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“平成のシンデレラボーイ”伊藤雅雪は長期政権を築けるか

ボクシンググローブ,ⒸShutterstock
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Ⓒゲッティイメージズ

日本人37年ぶりに米国で戴冠

ボクシングの本場・米国からビッグニュースが飛び込んできたのは7月29日(日本時間)だった。日本でも知名度の低かった伊藤雅雪が、不利の予想を覆して世界初挑戦で王座奪取。23戦全勝のディアスからダウンを奪う完勝で、日本人として37年ぶりに米国でタイトルを奪う快挙だった。

伊藤は東京・江東区生まれの27歳で、駒大1年時にプロデビュー。在学中に結婚し、現在は二女の父という異色の経歴の持ち主だ。

次戦は12月30日にトリプル世界戦のメインイベントとして、イフゲニー・シュプラコフ(ロシア)と初防衛戦を行うことが決まっている。端正なルックスで、日本中央競馬会(JRA)のCMに出演したこともある伊藤は、どことなく元世界6階級王者のデラホーヤにも似ており、注目度の高い年末の試合で勝てば、さらに人気が高まるだろう。

米国での奪取後は“短命政権”?

ただ、伊藤にとっては嫌なデータがある。これまで米国で世界王座に就いたボクサーはその後、苦しんだ例が多いのだ。

米国で世界奪取したボクサー表

ⒸSPAIA

まず、日本人ボクサーで初めての海外王座奪取を果たし、“シンデレラボーイ”と呼ばれた西城正三。当時のフェザー級で5度防衛は立派だが、同時期に1階級上の世界王者だった小林弘とのノンタイトル戦で判定負けし、6度目の防衛戦でもゴメスに敗れ無冠となった。引退後はキックボクシングに転向したものの、藤原敏男に敗れて引退。王座奪取があまりにも衝撃的だった分、その後はそれ以上のインパクトを与える活躍はできなかった。

2人目は2階級制覇の名王者・柴田国明。世界王座に就いた計3度のうち、2度が海外でのタイトル奪取(1度目はメキシコ)だが、ホノルルで獲得したWBAスーパーフェザー級王座は2度目の防衛戦でビラフロアとの再戦で敗れ、手放した。

3人目はデトロイトで衝撃のワンパンチKO劇を演じた上原康恒。柴田と同じく、2度目の防衛戦でリターンマッチとなったセラノに敗れた。

4人目は伊藤雅雪の王座奪取で久々にスポットが当たった三原正。豊富なアマチュア経験を生かして無敗のまま王座に上り詰めたが、初防衛戦でKO負けを喫した。

さらに2017年12月には尾川堅一がラスベガスでファーマーとの王座決定戦を制し、「日本人36年ぶり快挙」と報じられたが、後にドーピング検査で陽性反応が出たため無効試合となり、王座獲得も白紙に戻された。

初防衛戦はロシアの難敵

尾川を除く4選手の防衛回数を平均すると1.75。伊藤はジンクスを吹き飛ばして防衛を重ね、長期政権を築くことができるだろうか。

初防衛戦の相手、シュプラコフは20戦全勝(10KO)のテクニシャンで、WBOでは1位にランクされている。伊藤にとって決して楽な相手ではない。

最近は山中慎介12度、内山高志11度、長谷川穂積10度など具志堅用高の持つ日本記録、13度防衛に迫る長期安定政権を築いた日本人王者が多いだけに、伊藤にかかる期待は小さくない。 王座を獲るよりも難しいと言われる初防衛戦。難敵をクリアすれば、“平成のシンデレラボーイ”が一気にスターダムを駆け上がる可能性もある。