「BEYOND 2020~超えて 未来へ~」のテーマで中長期計画を発表
オリンピックが終わる2020年以降が日本のスポーツ界にとって大事な時期になるということで、Bリーグは「BEYOND 2020~超えて 未来へ~」というテーマで中長期計画を発表した。
その場で、Bリーグ創設した2015年9月15日以来掲げてきたミッションと、加えて新たなビジョンをあげた。
■ミッション
・世界に通用する選手やチームの輩出
・エンターテインメント性の追求
・夢のアリーナ実現
■新たなビジョン
・国民的スポーツとしての認知度向上
・NBAに次ぐリーグとしての地位確保
・憧れの職業ナンバー1、就職したい企業ナンバー1
そして具体的には、Bリーグの試合があるときは、試合の結果やトピックスが報道されて、プロ野球やJリーグと並び、国民的スポーツにさせること。NBAに次ぐポジションを確保することで、ヨーロッパなどのリーグに日本人選手が移籍しなくても、NBAに匹敵する外国籍選手が来日して、レベルの高い試合を見せていくことなどを示していた。
Bリーグはこれまで、クラブライセンス導入や外国籍選手のオンザコートルール改革、リーグ戦の平日開催などに取り組んでいた。
さらに、創設当初に掲げた「2020-21シーズンでリーグ戦入場者数300万人、事業収益300億円」については、2018-19シーズンにおいて、入場者数259万人(B1・B2のみ)、収益303億円(JBA、リーグ、クラブの合計見込み)と目標がほぼ見えるところまで来ている。これは予定より2シーズン早い。開幕から3年間の成長率も、8%、18%と順調に伸ばしてきたのだ。
選手の実力も右肩上がりに成長し、FIBAワールドカップには13年ぶりの出場、東京2020オリンピックでも開催国枠として44年ぶりの切符を手に入れている。
Bリーグは創設から平成の終わりとなった2018-19シーズンまでをファーストフェーズとし、この先について大河正明チェアマンは「セカンドフェーズの足場固めをしていきたい」と所信表明をしていた。
“魅せるアリーナ”構想やアジア進出を目指す
「令和でバスケットボールを国民的スポーツにする」
大河チェアマンは、様々なシーンでそう宣言。そして令和に変わったタイミングを、セカンドフェーズとしており、達成させる5つの項目を掲げている。
■ソフト・ハードの一体経営
■デジタルマーケティングの進化
■メディアカンパニー化
■アジア戦略の本格稼働
■地域創生×バスケットボールファミリーの拡大
そのうち、特に重要な2つの項目について以下に触れている。
■ソフト・ハードの一体経営
沖縄などで1万人規模のローカルアリーナの計画が発表された。それに加えて、バスケットボールの聖地となる『ナショナルアリーナ』構想を明かした。大河チェアマンは、ナショナルアリーナについて「資金調達、事業運営、土地選定の研究を始めたばかり」であり、これからローカルアリーナを含めた“魅せるアリーナ”ができることで、様々な変化が起こってくるという。
その変化とは、まず“一体感・臨場感”だ。当然ながら、多くのファンで埋め尽くされたアリーナの雰囲気は、迫力や緊張感に包まれる。昨季のファイナルでは13,000人のファンで埋まり、大きく盛り上がったことは記憶に新しいところだ。
次に“ホスピタリティ”。物販や飲食の店が多くあると、試合観戦とは違う楽しみが生まれる。VIP用のラウンジやボックスがあると、高揚感が増すであろう。
そして“パートナーシップ”。パートナーのアクティビティをサポートすることで、新たなカルチャーが誕生するかもしれない。
最後に“地域サービスの拠点”。バスケットボールの試合会場としてだけではなく、非常時には地域の拠点となることも可能である。防災設備を完備することで、地域のお役立ちになる。
■アジア戦略の本格稼働
これまで、Bリーグの外国籍選手として、中国や韓国などアジアの選手が、試合に出場できていない。これから、アジアに対しては、放映権を販売していく段階であり、その試合放映を通じて、ファンを獲得していく狙いがある。
「中国の調査では、バスケットボールに関心がある層が、人口全体の21%。約3億人の関心があると読みとれる。インドでも人気が拡大し、フィリピンでは国技だ。2023年にフィリピン、インドネシアとのワールドカップ共催を足掛かりとして、アジア戦略の本格稼働をしていきたい」
大河チェアマンは、このように意欲を示し、ファン獲得へ向けて、アジア選手の出場など、次の2年で足元を固める方針だ。
さらに、Bリーグの強みである『ガバナンス活動』。今後は、リーグや事業、地域と向き合っていく仕組み、クラブライセンスの仕組みなどを海外に輸出する構想を明かしていた。
セカンドフェーズをステップにエクスパンション型リーグへ移行
セカンドフェーズは2023-24シーズンまでを区切りとして、2024-25シーズンからサードフェーズとして、更なる改革を推進する。
サードフェーズは2026年をターゲットとして、以下の実現を掲げた。
■“富士山”型リーグ構造
■毎日試合を開催
■魅せるアリーナで非日常の観戦体験、毎試合満員
サードフェーズでは、プロ野球やJリーグを追い越すことが大きな目標となっているが、「地域に根付いた構想からすると、BリーグはJリーグと同じ発想だが、Jリーグと同じ発想ではJリーグを上回れない」と大河チェアマンは語る。
その上で、単年度の競技成績による昇降格廃止も含めた“エクスパンション型リーグ”へ移行するという。今年好調で、来年B1に上がれたとしても、再来年はB2に落ちているかもしれない。このように、すぐに落ちることを考えてしまえば、クラブの成長を求めるのは難しい。
「中長期的にバスケットボールの事業に投資をし、今後はクラブライセンスや複数年の競技成績によって決めていく。やみくもにエクスパンションをするのではなくて、日本人選手の質を考慮し、緩やかな昇降格としたい」
大河チェアマンはそう続けた。
さらに、クラブの成長を加速させるために、B1・B2クラブライセンス基準を大きく引き上げる必要があるとし、エクスパンションを実行するため、従来よりも厳しい新基準を設ける。その参入審査は2024年3月に実施することを発表した。
■基準となる売上高と入場者数
B1:売上高12億円、入場者数4,000人、アリーナハードソフト要件
B2:売上高4億円、入場者数2,400人
特に、B1参入の条件として、“アリーナハードソフト要件が大事”と大河チェアマンは力説している。
「体育館が確保できないから、毎日のように試合ができない。いつでもリーグ戦ができるようなアリーナを確保することが必要。VIP向けやコンコースがあるなど“おもてなし”ができるのか。こういったアリーナに投資をしないといけない。投資はしたが、1年で降格となると、投資の呼び込みはできないと判断した」
B2については、バスケットボールを普及させ、良い選手を育てる様な機能を持ちつつ、地域の中ではシンボルや核として活躍できるようなクラブが集まるリーグとしている。そして参入する条件の目安として、昨季B1で1番小さなチームで5億円を超える売り上げを計上していたことを例とした。
「4億の売り上げができれば、スタッフを多めに配置して選手にも投資ができる。B2でクラブ運営をする上で、幸せ感を持ったクラブ経営ができるのではないか」
2024年3月に予定している新基準審査。これらをクリアしたクラブは、2024-25、2025-26シーズンにおける昇降格が緩和される。そして、2026年には、正式に新しい基準のB1・B2として生まれ変わる。
「これらの条件がクリアする前提で、B1・B2はそれぞれ最大24チームまでとしたい。きっと各チーム頑張ると思いますよ」
単年の競技成績だけで決めず、投資に力を入れたチームに対してはしっかり報いていく。2024年3月までの間も、一部のライセンス基準を段階的に引き上げ、この流れに乗ってきたチームが、これからのBリーグを背負うチームになっていくのは間違いないであろう。