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序盤で苦しむB1三河、巻き返しのカギは守りにあり

2019 11/2 06:00ヨシモトカズキ
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攻撃力は抜群、リーグトップクラスの数字を記録

今季#54ダバンテ・ガードナーを獲得し、昨季のチャンピオンシップ不出場から一気に優勝候補に躍り出たシーホース三河。今季は東地区の強豪にも匹敵する力を誇るだろうと思われたが、ここまで3勝7敗と苦しんでいる。

攻撃力はガードナーを獲得し、格段に向上した。今季の平均得点数は地区優勝を果たした2016−17シーズン、2017−18シーズンに匹敵する83.3点を記録し、FG%(フィールドゴール成功率)も18クラブで唯一5割を超え、フリースロー成功率も85%でダントツのトップ。ペイント内の得点も増えて、平均得点の約半分である42点をインサイドで稼いでいる。

その中心は言わずもがなガードナーで、平均得点は昨季より5点ほどダウンしているものの、FG%が6割超え、フリースロー成功率も9割近い数字を残しており、質の高いプレーを見せている。

また日本人エースの#14金丸晃輔もガードナー同様に得点は下がっているが、同じくシュートの成功率が向上。#2岡田侑大は得点、成功率ともに昨季以上の数字を残しており、ここに#1川村卓也が復調し、外国籍選手も絡んでくれば三河の攻撃力はさらに強大なものとなるだろう。

点の取り合いが失点の多さを招く

しかしディフェンスは崩壊しており、勝ち星が伸びない最大の原因となっている。確かにここまでの三河は強豪との対戦が多く、すでに東の「3強」宇都宮ブレックス、千葉ジェッツ、アルバルク東京と対戦している。しかも全ての試合で80点以上を取られる敗戦で、平均失点は84.3。これは未勝利の三遠ネオフェニックスに次ぐワースト2で、平均得点よりも高い。

数字で見られる原因はいくつかある。今季の三河は得失点ともに平均80点を超えているが、得失点ともに高いのはNBAのゴールデンステイト・ウォリアーズのようなチームにも言えることである。ウォリアーズは昨季、リーグ2位の117.7得点を残しながら、失点は16位の111.2。この数字を見るとウォリアーズがディフェンスに問題を抱えたチームに思えるが、両チームの試合展開の速さには開きがある。

試合の展開の速さが分かるPaceにおいて、ウォリアーズはリーグ上位の101.73。失点が多いのはディフェンスが悪いからではなく、ただ単に攻撃回数(ラリー)が多いからなのである。攻撃回数が多くなれば、必然的に得点も失点も増えることは容易に想像できる。

対して三河のPaceは75と下から3番目。これが意味するのは、じっくりと試合を進めながら確実に得点している一方で失点も多いこと。攻撃機会が少ない中で自分たちの得点率が高くても、同じくらい相手に得点を許してしまっては、いくらガードナーや金丸が点を取っても勝利は難しい。

意識改革とチーム力の向上が勝利への近道

攻撃回数が少ない中でも、しっかり得点ができているのは立派だ。しかし、リバウンドやブロック、スティールの数がそこまで変化がないにも関わらず失点が多いのは、数字に表れないディフェンス意識の低さやコミュニケーションミスが生じていると予想できる。

昨季は208センチ、133キロの巨体を誇ったアイザック・バッツがゴール下に君臨し威圧感を放っていたが、今季はシーズン前のメディカルチェックをパスできず契約解除。バッツの代役で契約した外国籍選手はみな、オフェンス意識が高く昨季のような堅いディフェンスができていないのは事実で、これも大きな痛手となった。日本人選手もディフェンスが得意と言える選手が少なく、個々のディフェンス力では打開できない状況で、新加入選手が多かったことも少なからず影響している。

そこで試されるのがチーム力である。いかにしてチーム一丸となってディフェンスに集中できるかがカギとなる。得点を稼ぐガードナーも金丸も岡田もディフェンスが得意とは言えないが、個々の意識を高め、不得意な部分を全員でカバーし合うことが勝利への近道だろう。

今季からスタメンを任されている#11熊谷航も、試合の展開を読みながらゲームメイクができれば失点の減少につながるはず。今後の三河の逆襲が楽しみだ。

※数字は2019年10月31日現在