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【eスポーツが知りたい!】ゲームで食べていく!日本人プロゲーマーの経歴と実情は?

2018 3/2 10:04SPAIA編集部
梅原大吾
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Photo by Leonel Calara/Shutterstock.com

 

 世界には年俸1億以上稼ぐプロゲーマーも存在するeスポーツ。競技人口は1億を超えると推定されており、これはテニスの競技人口とほぼ同じだそうだ。
 ゲーム大国の日本でももちろん、プレイヤーの数は相当数いる。しかし、景品表示法等の法律により高額賞金が出しにくいという問題があり、プレイヤーのプロ化がなかなか進まない。アスリートと同等の扱いを受け、就労ビザも取得できる海外のプロゲーマーたちとの差を埋めるには相当な努力が必要とされるのだ。
 そのような状況下でプロゲーマーになった日本人がいる。彼らはどのような経緯でプロになったのだろうか。今回はプロゲーマー界の実情とともに紹介したい。

日本人初のプロゲーマー、梅原大吾

 日本人として初めてプロゲーマーになったのが、「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネス記録を持つ梅原大吾だ。
 梅原は1981年生まれ。11歳で「ストリートファイター」と出会い、弱冠17歳で世界チャンピオンになった。しかし当時はゲームへの風当たりが強く、周囲の目は冷たかった。22歳のときには一度はゲームを辞めることを決意したが、28歳の時に復帰。世界的なeスポーツ大会「EVO」で優勝したことをきっかけに米国の企業と契約し、日本人初のプロゲーマーになった。
 素早い反射神経が必要とされることから選手生命は25歳までと言われているeスポーツだが、梅原は30代半ばになった今も現役で活動している。現在はプレイヤーとしてだけでなく、執筆や講演活動も目立つ。ゲームを職業にすることが考えられなかった時代にプロゲーマーとして成功した梅原は、後のプロゲーマーを目指す日本人に希望を与えることとなった。

プロゲーマーになるために海外進出が必須?

 国内では梅原に続く世代として、東大卒のプロゲーマーとして有名な「ときど」や、2014年、2015年と2連覇で世界王者となった「ももち」など人気プレイヤーがいる。彼らはどのようにプロゲーマーになったのだろうか。
 ときどは東大を卒業した後、東大大学院を中退してプロゲーマーを目指すという異色の経歴を持つ。2010年にアメリカの企業とスポンサード契約を結び、晴れてプロゲーマーになった。2017年からはアメリカのプロチームに所属している。
 一方、日本人女性初の女性プロゲーマー「チョコ」とともに夫婦で「Evil Geniuses(世界最大級の北米プロゲーム団体)」に所属するももちは、プロゲーマーになるためにまず海外のチームに入ることを目指した。当時は別の仕事をしながら自費で海外遠征する生活だった。その間に英語でブログを書いたり、海外企業に営業をかけたりしながら1年かけてプロ契約にこぎつけた。世界王者になった2015年の年収は1000万弱だった。
 このように、海外では企業がプレイヤーのスポンサーになることは珍しくないため、多くのプロゲーマー志望者は海外の大会で成果を出し、企業とのスポンサード契約を目指す。また、プロになるまではアマチュアプレイヤーとして別に職業を持ちながら生活しているケースが多い。

プロゲーマーを“社員”として育成

 プロゲーマーになるには、海外の企業と契約してスポンサーになってもらうしか道がないのだろうか。実は、そうではない。最近ではプロゲーマーとして収入を得る方法も増えてきている。
 たとえば国内のプロチーム「DetonatioN Gaming」は、2015年に国内初のフルタイム・給与制を取り入れた。チームのメンバーは共同生活を行いながら、毎日何時間もゲームをやり続ける。それぞれの選手が稼げる金額は大きな差があり、上は年間700万ほど、下は月に2~3万程度で、もらえるインセンティブにも差があるそうだ。
 そのため、賞金以外の収入源もある。ある程度実力のある選手ならスポンサー企業がつくことはもちろん、SNSや動画サイトでファンがつけばイベント出演のオファーがくることもある。また、ユーチューバーのように動画の配信料や広告料でも収益が得られる。さらに「DetonatioN Gaming」では、ゲーミングPC・メガネなどグッズ開発・販売にも力を入れている。
 給与制を導入することによって、一定の収入は確保しながら、毎日ゲームに集中できる環境はプロゲーマーにとって有利だ。チームのCEO・梅崎伸幸は、ゲームで暮らしていけることを証明し、次の世代に夢を与えることを目指している。

プロゲーマーを取り巻く環境が劇的に変化している

 プロゲーマーとして活躍する人々が増えていく中、日本でも海外との格差を埋めようとする動きが出てきている。
 2018年2月1日、eスポーツ大会の開催やプロライセンスの発行を目的とした「日本eスポーツ連合」が発足した。ライセンス発行対象者の条件としては、公式大会で優秀な成績を収めること、規定の講習を受けることなどがある。このライセンス制度がどのように機能するのかは未知数だが、今後のeスポーツ界の発展に良い影響を与えることは間違いない。
 また、教育機関も今後は充実していくだろう。現時点でも、プロゲーマーを目指せる専門学校がいくつか存在する。カリキュラムには反射神経を養うための物理的なスポーツトレーニングや、ゲーム実況、大会を運営するためのイベントプランニングなど、eスポーツに関わることを設備の整った環境で学ぶことができる。卒業後はプロゲーマーだけでなく、イベントMC・実況や、イベントスタッフ、プロモーションスタッフ、ゲームクリエイターなどの道も用意されている。
 eスポーツ強豪国の韓国では、将来なりたい職業のベスト3にプロゲーマーが入っているそうだ。日本でも賞金の問題が緩和され、収入の基盤が強固になれば、プロゲーマーを目指す子供たちも増えていくだろう。プロゲーマーが職業の一つとして国内でも広く認知されることを期待したい。