「逆転の紀平」返上の逃げ切り
今季挑戦予定の大技、4回転サルコーを封印しても圧倒的な強さを証明した。フィギュアスケート女子で昨季のグランプリ(GP)ファイナルを初制覇した17歳のホープ紀平梨花(関大KFSC)が13日、今季初戦のオータム・クラシック(カナダ・オークビル)でショートプログラム(SP)に続いてフリーも145.98点で1位となり、合計224.16点で優勝した。シニア1年目の昨季はSPで出遅れるケースが多く「逆転の紀平」とも呼ばれたが、2年目のシーズンは安定した逃げ切りVで幕を開けた。
2018年平昌冬季五輪銀メダルのエフゲニア・メドベージェワ(ロシア)が合計217.43点で2位だった。
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代名詞のトリプルアクセルに安定感
エメラルドグリーンの新衣装に自らの希望でふんだんに取り入れた「金色」の装飾。2022年北京冬季五輪で「金」への思いも込めたシーズン初戦で、紀平は代名詞のトリプルアクセル(3回転半)の安定感が光った。
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フリーは世界平和をテーマにした新プログラム「インターナショナル・エンゼル・オブ・ピース」。冒頭で3回転半―2回転トーループの連続ジャンプを軸がぶれても鮮やかに成功すると、勢いに乗った。次の単発の3回転半は回転不足になったが、最後まで切れのある演技でジャンプ7本を全て着氷。納得の演技を終えると、思わず右腕を突き上げた。
SPもノーミス
SPは新曲「ブレックファスト・イン・バグダッド」。冒頭のトリプルアクセルで踏み切りから着氷まで流れるように成功し、出来栄え点3.04点を引き出した。昨季はなかなかSPの冒頭で決まらなかった大技だが、今季は精度が格段に向上した印象だ。全要素で加点を得た好内容。アップテンポの激しい動きの中でも美しい旋律に乗せて、ノーミスで舞った。
自身のツイッターでは「シーズン初戦良いスタートが切れてよかったです。今回の自分の演技をしっかり見直し、次の試合ではもっと高い点数が出せるように練習頑張ります」とコメント。さらに「『TRUE』。礼儀正しく、人としてきちんとしていて、大きな大会で勝つ真のチャンピオンを目指しているという意味を込めて」とさらなる高みへ強い意欲を示した。
ピラティスで体幹トレ
シーズンオフのスイス合宿ではピラティスで体幹を鍛え、バレエやダンスにも励んだことを明かしている。氷上以外でも工夫を凝らしたトレーニングを積み重ねることで、4回転を含めた大技を安定して跳べる地力を培ってきた。
かつては日本スケート連盟の専任トレーナーとして浅田真央らを見てきた加藤修氏に今季からアドバイスを受け、強力な援軍も加わった。
国際オリンピック委員会(IOC)の専門テレビ、五輪チャンネルも「紀平の傑出したジャンプが疑う余地がないことを証明した。壮大なフリーだった」と称賛。元世界女王メドベージェワも「自分のパフォーマンスには満足している」と受け止め、紀平の能力を評価する。
次戦はジャパンオープン(10月5日、さいたまスーパーアリーナ)。新たな武器の習得に挑む今季は平昌五輪女王アリーナ・ザギトワに加え、ロシアの伸び盛りのジュニア勢も続々とシニアデビューし、激しい争いが一層繰り広げられるが、主役の座を譲るつもりはない。
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