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宇野昌磨、二人三脚で復活を後押ししたランビエル・コーチも認める才能

2020 2/25 17:00田村崇仁
宇野昌磨Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

フリーで自己ベストマークし、チャレンジ杯優勝

フィギュアスケート男子で2018年平昌冬季五輪銀メダリストの22歳、宇野昌磨(トヨタ自動車)が一時のどん底を脱し、完全復活へ自信を取り戻しつつある。

2月22日、オランダのハーグでチャレンジ・カップの男子フリーが行われ、ショートプログラム(SP)首位の宇野はフリーでもトップの198.70点をマークし、合計290.41点で初優勝。参考記録ながら昨年2月の四大陸選手権でマークしたフリーの自己ベストを1.34点上回った。

フィギュアスケート・チャレンジ杯成績


3月18日~21日の世界選手権(カナダ・モントリオール)を前に、元世界選手権王者のステファン・ランビエル・コーチ(スイス)との二人三脚で「スケートを楽しむ心」を取り戻し、明るい光が差し込んできた。

ランビエル・コーチがあふれるオーラを称賛

5歳から師事した山田満知子、樋口美穂子両コーチの下を離れ、メインコーチ不在で臨んだ今季はシニア転向5季目で初めてグランプリ(GP)ファイナル進出を逃すなど、心身とも苦しんだ。

昨年11月上旬のフランス杯ではGPで初めて表彰台を逃し、8位に沈んだ。救世主になったのがオフに指導を受けたランビエル氏だった。

米NBCテレビによると、2006年トリノ五輪銀メダルのランビエル氏は宇野について「特別な肉体的な才能を持っている」と指摘。「何が必要で、何をすべきか分かっている」と競技者としての学ぶ姿勢を評価する。

初めて会ったのは宇野が銀メダルに輝いた2012年冬季ユース五輪(インスブルック=オーストリア)という。当時から人間性やスケート技術の成長を見てきただけに「氷上のステップで情感あふれるオーラを発信できる。彼はこの点に関して例外的で特別だ。音楽的な感性もあり、滑りに自然な滑らかさがある。自分の限界を超えようとする力もある」と語った。

鬼門の4回転サルコー着氷

チャレンジ杯のフリー演技は不安視していた冒頭の4回転サルコーを着氷し、2.91点の加点を引き出して鬼門を突破した。スローな曲調の「ダンシング・オン・マイ・オウン」で勢いそのままに跳んだ4回転フリップ、基礎点が1.1倍になる演技後半の4回転―2回転の連続トーループも鮮やかに決めた。

3種類、4度の4回転ジャンプに挑み、回転不足を取られたトーループ以外は会心の出来。表現力を示す演技構成点は音楽の解釈や身のこなし、スケート技術など5項目全てで圧巻の9点台(10点満点)をマークした。

SPでは年明けから本格的に師事するランビエル氏と磨いたスピンの三つ全てで最高難度のレベル4を並べた。ランビエル氏は「ユニークな人間性」を評価した上で「詩的なスケート技術を持っている」とその芸術性の高さにも非凡な才能を感じているようだ。

自信を胸に世界選手権へ

昨年12月の全日本選手権はフリーで羽生結弦(ANA)を逆転して4連覇。2月からはスイスの練習拠点近くで1人暮らしを始めた。新たな環境に慣れるため、四大陸選手権(ソウル)も回避した。

どん底の状態から約2カ月ぶりの実戦となったオランダで確かに手にした自信。2季ぶりの表彰台を目指す世界選手権へ前哨戦で重要なステップを刻み、尊敬する新たなコーチと共にカナダへと乗り込む。

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