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日本ボクシング界の至宝・井上尚弥はパッキャオになれるか

2018 11/13 15:00SPAIA編集部
井上尚弥,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

70秒KOでさらに評価高まる

10月7日の横浜アリーナ。井上尚弥が狙いすました右ストレートを放つと、元世界王者のパヤノは背中から倒れ、そのまま起き上がれなかった。わずか70秒。世界の猛者が集うWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)で、予想以上の強さを見せつけた。

WBSSとは、WBA、WBC、IBF、WBOと統括団体が4つある上、スーパー王者、暫定王者などベルトを持つボクサーが複数いるため、誰がその階級で一番強いのかわからない。そこで、その階級で最強は誰かを決めるのがこの大会だ。今回はバンタム級のほか、スーパーライト級とクルーザー級で開催されている。

WBAバンタム級王者の井上は、参戦を決めた時から本命視されていたが、パヤノ戦でその評価がさらに高まった。具志堅用高を抜いて日本人選手最長となる世界戦7連続KO、内山高志を上回る日本選手最多の世界戦11度目のKO勝利となったが、もはや国内記録で測るレベルではない。

パウンド・フォー・パウンド6位に上昇

米国で最も権威のあるボクシング専門誌「リング」が発表したパウンド・フォー・パウンドの最新ランキングで、井上は7位から6位に上昇。本場・米国からも井上は熱い視線を浴びている。

パウンド・フォー・パウンドとは、体重別に階級が分かれているボクシングにおいて、同一体重と仮定した場合の強さを決めるランキング。上位にはロマチェンコ(ウクライナ)やアルバレス(メキシコ)、ゴロフキン(カザフスタン)らそうそうたる面々が名を連ねる。井上がいかに世界から高評価を得ているかを証明するものだ。

順当なら来年中にWBSS優勝

話をWBSSに戻す。バンタム級は1回戦最後の試合で、日本の西岡利晃にTKO勝ちしたことがあるノニト・ドネア(フィリピン)がWBAスーパー王者・バーネット(英国)を破り、ベスト4が出そろった。来春にも予定される準決勝で、井上はIBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)と対戦し、勝てば決勝でWBO王者ゾラニ・テテ(南アフリカ)vsドネアの勝者と戦う。

順当なら来年中にも井上は、日本円で億単位の優勝賞金を手にするだろう。さらに楽しみなのはその後だ。

5階級制覇の期待も

バンタム級にとどまれば、具志堅用高の持つ13度防衛の日本記録更新も期待できるが、適性階級は1階級上のスーパーバンタム級という話もあり、バンタム級王座を返上して4階級制覇を狙うことも十分にあり得るだろう。

井上は2014年4月にWBCライトフライ級、同年12月に2階級上げてWBOスーパーフライ級王座を獲得。さらに、2018年5月にWBA世界バンタム級王座を獲得し、3階級制覇をしている。 仮にフライ級王座に挑戦していれば、今頃すでに4階級制覇をしていたかも知れないと思うと惜しい気持ちになるが、今後は4階級にとどまらず、フェザー級まで上げて5階級制覇を達成しても不思議ではない。

井上尚弥のクラス別防衛回数


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長いボクシングの歴史でも、5階級以上でベルトを巻いたボクサーは7人しかいない。ハーンズ、レナード、メイウェザーらはボクシングファンでなくても聞いたことはあるだろう。 そして史上最多の6階級を制したのがオスカー・デ・ラ・ホーヤ(米国)とアジアの英雄、マニー・パッキャオ(フィリピン)だ。

複数階級制覇したチャンピオン


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米国が主戦場の世界のボクシングシーンで、アジア人が主役になることはそうない。しかし、井上ならその期待を抱かせてくれる。日本ボクシング界の至宝はパッキャオになれるか。今後が楽しみで仕方ない。