bj時代に3連覇へ導いた手腕に期待
Bリーグの開幕を約1ヶ月後の10月に控え、B1に所属する大阪エヴェッサが新体制を発表した。主な新加入選手は、外国籍選手ではNBAドラフト指名経験のあるリチャード・ヘンドリックスと、24歳と若いショーン・オマラ。ふたりは走力のあるビッグマンだ。また2017-18シーズンの新人王候補にもあげられた司令塔役の伊藤達哉が、京都ハンナリーズからの移籍で加入。帰化選手であり、元日本代表のアイラ・ブラウンの獲得にも成功するなど、戦力増強を果たした。
そして今季の体制の大きな話題は、bjリーグ時代の2005~2010年に大阪を率い、リーグ初年度から3連覇を達成した天日謙作ヘッドコーチ(HC)の9シーズンぶりの復帰だ。
天日HCの代名詞といえば、“走るバスケ”。時代に合わせてのチューニングは施されるが、今回のカムバックにあたっても基本スタイルは不変である。
「昔はいっぱい走っていましたが、今はあのころとはちょっと違いますね。でも運動量が多くて、選手がコート内を行き来する回数が多いゲームのほうが、お客さんは楽しいと思うんです。お客さんの声が僕らの力になるので、そういうバスケットをしたい。頑張ってアップテンポなゲームにしようと思っています」
Ⓒカワサキマサシ
激しい守備を仕掛け、ボールを奪ったら速い展開で敵陣に攻め入る。それが、天日HCが標榜するバスケ。これが遂行されれば必然と攻撃回数は増え、得点の増加が期待される。リーグやメンバーが違うので単純に比較できないが、天日HCが率いたbjリーグ時代の大阪はほぼすべてのシーズンで、1試合平均80点代半ばから後半のハイスコアをマーク。西宮ストークスを1シーズンでB2からB1に引き上げた2016-17シーズンも、1試合平均得点は79.3を記録した。
昨季の大阪の1試合平均得点はリーグ最下位で、唯一70点代に届かない68.6。観戦者にとって、攻撃面でやや退屈だった印象は否めない。この点の改善には、大いに期待できそうだ。
“Mr.エヴェッサ”今野が語る今季の見どころ
地元出身で今季がプロ13シーズン目になる今野翔太は、1シーズンをのぞいてすべて大阪に在籍。プロデビューした2007年から3季を天日HCの下でプレーし、ルーキー時代に天日スタイルを身に染み込ませた。
「ウイングの選手はコーナーの決められた位置まで、全力で一気に走らないといけないなど、走るというスタイルは昔と大きくは変わっていないですね。ディフェンスは昨季より強度を上げたものが求められているので、運動量は多いですが、プレー自体はシンプル。そこに今季は、bjリーグ時代よりレベルアップした選手たちが集まっている感じです」
Ⓒカワサキマサシ
今や“Mr.エヴェッサ”と呼ばれる存在になった彼が、今季のチームの見どころを教えてくれた。
「ディフェンスはハードだし、とにかく走るので得点はよく入るでしょう。シュートを決められたあとのアウトレットパスも速く、そこから全員が相手コートに入っていくので、見ていて迫力があると思う。初心者が見てもシンプルでわかりやすいし、バスケに詳しい人なら『こういうプレーで攻めるんやな』というのが見えて面白いと思いますよ」
“パワフルダンカー”藤髙はさらなる飛躍誓う
日本人離れした身体能力の持ち主で、相手を弾き飛ばすかのような力強いドライブと、豪快なダンクで魅せる藤髙宗一郎も、地元出身の選手。大阪には2017-18シーズンに、サンロッカーズ渋谷からの移籍で加わった。大阪で3季目のシーズンを間近に控えて彼は今、初体験の天日スタイルの習得に取り組んでいる。
「天日さんのバスケでは、ウイングが7割の力で走るなんてあり得ないことで、常に100%で走らないといけない。僕のポジションはそのウイングで、走りまくるので大変です(笑)」
Ⓒカワサキマサシ
開幕直後の10月に、28歳になる。選手として絶頂期の年齢だが、さらなる伸び代を感じさせる未完の大器。昨季は不完全燃焼に終わったが、今季は新しいスタイルのバスケットボールを貪欲に吸収し、さらなる成長を遂げるシーズンにしたい。
「天日HCに練習中から求められているのは、相手のマークが空いたら、アウトサイドからのシュートを思い切って打つこと。僕自身も自分の持ち味であるドライブを生かすために、アウトサイドシュートの確率を上げるようにチャレンジしています。また、コーナーから中にドライブで切り込めば、外でフリーになる選手が出てくる場面がある。その状況で、パスするべきところではパスを出す。自分で冷静にその判断ができることも、大事だと思っています。でもアグレッシヴにアタックしなくなると自分の良さが消えるので、そこは継続しつつ、いかに味方を生かすか。それも考えながら、同時にアウトサイドシュートを増やして、得点に絡めるようにしていきたいです」
バスケットボール観戦の醍醐味のひとつは、次々と得点シーンが見られること。Bリーグは今季で発足から4シーズン目で、ライトなファン層も多い。今季の大阪はそんな観戦ビギナーにも訴求する、面白いバスケを見せてくれることに期待できそうだ。