「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

比江島が加入した栃木は何が変わった?Bリーグ王座奪還へのプラスファクターとなるか

2019 4/2 07:00SPAIA編集部
比江島慎,Ⓒゲッティイメージズ
このエントリーをはてなブックマークに追加

Ⓒゲッティイメージズ

チームのスタイルに合わせて自身の役割も変化

昨季のMVPで日本代表のエース・比江島慎が、栃木ブレックスに正式加入したのは今年の1月9日のこと。2年ぶりに優勝を目指すチームがどう変わるかに注目が集まった。しかし、シーズンも残り数試合。これまでどのような変化があったのかを見ていこう。

比江島自身の成績は、出場時間が少なくなっていることもあって最低クラス。キャリア平均得点が12.3のところ、今季は9.6。リバウンドが3.0から2.5、昨シーズンは4.1だったアシストが3.3となっている。

途中加入であること、また栃木には同ポジションにキャリアハイの記録を残している#9遠藤祐亮やコンボガードの#18鵤誠司、フォワードの#24栗原貴宏と、選手がそろっていることも出場時間が減っている理由のひとつ。

ただ、3Pシュートは上昇しており、1試合平均1本の成功数はキャリア最多で成功率も40%と高水準。栃木に移籍してからは得意のドライブではなく、ミドルレンジや3Pシュートなど、ペイント外の得点率が高まっている(3年間でペイント外の得点率の推移は40.5%→45.0%→50.0%)。

その要因は栃木が1対1ではなく、全員が動きながら得点を奪うチームであること。特筆してアシスト数を稼いでいる選手がいない中、全選手が満遍なく数を稼いでいる(チームアシスト平均はリーグ3位の21.2本)。

比江島も、ボールを独占する時間帯が少なくなっているぶん成績を下げているが、自身のスタイルを栃木に合わせていると言えるだろう。

経営面への貢献度も大きい

一方で、比江島がチームにもたらしたものを探りたい。

比江島が加入後の栃木の成績は18勝4敗、勝率.818。加入前の成績が25勝6敗(勝率.806)なので、若干だが成績は上がっている。現状、出場時間が短くチームの絶対的中心ではないが、数よりも質を重視する比江島がいることで、チーム全体のシュート成功率は向上。連携の部分も徐々にクリアにされ、イージーバスケットを展開できるようになっている。

ホームの観客動員数も増加傾向で、比江島加入後のホームゲーム平均観客動員数は4,121人。今季の平均が3,951人と、興業面でも数字を伸ばしている。元々リーグでも人気チームだった栃木。「日本代表のエースが見たい」と、比江島加入後のチケット争奪戦は熾烈を極め、4,000人を超える試合も多くなり、経営面での貢献度もあるのだ。

チャンピオンシップに必要な+αそれこそが比江島

比江島の加入前後の変化を取り上げたが、大きな変化が見られるのは今後の戦い。つまりチャンピオンシップに入ってからだと考える。

60試合という長いシーズンの中で求められるのは、日頃の積み重ね。シーズン前から作り上げてきたものが最も重要になる。その中で比江島はシーズン中盤に加入してきたため、その積み上げも少なく、チームへのアジャストも時間がかかってしまう。

チャンピオンシップでも当然積み重ねは必要不可欠ではあるが、+αの力がなければ勝ち上がることはできない。2シーズン前の栃木が強豪相手に苦しみながら毎試合成長を続けたように、チャンピオンシップだからこそ “Xファクター”の存在と要素が必要になる。

これまでのシーズンと比べて、今季の比江島は試運転の状態。Xファクターになり得る可能性が大いにある。そうなれば栃木は優勝を手繰り寄せることができるはずだ。大舞台には強いが、いまだ完成度は高くない比江島。彼の偉大さは、チャンピオンシップでこそ感じられそうだ。