終盤戦の延期はリーグの後退を招きかねない
中国・武漢から発症したとされる新型コロナウイルス(COVID-19)が全世界で猛威をふるっている。規模の大きさに関わらずイベントが中止をされたり、全国の公立小中高校が臨時休校したりと影響は大きい。
Bリーグにおいても、2月23日の試合を最後に延期が続き、4月1日までの試合は当面無観客で行われることになった。延期の影響でチャンピオンシップはレギュレーションの変更を余儀なくされ、B1ではチャンピオンシップ出場クラブを8に維持しながら1戦決着となり、ファイナルの開催も平日にずれ込んだ。
何とか開催できる道すじを立てられたとはいえ、ここまで順調に成長をしてきたBリーグにとって初めての危機と言えるだろう。
現在はポストシーズンの試合も含めても残り20試合前後とシーズンは終盤戦。そうした中での試合延期、中止はシーズンを盛り上げる大事なタイミングに水を差すことは間違いない。
各クラブは毎年売上高や観客動員数を年々向上させており、特に終盤は“数字の稼ぎ時”である。昨季年間の観客動員数の平均は3,078人と、初めて3,000人を超えた中で3月、4月に絞ると3,284人と平均の200人増。こうして終盤にかけて動員数が伸びる現象は毎年続いている。
また当然ではあるが観客が多くなっている分、入場料収入、物販収入も比例して増えているはずだ。イベントの充実、新しいグッズの開発をこの期間に目がけて計画しているクラブは多く、“稼ぎ時”にホームゲームができないのは非常に痛い。
延期・無観客試合で経営が傾くクラブも
それだけに延期や無観客試合が続く現在の状況は、クラブとしても経営にも関わってくる。
例えば宇都宮ブレックスは昨季、入場料収入がリーグトップの4億3,000万円で、クラブの営業収入の約3分の1を占めていた。今季予定されている残り12試合のホームゲームが全て無観客になった場合、今季の収入額を5億円で見込んでいたとしても、3分の1が丸々損失するため3億5,000万円前後になると予想される。
今季の日本人選手の平均年俸が1,610万円であることを考えると、単純計算で日本人選手約10人分の収入が減ることになるのだ。観客動員に紐づく物販収入を合わせると2億円近く、また無観客試合となれば会場使用料やその他の雑費を含め損失はさらに大きくなる。
ただ宇都宮のようなビッグクラブであれば、経営が一気に悪くなることは考えにくいが、スポンサー収入が少なく入場料収入が頼みの綱というクラブが多いB2では、財政が傾いてしまうケースも出てくるだろう。
こちらも昨季の数字ではあるが、B2香川ファイブアローズや山形ワイヴァンズなど、入場料収入が2,000〜3,000万円のクラブも書き入れ時となる終盤の収入がなくなるため1,000万円近い損失になるだろう。
クラブの財政が厳しくなることを考慮し、リーグは配分金の前倒し等クラブ存続のサポートをしていくという。
選手の補強も無駄に…、一刻も早い収束を
Bリーグは毎年2月末を選手登録の締切にしており、今季も多くのクラブが選手の入れ替えを行った。そうした選手の補強も、試合を行われていない今は無駄になっている状況だ。
シーホース三河はオーストラリア出身の#5ダニエル・ジョンソンを獲得、香川もニュージーランド代表の#51ロバート・ローを加えるなど立て直しを図った。しかし、どんなに期待された選手でも、試合がなければ宝の持ち腐れだ。
いつ収束するか分からない状況では、選手のモチベーション維持も難しくなる。現在、各クラブは通常の練習に加え、近隣のクラブと合同練習を実施し何とか試合勘を失わないよう、来たる再開に向けてコンディション維持を図っている。
特効薬もない今、一刻も早い収束をただ祈るしかない。そんな中、4月1日までの試合が「バスケットLIVE」で無料配信されることになった。当分の間は映像での観戦となるが、選手たちがコート上で見せるプレーを映像を通して追いかけたい。
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