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摂食障害乗り越えたグレーシー・ゴールドが示すフィギュア女子の過酷な現実

2020 1/30 06:00田村崇仁
全米選手権で復帰したグレーシー・ゴールドⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

3年ぶり全米選手権でスタンディングオベーション

摂食障害やうつ病に悩まされてきた24歳のフィギュアスケート元全米女王、グレーシー・ゴールド(米国)が苦難を乗り越え、笑顔で氷上に戻ってきた。1月26日までノースカロライナ州グリーンズボロで行われた全米選手権で3年ぶりに復帰し、合計161.75点で12位。フリーの演技を終えると、2014年ソチ冬季五輪女子4位で団体銅メダリストの人気スケーターは大勢の観客からスタンディングオベーションで祝福され、感極まって涙をこらえるように目元を覆った。

米NBCテレビによると「お客さんの反応にエネルギーをもらった。率直に言ってとても圧倒された。これまで他のどこにも自分が存在していると感じられなかったから」と感謝の言葉を口にした。

摂食障害とは、心理的な原因で食事の取り方に異常が生じる疾患で拒食症や過食症がある。見た目の芸術性と競技性を兼ね備えたフィギュアはわずか100グラムの体重変化がジャンプに影響するとされる分、体形管理に苦労する選手も多く、特に女子は10代で少女から女性の体つきへと変化する中で自分と向き合わなければならない過酷な現実を物語る。

鈴木明子も摂食障害を克服して2度の五輪

2010年バンクーバー、2014年ソチ両冬季五輪でともに8位入賞を果たし、現役引退したフィギュア元日本代表の鈴木明子も18歳の時に選手生命を脅かした摂食障害を乗り越え、24歳で五輪初出場を果たした遅咲きのスケーターだ。

6歳からフィギュアを始め、15歳で全日本選手権4位となり注目を集めるが、東北福祉大1年のころに思いもよらぬ摂食障害を患った。体重を気にして食べるのが怖くなり、身長160センチで32キロ前後まで一時は体重が落ちたというが、母親や周囲の支えもあって「どん底」から復活。自身のブログで「選手として頑張ることはもちろん素晴らしいことです。ただ、限られた選手生活は健康あってこそだと思うのです。選手を引退してからの人生のほうがはるかに長い」と同様の病気に苦しむ選手に呼び掛けるコメントをしている。

ゴールドは米紙に苦悩を告白

2014、16年の全米選手権を制覇して輝きを放ったゴールドは昨年、米ニューヨーク・タイムズ紙で「暗黒時代の苦悩」を告白した。競技レベルの向上と体重増への不安からカロリー摂取量を極端に控えるようになってしまった悪循環の繰り返しを振り返り「自殺願望まであった」と精神的に追いつめられた過去も明かしている。

容姿端麗で米女優からモナコ公妃となった故グレース・ケリーさんに例えられることもあり、そのスター性から米国フィギュア界の救世主として完璧を追い求めすぎたという。本人は当時、自身のツイッターで「私の願いは未来のアスリートに決して一人じゃない、いつだって助けを求めてもいいと自らが示すことだ」と記した。

ロシアの新星リプニツカヤも拒食症で引退

15歳で出場した地元の2014年ソチ冬季五輪で団体金メダリストになった元スター選手のユリア・リプニツカヤ(ロシア)は、その3年後に現役引退を表明した。母国で期待を集めたソチ五輪個人は5位に終わったが、高く上げた脚を体に密着させる「キャンドル・スピン」が代名詞で、日本でも人気を集めた1人だ。

19歳の若さで引退した理由は、公式サイトで「99パーセントが健康問題」とソチ五輪後の3年間続いた拒食症を「21世紀の病気」として簡単に克服できなかったためと説明している。

万引に走った元マラソン選手も

スポーツ界では現役時代の厳しい減量の末に摂食障害となり、過食と嘔吐を繰り返して大量の食べ物を欲する中で食品の万引事件を起こした元女子マラソン選手も話題となった。

摂食障害はやせたいという願望を持つ女性や体重区分の階級制で減量が必要なスポーツ選手に多く、患者が食品などの万引を繰り返す例も報告されているという。スポーツの華やかな舞台の裏で、トップ選手に忍び寄る危険な現実からも目を背けてはいけない。

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