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毎年増加する帰化選手 彼らがもたらす影響力【Bリーグ】

2020 2/7 11:00ヨシモトカズキ
宇都宮ブレックスの#22ライアン・ロシターⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

レギュレーションの変更で“帰化バブル”に

12月と1月に、宇都宮ブレックスの#22ライアン・ロシター、千葉ジェッツのギャビン・エドワーズが日本国籍を取得し、帰化選手として登録されることになった。これにより宇都宮、千葉はロシター以外に外国籍選手を2名、コートに送り込めるようになり、選手起用の幅が広がった。一昨季は川崎ブレイブサンダースの#22ニック・ファジーカスが帰化選手となり、ここ数年帰化選手は増加傾向にある。

Bリーグ初年度はB1に7名のみだったが、今季はB1に10名、B2にも3名在籍し、B3を合わせると申請中の選手も多い。まさに“帰化バブル”が起きているのである。

理由としてはいくつかあるが、2018−19シーズンからのレギュレーション変更で帰化選手も外国籍選手と同時にコートに立てることになり、より重宝されるようになったことが大きい。さらに帰化した選手のサラリーの高騰もあり、日本永住を目指す選手にとって良い環境下にある。

当然ながら彼らは各クラブの主力として活躍しており、貢献度は高い。

制度の有効活用とステップアップ 各選手で帰化の理由は分かれる

B1クラブに在籍する帰化選手の代表格は、先に挙げたロシター、エドワーズ、ファジーカスの3選手だろう。どの選手も今夏の東京オリンピックの代表入りで注目されている実力者だ。

ロシターは卓越した技術もさることながら、クレバーかつ献身的な働きも担うことができる選手。今季も平均20得点、10リバウンドに近い数字を残しながら、4.5アシストを記録。スティールとブロックも高水準で非の打ちどころがない選手だ。

走れるセンターとして活躍するエドワーズは、その積極的なプレーで千葉の得点源となっている。昨年は59試合に先発し平均13.8得点、7.9リバウンド、3.3アシストを記録し、Bリーグ通算3,000得点を達成した。優勝にも大きく貢献しチームになくてはならない選手だ。

すでに日本代表でも活躍したファジーカスは、絶対的な得点源として川崎を支えている。機動力に衰えは見えるものの、いまだ得点力とリバウンドは健在でダブルダブルはお手の物だ。

この3選手は国籍取得前より存在が大きく、今季も数字を伸ばしているものの極端な変化はない。一方、ほかの選手で目立つのはステップアップだ。横浜ビー・コルセアーズの#32エドワード・モリスは国籍取得前、B3の八王子ビートレインズに所属。また秋田ノーザンハピネッツ#28ウィリアムス ニカもB2でプレーするなど、決してトップで活躍していたわけではない。加えて、留学生として高校から日本に渡ってきたサンバ・ファイ(サンロッカーズ渋谷#3)、ファイ パプ月瑠(レバンガ北海道#6)も下部リーグを含め様々なクラブを転々としながら、現在は上位クラブに在籍している。

残念ながら各選手ともに大活躍といえる数字を残すことはできていないが、コート上では主にゴール下を支える働きを担い、コート外では現在国籍取得を目指している選手たちのモデルになっている。B3では帰化申請中と日本の高校と大学に在籍した選手は帰化選手と同等に扱われるため、今後のステップアップを目指す選手の登竜門に。現に該当している選手は7名もおり、試合感覚を養いながら国籍取得を待てるのだ。

帰化選手増加で外国籍選手にも影響が出る?

バックグラウンドは様々だが、これからも帰化選手は増えてくるだろう。その中で筆者が期待するのは、アウトサイドの外国籍選手が増えること。踏み込んだ話をすれば、日本人ビッグマンが在籍している上にロシターが帰化した宇都宮のようなチームは、インサイドとアウトサイドに外国籍選手を1名ずつ据えても大きな戦力ダウンはない。帰化選手が1人いれば、チーム編成でも柔軟な考えが生まれる。

さらに来季はアジア枠の導入が決まっており、外国籍選手のバリエーションが豊富になる。日本人選手のプレータイム減少を危惧する声が多いが、リーグ戦からタイプの異なる複数の外国籍選手と対峙できるのは、日本人選手の強化の観点から考えれば大きなプラスに転じるはず。

実際、Bリーグ初年度にアルバルク東京に所属したディアンテ・ギャレットを止めるべく各クラブはいくつもの策を講じ、日本人選手は普段から元NBA選手とマッチアップできる環境があった。

現在はアウトサイドの外国籍選手は皆無に等しいが、日本国籍取得を目指す選手が多い今の状況と、来季のレギュレーション変更を考えれば状況は大きく変わってくるだろう。帰化選手の存在は試合での活躍はもちろんのこと、日本人選手の技術の向上にも影響してくる。