輝いた。とにかく速く勝つことだけを目指していたセナもキャリアの最後はプロストのように全体をみてレースができるようになっていた。シューマッハもアロンソもハミルトンもみんなそうだ。1000回を迎え、時代も大きく変わったF1だが、ドライバーの根底にあるものやキャリアの歩み方などをみていると、歴史は繰り返すものなのかと感じてしまう。

どんなに技術が進化しようとも、F1の中心は「人間」である。いつの時代も最速をかけた戦いは観ている我々を魅了し続けるだろう。この先のF1、どんな夢をみせてくれるのだろうか。

アゼルバイジャンGPの優勝者は?

次戦は旧市街と新市街地が合わさったストリートサーキットが特徴のアゼルバイジャン。旧市街の曲がりくねった狭いセクションと新市街地の超ロングストレートがミックスされたサーキットはセッティングが難しい。しかし、なんといっても勝負どころは長いロングストレートだ。今年トップスピードで他を圧倒しているのがフェラーリ勢で、この長いストレートがあるアゼルバイジャンはかなり有利なサーキットといえる。

フェラーリはベッテルを優先すると明言しているとはいえ、2人とも高いポテンシャルを見せた場合、チームは難しい選択を迫られる。近年フェラーリチームの戦略はあまり良い方向に機能していないこともあり、不安要素も多い。しかし、どのチームよりも直線が速いという武器がある今年のフェラーリにとって何としても優勝が欲しい一戦となる。フェラーリが勝てるのか、そしてどちらのドライバーが勝つのかに注目したい。

そしてもう1人注目なのがボッタスだ。開幕戦で優勝し、第2戦、第3戦で2位に入るなど好調をキープしているが、実はボッタスとこのアゼルバイジャンは相性がいいのだ。開催された過去2年で優勝はないものの、力強いパフォーマンスを残している。

特に去年は優勝まであと一歩というところまでいきながらも、パンクが原因でリタイヤに終わってしまったコースとの相性が良く、今年は好調をキープした状態のボッタスは去年のリベンジに燃えているはず。フェラーリ勢の間をぬってボッタスが今季2勝目を挙げる可能性も少なくないのではないだろうか。