大野HC就任に金丸の獲得、大改革の三遠は今季こそ真価発揮か?
Bリーグの2022-23シーズンは9月29日、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ-シーホース三河の一戦で幕を開ける。オフシーズンは大物指揮官の交代が特徴だった。千葉ジェッツ、宇都宮ブレックス、アルバルク東京の優勝経験クラブのヘッドコーチが交代になったのだ。それぞれ思惑があっての交代劇となったが、最も印象的なのが千葉Jの大野篤史ヘッドコーチの辞任だろう。
大野ヘッドコーチは千葉Jを一昨シーズンの王者に導き、就任以降、天皇杯を含め数多くのタイトルをもたらした。複数年の契約を解除し、新天地に選んだのは中地区の三遠ネオフェニックス。Bリーグ初年度以外は、チャンピオンシップ(CS)に進めず、ここ数年は下位に沈んでいる。
就任会見で「大きな変化をもたらせるようにしたい」と大野ヘッドコーチが話したように、成績を考えれば変化が必要だった三遠。大野ヘッドコーチを追うように、千葉Jから9名のスタッフが移籍し、“勝利”のために何をすべきか熟知しているスタッフが揃った。
さらに選手の目玉で言えば、島根スサノオマジックから移籍した#14金丸晃輔だろう。昨シーズンも鳴り物入りで島根に加入したが、ケガの影響やチームの戦術にアジャストできなかったことで、一昨シーズンより数字を落とす結果に。平均出場時間は変わらないものの、得点は16.8から11.1、3Pシュート成功率は46.6%から40.6%とリズムをつかむことができなかった。
金丸もまた複数年の契約を解除し、三遠に飛び込んできた。また外国籍選手は総入れ替えし、司令塔の#5カイル・コリンズワーズと、高さはないものの力強さと機動力のある2人のインサイドプレーヤーを獲得。198cmのコリンズワーズがガードのサイズで優位に立てる一方、インサイドの外国籍選手の頭数が足りないため日本人の#8太田敦也、#15根来新之助、#44大宮宏正の奮闘が鍵を握る。スピードのある#24佐々木隆成、昨シーズン京都ハンナリーズで得点源だった#29細川一輝の加入も好材料だ。
選手の駒自体は揃っており、昨シーズン以上の成績は期待できるが、大野ヘッドコーチがもし千葉Jのようにアップテンポなバスケットを目指すのであれば、ガードとウイングの機動力が課題となりそう。佐々木と#0サーディ・ラベナ以外は決してランニングプレーが得意とは言えず、金丸や外国籍選手を中心としたハーフコートオフェンスを軸にするかもしれない。
チームとして結果が出てないここ数年は得点力不足が深刻で、千葉Jを有数のクラブに成長させた大野ヘッドコーチの手腕が問われる。スタイルがハマれば上位に食い込める可能性がある一方、マッチしなければこれまでと同じように下位になる可能性もあり、現段階では未知数のクラブである。
主力を残しながら効率的に補強した川崎とSR渋谷は優勝候補
三遠が所属する中地区の優勝候補は川崎ブレイブサンダースだ。昨シーズンはセミファイナルで破れた悔しさを沸々と燃やしている。
そもそも昨シーズンは長年主軸だった辻直人が広島ドラゴンフライズに移籍し、戦力的に不安があった1年。それでもシューターの#23マット・ジャニングの活躍や#0藤井祐眞と#7篠山竜青の2ガード起用で乗り切った。そして200cmを超える3選手の高さを活かした布陣も駆使し、リーグトップの88.2得点を記録した。
ただ2ガードも大型布陣もサイズ的にバランスが悪く、ディフェンスで崩れる場面が多かったのも事実。そこで今シーズンはコンボガードの#21納見悠仁、206cmながらアウトサイドをこなせる#2マイケル・ヤングジュニアが加入し、サイズや役割のバランスが良くなりそう。MVPの藤井、帰化選手の#22ニック・ファジーカスなど主軸は健在で、今シーズンも攻撃力を武器にリーグを席巻するだろう。
そして今シーズンは中地区に割り振られたサンロッカーズ渋谷も期待できる布陣が整った。昨シーズン、大黒柱の#9ベンドラメ礼生がキャリアハイの12.6得点を記録したものの、控えガードが手薄で、負担が大きかった。そこでA東京より、ベンドラメの大学時代の同期である#10小島元基が加わった。
ケガが多いものの、安定感がある小島はアグレッシブなベンドラメとは違うタイプであり、課題だった控えガードとしては有り余るほどの戦力だ。またケガでシーズンをほぼ棒に振った#34ライアン・ケリーも復帰し、こちらも大きな戦力になる。元々攻守のバランスがいいチームで、課題をうまく補う補強を行った今シーズンは2年ぶりのCS出場を目指す。
三河、横浜、信州は若い選手を主力に据えて上位進出を目指す
実績のあるベテランと有望な若手を擁しながら、噛み合いが悪くCS出場を逃したシーホース三河。今シーズンは2年間韓国でプレーした#1中村太地を加え、#18角野亮伍、#19西田優大、#32シェーファーアヴィ幸樹と面白い若手が揃った。
ここにかつての得点王の#54ダバンテ・ガードナー、元NBA選手の#6カイル・オークインと実績のあるベテランがどう融合するか。選手層の薄さとディフェンス意識に重きを置く選手が少ないことが気になるが、うまくピースがハマればリーグ優勝までできるポテンシャルを秘めている。
ポテンシャルの高さで言えば、横浜ビー・コルセアーズも今シーズンは#5河村勇輝に加えて、#6赤穂雷太が千葉Jから加入。外国籍選手も年々強力になり、熾烈な地区での争いをくぐり抜け、初のCSを見据える。
そしてB1で2年目となった昨シーズン、勝率5割を超えた信州ブレイブウォリアーズ。こちらも#11熊谷航、#15前田怜緒、#77岡田侑大と将来有望な若手が揃う。彼らもまだポテンシャルを発揮しているわけではなく、メンバーが大きく変わらない中で真価を見せたいところだ。一方、新潟アルビレックスと富山グラウジーズは主軸が大きく変わり補強も出遅れた。ともに今シーズンは苦しい戦いになりそうだ。
ここまでを総合すれば、優勝争いが川崎とSR渋谷、ダークホースに三遠と三河、若手の成長次第で成績が大きく左右しそうな横浜、信州という構図になる。当然、富山や新潟にもチャンスはあり、熾烈なCS争いになりそうだ。
【関連記事】
・【Bリーグ東地区展望】上位のヘッドコーチ交代の効果は?優勝経験クラブひしめくハイレベルの戦い
・【Bリーグ西地区展望】琉球が悲願のチャンピオン狙う、2位争いは大激戦の様相
・Bリーグ6シーズン目の収穫と課題、早くも次なる動きが巻き起こる
・【Bリーグ】プレーで滋賀を牽引し、ファンを魅了したキーファー・ラベナの熱い思い