今季初戦オータム・クラシックで優勝
前人未到の五輪3連覇へ今季初戦で世界王者の闘志が再び燃え上がった。フィギュアスケートのオータム・クラシックは14日、カナダのオークビルで行われ、男子は冬季五輪2連覇のエース羽生結弦(ANA)がショートプログラム(SP)に続いてフリーでも1位となる180・67点をマークし、合計279.05点で4度目の優勝を果たした。ケビン・エイモズ(フランス)が262・47点で2位だった。
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夢の大技となる史上初のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)成功を最優先にしながら、その先に2022年北京冬季五輪も視野に入れる。シニア10年目。令和時代も新たな伝説をつくる戦いが始まった。
「完成形」求めるシーズン
SPとともに「完成形」を目指すフリーは2季連続で同じ難関の演目「Origin」。濃い紫色の新衣装も初披露した24歳の羽生が挑んだ4度の4回転ジャンプは冒頭のループと続くサルコーで着氷が乱れ、2度のトーループとも回転不足を取られた。出来栄え点で2点以上がついたジャンプは3回転ルッツのみ。それでもステップとスピンで全て最高難度のレベル4を並べ、圧巻の表現力で得点を積み上げた。
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SPは冒頭の4回転サルコーで転倒したが、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)、4回転―3回転の連続トーループを完璧に決め、立て直した。着氷後にもこだわったトリプルアクセルにはジャッジ4人が出来栄えで5点満点をつける圧巻の内容。表現面を示す演技点は5項目で全て9点台だった。
もちろん「ノーミス以外は敗北」と自らに高いハードルを課す「完璧主義者」の王者にしてみれば満足な出来とはいえないが、昨季のこの大会に比べて合計点で15.40点も高く、今季初戦にしてはまずまずのスタートとなった。
逆襲へ5回転練習も
オフに体をつり上げる補助器具「ハーネス」を使って基礎点がない超大技の5回転ジャンプにも取り組んできた。クワッドアクセルを習得するにはこれまで以上の跳躍力と回転力が必要で、柔軟な発想を取り入れた形だ。体に覚え込ませるこの練習でトリプルアクセルにも余裕が生まれている。
昨季は右足首の負傷もあり、3月の世界選手権で合計323.42点を出して2連覇したネーサン・チェン(米国)に敗れ、準優勝に終わった。この悔しさが逆襲のシーズンへの原動力となり、勝利への欲求とさらなる高みへ引き上げる炎に火が付いた。
10月のGPシリーズから本格的なシーズンが始まる今季は、フリーで4回転ルッツを組み込み「4回転5本構成」という超難関プログラムの挑戦も見据える。そしてまだ世界で誰も決めたことがない離れ業「クワッドアクセル」の完成も同時並行で目指す。時には笑顔で「失敗も歓迎」しながら、進化を続ける絶対王者。
自らの限界に挑戦する「生きざま」ともいえる明確な姿勢が、アスリートとしての本能と闘志をかき立てている。
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