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【天皇杯】千葉ジェッツ3連覇 盟友田口成浩が語る富樫勇樹の凄さ

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Ⓒマンティー・チダ

【決勝前半】栃木が主導権を握る

栃木は#9遠藤祐亮がコーナーからの3p、#22ライアン・ロシターの3pでリードする。さらにオフェンスリバウンドから#4ジェフ・ギブスが得点すると、遠藤が再び3pを決めて、千葉は主導権を握られる。

その後も千葉は栃木に得点を重ねられていたが、#21ギャビン・エドワーズがポストプレーから得点すると、#10アキ・チェンバースも3pで続いて一気に点差を詰めた。栃木#10竹内公輔にバックショットを入れられるが、ディフェンスリバウンドから#1ジョシュ・ダンカンが得点し、エドワーズもミドルシュートを決めて、千葉が4点差まで詰めたところで1Qが終了した。

2Q、出だしから千葉はダンカンがポストプレーなどで2本シュートを入れて同点とするが、栃木も竹内がオフェンスリバウンドから得点し、千葉にリードをさせない。そして、千葉の速攻をロシターが好守備で止めると、栃木のタイムアウトを挟んで3pを沈める。直後の守備ではスティールを決めて攻撃権を獲得すると、竹内がセカンドチャンスから得点を重ねた。

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次の千葉攻撃時には、シュートを打たせないまま攻撃を終わらせ、もらったチャンスから逆に#18鵤誠司がシュートを決めて8点リードとする。千葉もタイムアウトを挟んで、ダンカンがダンクを叩きこむなど食らいつくが、栃木との点差はわずか2点しか詰めることができない。結局、32-26で栃木リードのまま、前半が終了した。

【決勝後半】延長戦までもつれ込むが富樫の値千金の3pで決まる

後半に入り、互角な立ち上がりを見せた両チームだったが、千葉は#3マイケル・パーカーのバスケットカウントから一気に同点まで持ち込み、栃木にタイムアウトをコールさせる。その後、栃木はロシターがダンクと速攻を決めてリードを奪うが、千葉も#34小野龍猛の3pなどで再び追いつき、結局47-47と同点のまま3Qを終了。

4Qになると、千葉は栃木・ロシターにオフェンスリバウンドから得点をされ、一時はリードを許すが、エドワーズが3pで勝ち越しに成功。ロシターが連続でターンオーバーをした後、このQからコートに戻っていた#11西村文男がカットインを決めると、レイアップ、3pと得点を重ね、千葉は7点のリードする。

その後、膠着状態が続いたが、ロシター、鵤のレイアップで栃木に4点差まで詰められて、今度は千葉がタイムアウトを請求する。栃木はタイムアウト後の攻撃で、4回のオフェンスリバウンドを獲得するなど粘りを発揮。その間、千葉・石井、エドワーズ、パーカーがファウルを重ね、チームファウルも一気に5回を数えるが、栃木はファウルからもらったフリースロー1本のみしか決められなかった。ここを踏ん張った千葉は、石井のスティールより、パーカーとチェンバースがパス交換をしながら、リングに向かっていく。これを止めようとした栃木・渡邉にアンスポーツマンファウルが宣告され、千葉に大きなチャンスが巡ってくる。しかしチェンバースが決めたフリースローは1本のみで、直後の攻撃でもパーカーが得点できず、チャンスを逃す。一方栃木も、千葉・石井のファウルから獲得したフリースローを、ギブスが1本しか入れることができず、60-60の同点で4Qが終了し、5分間の延長戦に突入することとなった。

延長戦に入っても拮抗した展開が続く。栃木・鵤が3pでリードを奪えば、千葉もダンカン、エドワーズの得点で1点のリードを奪い返す。千葉はダンカンが個人ファウル5回目をコールされベンチに下がると、栃木・ロシターにフリースローを2本決められる。直後に千葉・富樫がようやくこの日初得点となるフローターを決めてさらに勝ち越すが、再び、ロシターに得点を奪われリードを許す。

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残り1分28秒、千葉がタイムアウトをコールし、栃木の攻撃を凌いだ後、攻撃でエドワーズが得点して再び1点リード。残り28秒でタイムアウトを選択した栃木がショットクロック14秒を選択。千葉・富樫のファウルからロシターがフリースローを2本決める。栃木1点リードでの残り17秒。千葉・富樫がフロントコートにゆっくりボールを運ぶと、空いた隙を狙って3pシュートを放つ。それはきれいな放物線を描き、そのままリングに吸い込まれ、逆転に成功する。最後、栃木・鵤がロングシュートを放つも、リングを大きく外して試合終了。千葉が栃木を71-69で下し、見事天皇杯3連覇を果たした。

誰よりも優勝を喜んでいた田口成浩

今回の天皇杯で、千葉は準々決勝からタフな戦いを強いられた。

その中で、準決勝・決勝の勝利の立役者は間違いなく富樫だ。準決勝は、先にペイントエリアに入っていたパーカーにロブパスを供給。一回はシュートを外すが、リバウンドの末、パーカーが決めた。決勝では、残り16.1秒からボールをフロントコートに運び、ボールキープしたまま左ウイングから放った3Pはリングに吸い込まれた。まさに「持っている」というのはこういう事なのか。

そして、優勝の瞬間を誰よりも喜んでいた選手がいた。田口成浩だ。彼はこれまでファイナルに関して言えば苦い経験が続いていたのだ。

「あの時を思い出しましたよ」田口はこのように呟いた。bjリーグ2013-14シーズンファイナルズで、目下売り出し中だった富樫と田口は、初めてファイナルの舞台に立っていた。相手は琉球ゴールデンキングス。前日のカンファレンスファイナルで無得点だった岸本隆一が34得点を叩き出し優勝に貢献。「14番(岸本)があれだけやるとは」と当時の中村和雄ヘッドコーチを脱帽させるほどのパフォーマンスの前に、秋田は敗れて準優勝に終わる。

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中村ヘッドコーチと富樫が去った2014-15シーズンに入ると、秋田は田口をエースに据えて再びファイナルズまで駒を進めた。相手は、浜松東三河フェニックス(現 三遠ネオフェニックス)。試合は最後まで接戦となり、残り25.9秒を迎え、浜松モー・チャーロのボールキープからパスを受けたオルー・アシャオルにフローターシュートを決められて、浜松に勝ち越しを許す。秋田は2点ビハインドからエース田口に賭け、田口はリチャード・ロビーにパスをする。ロビーは勝ち越しを狙い3pシュートを打つが無情にも外れて、2年連続準優勝となった。その後の囲み取材で、田口は人目をはばからず報道陣の前で大粒の涙を流していた。

「富樫は半端ないって感じ」田口成浩

今回の天皇杯決勝でも、あの時の浜松戦と同じようなシーンがやってきたが、富樫は見事に役目を果たした。「2日連続でこんな勝ち方ができて、今後の人生でも無いかな。正直まだびっくりしている自分がいる」と戸惑いを隠せない。

富樫は延長戦に入るまでは無得点だったが、最後の3pで勝負を決めた。「シュートが入る入らない関係なく、今まで打ってきたシュートを打ち続けることだと。打ち続けたことで、最後の2本が決まった。常に空いたら打つという心でプレーしている」と普段からの姿勢で導いた決勝点だった。

天皇杯3連覇の瞬間をベンチから見ていた田口は「全国で優勝するのは初めて。ずっと2位だったので本当に感慨深いですね。全てを楽しい気持ちにさせてくれるなんて、こういう事なんだなあと。また味わいたい」と素直に優勝の喜びを表した。

富樫が最後のシーンで3pを決めたことについては「あいつはやってくれると思っていた。秋田で初めてあいつと一緒に有明進出を決めたが、それでも2位だった。最後の瞬間、コートには立てなかったけど、二人にとって借りを返したではないが、あの試合はよみがえった」と思い出と共に振り返る。

「他の試合を(富樫と)一緒に見ていて、決勝のような状況になっていた時に、(富樫が)『何でみんな弱気になって打つんだろうな』と話す。今回の決勝戦、全員あいつを見たと思うけど、(最後に決めるまで)全然だめだったのに、最後あのように決めるというのは、自信と『俺がやってやる』という気持ちがあるからこそ。いつでもそういう気持ちでやっているのかなと思う。もう半端ないって感じですね」と流行語も交えながら、富樫の凄さを表現した。

今季から加入した田口は、昨季まで大事なシュートは自らが担い、責任を背負っていたが、今はその役目を担っていない。「(平均して)10分から15分ぐらいの出場時間だったが、与えられた役割は全うできたと思う。決勝戦は得点できなかったが、準々決勝、準決勝はシュートを決めることで流れを変えることができた。役割を全うしないと試合には出場できない」と自らの役割をしっかり受け止めているようだ。

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「チームメイトが頼りがいありすぎるので、もうおんぶにだっこですね」秋田からの盟友、富樫をはじめとしたチームメイトと次に目指すのはBリーグの頂点だ。