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【BリーグQF】千葉が連勝で富山を下す 「王様気分」で田口が躍動

田口成浩,Ⓒマンティー・チダ
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Ⓒマンティー・チダ

【GAME2前半】千葉が富山・スミスを徹底マーク、優勢に試合を進める

千葉は出だしから、富山#34ジョシュア・スミスを止めにいくが、#10アキ・チェンバース、#27石井講祐が続けてディフェンスファウル。富山も#24大塚裕土、スミスがファウルを重ね、重たい展開から始まる。残り8分を切って、両チームとも得点が動くようになった後、千葉は富山#6船生誠也の3pが外れた後のリバウンドを奪取し速攻に持ち込み、チェンバースがレイアップを決める。その後の富山にパスミスが起こり、早めにタイムアウトを請求する。

その後、千葉がリングに向かって走るバスケで得点すれば、富山も#0レオ・ライオンズがポストプレーからシュートを決めて喰らいつく。終盤も、千葉はパスを回して、#5田口成浩がフェイクを挟んで3pを沈めれば、#2富樫勇樹も3pを決めて、23-15で富山をリードする。

2Q、富山・ライオンズの個人技になかなか対応できず、5点差まで詰められた千葉だったが、#1ジョシュ・ダンカン、#11西村文男の3pで8点差まで戻す。そこから6点差まで詰められたが、富山#7阿部友和と#25葛原大智のオフェンスファウルに助けられ、ペースを取り戻すと、#3マイケル・パーカーの絶妙なスクリーンを使って、富樫からチェンバースにパスが通り、それをチェンバースが決めて10点リードとした。

ジョシュア・スミス,Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

オフィシャルタイムアウトが明けても、富山のファウルが続く。スミスがこの日3つ目の個人ファウルとなるオフェンスファウルを宣告されて再びベンチに下がる。千葉はチェンバース、#1ジョシュ・ダンカンのシュートで得点を重ねるが、富山も大塚が3pを入れるなど5得点で、これ以上離れない様に付いていく。

終盤、富山#11宇都直輝のアンスポーツマンライクファウルでフリースローとその後の攻撃権を獲得した千葉だったが、得点を稼ぐことはできず前半終了。45-36で千葉がリードして後半へ。

【GAME2後半】主導権を渡す時間もあったが、千葉が連勝でセミファイナル進出

後半出だしから、両チームはスコアを重ねていく。前半無得点だったスミスも、ようやくこの日始めて得点をし、ライオンズも続いたが、その後の富山の攻撃時に、スミスは4回目の個人ファウルとなるオフェンスファウルで再びベンチへ。この機に千葉は、#21ギャビン・エドワーズのジャンパー、パーカーに3pが生まれて12点リードとした。

その後、富山も宇都のレイアップ、阿部の3pで千葉に追いすがるが、終盤富樫のダブルクラッチと3p、セカンドチャンスからダンカンが決めて13点リードで最終Qへ。

ジョシュ・ダンカン,Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

4Q、富山は開始早々3秒バイオレーションでペースを乱すと、千葉はダンカンが2連続得点、石井がこの日初めて3pを入れる。西村も続いて19点までリードを広げた。富山も大塚の3pで対抗するが、チェンバースのレイアップ、富樫の3pで再び突き放して、千葉17点リードでオフィシャルタイムアウトを迎える。

終盤、富山・スミスにバスケットカウントを許すなど得点を重ねられ、追い上げムードに持ち込まれそうだったが、結局千葉が逃げ切った。96-85で勝利して、GAME1の勝利と合わせて2連勝を飾り、セミファイナル進出を決めた。

ジョシュア・スミスを徹底的に止めた千葉

千葉がGAME1も含めて富山に快勝した。GAME1同様に、この日もダブルチームでスミスを動かせない戦術とし、おまけにスミス自身に個人ファウルが積みあがっていくという展開になった。

「(スミスに対しては)トラップで行く」と大野篤史HCは作戦を練っていた。司令塔の富樫は「うまくファウルトラブルを誘えた。スミスにフラストレーションを貯めることができたので、オフェンスファウルにつながった。エドワーズの守備は、毎試合ですけど良かったですね」とコメントすれば、石井も「狙っていたトラップがうまくいっていた。ダブルチームに行くタイミングや、その後のローテーションはDAY1よりはうまくやろうとチーム内で話をしていた」と明かす。千葉は、スミスを前半無得点に抑えて、ファウルを3回コールさせた。

前半は7点リードで折り返したが、この日の千葉にとっては「スミスを思うようにさせないこと」を前半で達成できたことで、勝利をぐっと手繰り寄せたことまでは良かった。しかし、もう一人の外国籍選手で、昨季は千葉でプレーしていたライオンズには、前半だけで17得点を許していた。

これに対して石井は「ライオンズにタフショットを打たせたまでは良かったけど、決めてきていたので、それはどうしようもない。それよりも、周りの選手にアシストを裁かれて、相乗効果で得点をされる方が嫌だった」と、ライオンズの個人技で得点されることは想定内としていた。

富樫勇樹,Ⓒマンティー・チダ

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後半に入ると、苦しくなる場面もあった。「主導権を自分たちで取ったのに、自分たちで富山に主導権を明け渡してしまった」と大野HCがコメントする通り、短い時間ながらも富山に主導権が移っていた時もあった。

これまでの長期にわたるリーグ戦とは違い、2戦先勝しないと次に進めないという短期決戦では、主導権を握る事がより求められる。セミファイナルの相手である栃木は、全員が激しいファイトを見せて、ディフェンスの強度を上げてくる。

今季もアーリーカップから数えて、天皇杯も含めると4勝4敗。しかもこのカードはどちらかが連勝したものもない。2試合あれば1勝1敗で終わっている正に宿敵。しかし、千葉にはホームアドバンテージがある。赤く染まった船橋アリーナで、千葉は普段通りの試合運びができるのかが大事になる。

「『さあ来たぞ』と王様気分のような気持ちでプレーすること」田口成浩

田口は、千葉の一員として初めて短期決戦に臨んでいだ。秋田在籍の頃も、プレーオフには数多く出場していたが、その時は「俺が決める」という雰囲気が漂っていた。短期決戦を迎えてから、田口はレギュラーシーズンよりも落ち着いてプレーする姿が印象的だった。「効率よくシュートを決められた。ディフェンスもアグレッシブにできたのは良かった」と手応えを掴む。

後半のスタート5には、しばらく石井が起用されていたが、DAY2は田口がコートに入った。「シュートタッチが合っていた。ディフェンスも頑張ってくれたので」と大野HCも状態が良かった田口をコートに送り出していた。「出場した時は、思い切ってシュートを打つこと、ディフェンスでは自分のマークマンには絶対に思うようにやらせない」と田口は心掛けてコートで戦う。

このコメントからもわかる通り、田口は自分の役割を全うすることに徹していた。レギュラーシーズンの時も「自分の役割に徹したい」とコメントはしていたが、チャンピオンシップでは、さらに強い気持ちで役割に徹していたようだ。

田口成浩,Ⓒマンティー・チダ

Ⓒマンティー・チダ

「常にチャンスがあれば思い切り打つ。強気で常にリングへ向かうことが自分の時間。『今、俺か』ではなく『さあ来たぞ』と王様気分のような気持ちでプレーすることが、平常心になると思う」と独特な表現で自身のプレーを語る。1Q終盤の3pを決めたシーンも「フェイクして、時間も見ながら打てていた。来る前の準備があったからこそだ思う」と大事な場面においても、田口には時間を見る余裕があった。「『今、俺だ』という雰囲気にならないようにしたい」と話す田口からは、メンタル面での成長が伝わってくる。

田口に限らず、全員が「俺が」になってしまうと、できることも出来なくなってしまう。チーム全体が、大事な一戦をいつも通り に迎えるため、田口同様に全員が「王様」となって戦うことができるだろうか。