高まるバスケット熱
八村塁のNBAウィザーズ入団で国内でのバスケット熱が急上昇している。それを裏付ける理由の一つとして、大手食品メーカーである日清のカップヌードルは、いち早く名乗りを上げて八村塁をCM広告等に起用。現在、カップヌードルのテレビCMで、八村がカップ麺をフォークですする姿をお茶の間で目にすることが度々ある。
そんな中、八村塁の煌(きら)びやかな活躍の陰で、実力は申し分ないにも関わらず、脚光を浴びることのない同年代の選手たちが少なからずいる。八村塁と同級で現在21歳のゴールデンルーキー、シェーファー・アヴィ幸樹もその一人だ。
東京五輪のため休学してBリーグ入り
日本人の母親とカナダ人の父親との間で生をうけて日本国籍を持ち、205cmに110kgと、日本人離れした恵まれた体格の持ち主である。
ただし八村塁と比較してしまうと、ずば抜けた功績を残している訳ではない。高校卒業とともに八村同様に単身渡米し、名門ジョージア工科大学でバスケットに勤しむ生活に突入したが、2年後の20歳までに思うような結果は残せなかった。
大学バスケットでは、ライバルとなるセンターポジションの2m越えの実力ある選手が5人。この5人の選手たちと熾烈極まるレギュラー争いをしたが、結果的にはレギュラーポジションの座を射止めることは叶わない。
2020年の東京五輪が迫る中で、日の丸を背負って立つプレイヤーになるためには大学バスケットでの結果をも残さなければならない中で、活路を見出すべく大胆な決断をした。
大学でのバスケットを一時休学して、国内Bリーグのトップチームの一つであるアルバルク東京へ2018年に入団(2019年8月から滋賀レイクスターズに期限付移籍)。日本国内でのバスケットキャリアでの実績に重きを置いて、日本代表選出への最短の道を選択したのだ。
筆者の元チームメート
実は、彼が2017年の高校卒業後、アメリカでは秋から大学がスタートする事情もあり、半年ほどのわずかな期間ではあるが、筆者と共にストリート・バスケットボールのチームメイトとして活動した時期がある。ストリート・バスケットの舞台となると、国内トッププレイヤーの一人である彼に太刀打ちできる選手などおらず、豪快なダンクシュートにアリウープで会場を沸かすことが幾度もあった。
既に、その頃から恵まれた体格と潜在能力を評価され、A代表の候補選手として将来を嘱望されていた。高い評価と期待の中、バスケットの本場アメリカへ単身留学での挑戦となったことを補足しておきたい。
それでも本場アメリカでは、常に同級生の八村塁と比べられて、鳴かず飛ばずの苦しい大学生活を過ごすこととなる。八村とは差が広がるばかりの苦しい環境に身を置く中で、Bリーグでコツコツと続けていく道を選択し、2019年7月に日本代表候補に選ばれたわけだ。
八村と同世代に生まれた以上、彼の輝かしい経歴と比べると後れを取ったことは紛れもない事実であるが、これからも期待の21歳の日本人であることは、なんら変わらない。
ワールドカップから東京五輪へ
昨今、日本のバスケットシーンは体格に恵まれた選手が活躍する時代に突入している。他のスポーツ界を見渡しても、野球界ではダルビッシュ有、テニス界では大阪なおみ、陸上界ではケンブリッジ飛鳥にサニブラウンら、ハーフのアスリートが世界で活躍している。ちなみに、続く下の世代には八村塁の実弟である八村阿蓮(あれん)も、虎視眈々とA代表の座を狙っている。
話を本筋に戻すが、現在の男子バスケットボール日本代表は、こうしたハーフ選手が数多くいる。そして日本バスケットボール界において過去最強の布陣で9月から開催のワールドカップ、さらには2020年の東京五輪に挑む。
ワールドカップや東京五輪で期待されているメダルも現実味を帯びている。この二つの大舞台のいずれかでアヴィも活躍することが出来れば、今後のバスケット人生に多くの選択肢が増えることとなる。
まずはワールドカップで八村同様に豪快なダンクを繰り出し、「八村だけではない!」と積極的に猛アピールし、会場を盛り上げてほしい。