世界選手権、羽生は2位
異次元の4回転バトルはフィギュアスケート界の新時代到来を印象付けた。5年ぶりの日本開催となったフィギュアスケートの世界選手権がさいたま市のさいたまスーパーアリーナで行われ、男子は昨年11月の右足首負傷からの復帰戦だった冬季五輪2連覇の羽生結弦(24)=ANA=がショートプログラム(SP)3位で迎えたフリーで世界初の4回転トーループ―トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の2連続ジャンプを決め、合計300.97点で銀メダルを獲得。SP1位のネーサン・チェン(19)=米国=がフリーも1位となり、現行ルールで世界最高の合計323.42点で2連覇を達成した。SP6位の宇野昌磨(21)=トヨタ自動車=は合計270.32点で4位だった。
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4カ月のブランク経て復活
羽生が完全燃焼したフリーの演技を終えると、会場のボルテージも最高潮に達し、右拳を突き上げた。けがによる約4カ月のブランクを経て、痛み止めの薬を服用した末の勝負で復活を証明。それでも「最強ライバル」との直接対決に合計22.45点差と広げられて屈し、2年ぶり3度目の世界一に届かなかった。
冒頭ではSP12.53点差を追いかけた大逆転へ、長期離脱の原因となった4回転ループを果敢に跳んで着氷。3.45点の出来栄え点(GOE)を引き出して名演技の流れをつくった。続く4回転サルコーが回転不足になったのが響いたが、残りの4回転トーループなどジャンプは全て成功。国際スケート連盟(ISU)公認大会で世界初の4回転トーループ―トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も3.12点のGOE加点で18.52点の高得点を得た。
ステップで最高難度のレベル4から一つレベルを取りこぼしたが、技術点は110.26点。表現力や音楽の解釈を評価する演技点は5項目全て9点台を並べ、95.84点。フリーでは今シーズンの自己ベストを大きく更新する206.10点をマークし、改めて大舞台での勝負強さを見せた。
チェンは4回転4本
一方、今季負けなしのチェンは羽生と同様、4回転ジャンプを3種類4本跳び、その上をいく圧巻の演技を見せた。羽生がフリーに組み込んだ4回転ジャンプで最も基礎点が高いのは4回転ループの10.50だが、チェンは冒頭から基礎点11.50の4回転ルッツ、続いて基礎点11.00の4回転フリップを組み込み、いずれも余裕を持って完璧に成功させた。4回転ルッツは4.76点のGOE加点を得て16.26点、4回転フリップは2.04点のGOE加点で13.04点、4回転トーループは12.89点を稼いだ。
失意の平昌から全勝
一皮むけたチェンは演技後半も勢いを加速させ、4回転―3回転の2連続トーループで3.39点のGOE加点を引き出して18.46点。スピンやステップは最高難度のレベル4を獲得し、技術点は羽生を10点以上上回る121.24点。演技点も5項目全て9点台で94.78点だった。フリーでも1位の216.02点をマークし、羽生を9.92点も上回った。これでグランプリ(GP)ファイナルと世界選手権で2年連続2冠を達成。昨秋、米東部の名門エール大に進学し、文武両道で奮闘する米国のエースは5位に終わった失意の平昌冬季五輪後からの無敗を守った。
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世界初の4回転半へ
「打倒チェン」へ羽生は闘志を新たにした。基礎点が高い4回転ジャンプの必要性を痛感し、全種類をそろえるレベルを目指す。来季、挑戦することを明言している世界で誰も成し遂げていない大技、4回転半「クワッドアクセル」も挑戦する。
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今大会はフリーで3種類の4回転ジャンプで勝負したが、新たに難易度が高いルッツ、フリップ、アクセルの順で4回転ジャンプを増やしていく構えだ。現役引退を表明した米大リーグ、マリナーズのイチロー元選手の野球愛を貫いた姿勢にも刺激を受けた。羽生が来季、どんな演技を見せてくれるか注目される。