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TOSHIBAからDeNAへ歴史が動く!川崎ブレイブサンダース「変える」事と「変えない」事

川崎ブレイブサンダース
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Ⓒマンティー・チダ

同好会から始まった川崎ブレイブサンダースの歴史

改めて「川崎ブレイブサンダース」のこれまでの歴史を振り返ってみたい。1950年に東芝小向工場で同好会として活動を開始し、1955年には関東実業団連盟に加盟した。その後、関東実業団リーグ1部、日本リーグ2部、日本リーグ1部と昇格を果たし、2000年には天皇杯と日本リーグの2冠を達成した。

ここから強豪チームとしての地位を確保し、2014年には天皇杯とNBL初代王者の2冠を達成。2016年秋に開幕したバスケットボールプロリーグ「B.LEAGUE」では初年度準優勝、2017-18シーズンはクォーターファイナルに進出を果たし、通算してリーグ優勝4回、天皇杯優勝は3回を記録した。

川崎ブレイブサンダース

川崎ブレイブサンダースは「変えない」

今シーズンから「川崎ブレイブサンダース」運営会社の代表取締役社長に就任した元沢伸夫氏(以下 元沢社長)は「変えない」「変える」を大きなキーワードとして事業説明を進めた。

川崎ブレイブサンダースは「変えない」。元沢社長は「68年の歴史と偉大な先駆者の足跡を受け継ぐクラブ名」と前置きをした上で、クラブ名を「川崎ブレイブサンダース」と発表した。以前は「レッドサンダース」だったが、2001年より「ブレイブサンダース」と名称変更。「ブレイブ」は東芝グループのスポーツを象徴する言葉だ。DeNA内部でも様々な意見があったが、「すべての経緯を受け止めて引き継ぎたい。東芝側と相談し快諾を得た」と元沢社長が自身の強い想いでチーム名を継続した経緯を明かした。

チーム名継続を受けて、企業名も「株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース」と改め、クラブカラーも東芝時代に使用していたエンジ色を引き継ぎ「ブレイブレッド」と命名しチームの象徴とした。つまり、ユニフォームのカラー、チーム名は「変えない」。これまでの見た目を変更せずスタートする。

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北卓也ヘッドコーチ体制は「変えない」

元沢社長は、川崎ブレイブサンダースの強さを評価し、昨シーズンまで7シーズンに渡って指揮した北卓也ヘッドコーチ(以下 北HC)の続投を発表した。実績を見る限り「変える」必要はないと筆者は考えていたが、元沢社長も同じ考えだった。

北HCは拓殖大学を卒業後、1995年に東芝入社。2008年に現役引退後、2011年ヘッドコーチに就任。以後、天皇杯優勝1回、リーグ優勝2回。プレーオフには毎年進出を果たしていた。2017-18シーズンは、激戦の東地区でリーグ戦3位通過。クォーターファイナルでリーグ戦準優勝を果たした千葉ジェッツとの激闘は記憶に新しいところだ。

北HCは元沢社長と両手でがっちり握手した後、緊張した表情で演台に立ち「1950年から始まった伝統や歴史を受け継いで、これまで指揮したブレイブサンダースをベースにして、さらに進化させ魅力あるチーム、常勝チームを目指したい」と熱くスピーチした。

元沢社長は、昨シーズン北HCを支えてきたチームスタッフの残留も発表。昨年末から北HCをはじめチームスタッフ全員と個人面談を重ねた中で「(チームスタッフから)プロ意識の高さ、チームのためという自己犠牲の強さを感じた」と続けた。秋に開幕するBリーグ新シーズンに向けて、これまで通りの環境が整ったと言えるだろう。

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川崎ブレイブサンダース新ミッション「MAKE THE FUTURE OF BASKETBALL~川崎からバスケの未来を」

北HCのスピーチが終わり、再び壇上に上がった元沢社長は新生川崎ブレイブサンダースのミッションを発表した。

新しいミッションは「MAKE THE FUTURE OF BASKETBALL~川崎からバスケの未来を」だ。バスケットボールは全世界最多の競技人口を誇り、日本国内でもサッカーに次いで2位。しかし、認知度となると話は別だった。チーム独自の調査で、川崎市とその周辺における地域を対象に「認知度」を調査したところ、プロ野球横浜DeNAベイスターズ79.2%、Jリーグ川崎フロンターレ75.8%に対し、川崎ブレイブサンダースは25.2%という結果に終わった。川崎ブレイブサンダースは観戦経験率もわずか3%だった。

これらを踏まえ、アジアのタイトル獲得、最先端のアリーナ実現、来場者数30万人という目標を掲げた川崎ブレイブサンダースは、ファーストステップとして「EXCITING BASKET PARK計画」を発表する。

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チームロゴは「変える」

まずはチームの象徴とも言えるべき、「チームロゴ」の変更。ボールリングに稲妻が突きささるイメージで「新生川崎のアイコンとしたい」と元沢社長は宣言する。「SINCE1950」は1950年から始まったブレイブサンダースに敬意を称して表示した。「ブレイブレッド」に加え、“勝利”と“誇り”を表した「ヴィクトリーゴールド」を使用した。

新しいチームロゴは、バスケットコートのセンターサークルや、チームロゴの入ったTシャツをはじめとしたグッズにも使用される。

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エキサイティングアリーナに生まれ「変わる」

元沢社長の声色が少し変わってきた。今シーズンからの新たな試みが発表される、いわゆる「変える」部分の本丸となる。

まずはアリーナ内の進化。「エキサイティングアリーナ」を目指し、センターハングビジョンの新設、音響やムービングライトをフル活用したライブ空間への転換、グループシート・VIPシートの新設を公表した。

センターハングビジョンは、アルバルク東京をはじめ他チームも使用しているが、川崎も初導入する。ムービングライトも昨シーズン終盤、席の近くでライトが光る演出も行われたが、今シーズンはパワーアップするようだ。

さらにアリーナに関しては、場所は未定ながらも専用アリーナ構想も明かした。現在のホームアリーナ、とどろきアリーナは収容人数5000人としているが、来場者数30万人を目標とするチームとしては規模としても足りない。そこで10000人から15000人収容できる専用アリーナ建設構想を打ち上げた。

しかし、昨シーズンこそ飛躍的に観客動員を増やした川崎ブレイブサンダースも「満員御礼」は数少ない。今シーズンはこれまでの金曜・土曜開催が少し減少し、土曜・日曜開催も増える見通しだ。「土曜・日曜開催の常時満員」を達成してから本格的に「専用アリーナ構想」が始まるようだ。

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サンダース スクエアは「変える」

とどろきアリーナ前のフードエリアを「サンダース スクエア」と呼んでいる。エリアとしては広い空間だが、それを使い切れていない状況でもあった。

事業承継をする上で、この部分は「変える」のでは?と筆者も考えていた。これまでは飲食店のブースが少々点在するというイメージだったが、これを一新するという。飲食環境の充実はもちろんの事、様々な仕掛けを準備していた。

まずは「大型ビジョンによるライブビューイング」。土日開催を中心に大型ビジョンを設置し、試合の中継を放映する。椅子やテーブルも用意して、チケットを取れなかった人、ふらっと立ち寄った方においしいものを食べながらエキサイティングに楽しめるという企画だ。周辺の住民にも認知させるものとして機能できれば認知度も向上するだろう。

次いでスクエア内にステージを配置し、チアやマスコット、場合によっては試合前後に選手がステージに登場し場を盛り上げていく仕掛けで、会場の外でも試合と共に楽しめる演出が用意されている。

他にも「POP UP STOREの新設」「バスケットコートの設置」が発表された。スクエアもバスケ一色に包まれ、会場内外で川崎ブレイブサンダースを盛り上げていく。ホーム開幕戦ではどういう姿になっているのか期待したい。

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アリーナ内のエンターテイメントは「変える?」

ここまでチームの事・アリーナのハングビジョンや照明・音響、アリーナ外の仕掛けは発表されていた。しかし、昨シーズン「KAWASAKI HEART」という名前でコート内のエンターテイメントにも力を入れていたが、ここまでその部分については発表が無かったので質問をしてみた。

「もちろんエンタメは強化する。昨シーズンもかなりしっかりしていたので、全てを刷新するというイメージはない。しかし、音にはこだわっていきたい。音楽を最大限お客様に使いやすくするための音響設備の増設等はやっていきたい」と元沢社長は構想を話した。

「マスコットに関しては現在思案中。チアについては、新シーズンに向けて募集を開始しているので、マスコット同様決まり次第公表したい」と続けた。

元沢社長は「2年間で基礎を固め、3シーズン目で単体黒字化を目指したい」と話した。3シーズン目の単体黒字化を目指し、まずは今シーズンどこまで新しい風を吹き込めるか?「変えない」部分、「変える」部分を融合させて、川崎に新しいスポーツ文化を築いてほしいところだ。

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