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ブエルタ・ア・エスパーニャを勝つ条件とは -過去6年間のTOP10のデータから-

2018 10/6 13:00對馬由佳理
,ブエルタ・ア・エスパ―ニャ,サイモン・イェーツ,ⒸSPAIA編集部
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ⒸSPAIA編集部

選手にとって調整が難しいブエルタ・ア・エスパーニャ

9月16日にサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)の総合優勝で幕を閉じた、今年のブエルタ・ア・エスパーニャ。当然、3週間の自転車レースで勝利を手にするのは簡単なことではなく、1年間のレース・スケジュールをうまく管理し、ストレスなく「フレッシュ」な状態でレースを迎えることが必要だ。

しかし、ブエルタ・ア・エスパーニャは、プロの自転車ロードレース・シーズンの終盤に開催されるため、「フレッシュ」な状態でレースを迎えられる選手は数少ない。

今回は、過去6年間の総合順位でTOP10以内に入った選手のデータを用いて、ブエルタ・ア・エスパーニャで勝つために必要な条件を導き出したい。

年度別走行距離から見えるレースのスピード化

各年TOP10選手たちのブエルタ開幕前に出走した、3つのデータに注目した。

1.レースの合計走行距離
2.レースの総日数
3.レースの数

ブエルタ・ア・エスパーニャ,ⒸSPAIA

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まず、過去6年間のTOP10平均データから走行距離に注目すると、2015年を境にブエルタ前の選手たちの走行距離が急激に短くなっていることに気付く。また、2015年の平均走行距離は2014年の約48%しかないにもかかわらず、レース日数は2015年の方が多くなっている。

これは、ここ数年のヨーロッパ自転車ロードレースのスピード化を意味している。TVで長距離レースを見ている視聴者たちが退屈するのではと考えた主催者側が、スピーディーな展開を求めるため、レース距離を短縮する案を打ち出したのだ。そしてレースの距離が短くなった分、厳しい山岳コースを組み入れることで視聴者を飽きさせない中継が可能になった。

このような動きが顕在化し始めた2015年から、トップクラスの自転車選手のレースにおける年間走行距離も短くなり始めた。

ブエルタを制するための条件とは

ブエルタ・ア・エスパーニャ,ⒸSPAIA

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次に、各年のブエルタ総合優勝者とTOP10平均を比較してみると、ブエルタ前のレース走行距離及びレース日数がTOP10平均より多くなっているのは2016年のナイロ・キンタナと2018年のイェーツの2人のみ。

また、ブエルタ前に出走したレース数に限っては、各年のTOP10の平均レース数より多くのレースを走った総合優勝者は1人もいない。裏を返せば、「その年に出走したレースの数が、TOP10の平均より少ないこと」がブエルタ・エスパーニャの総合優勝を勝ち取るための条件の1つと言える。ちなみに、過去6年間のTOP10選手のブエルタ前の出走レース数は、8.4レース。ブエルタ前の出走レース数を8レース以下に抑えることが、総合優勝を成し遂げるためには必要となってくる。

今回は、ブエルタに出走する上での「フレッシュ」な状態とは何かを、レース走行距離、レース日数、レース数のデータをもとに分析した。「ブエルタ前に出走したレース数」をコントロールし、いかにして「フレッシュ」な状態で臨めるかが過酷なブエルタを勝ち抜くカギと言えよう。