オールラウンダーのロシターが代表のバスケにアジャスト
FIBAアジアカップ2021予選が始まったが、当初2月21日に千葉ポートアリーナで実施予定だった中国戦は、新型コロナウィルスの影響で延期に。24日のチャイニーズ・タイペイ戦は行われたものの、無観客試合となった。
このアジアカップ予選は、男子日本代表にとっては今夏の東京オリンピックの前哨戦となる。というのもBリーグで若い選手が台頭したり、帰化選手が増えたりと状況が変わってきているためだ。アジアカップは彼らの「実験」とも言える大会なのである。
その中で最も注目されていたのは#0ライアン・ロシター(宇都宮ブレックス)。代表候補には帰化選手としてニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)、ギャビン・エドワーズ(千葉ジェッツ)も名を連ねていたが、今回、24日の試合にはロシターが選出された。
ロシターの特徴と言えば、プレーの幅の広さだ。得点、リバウンド、アシストでトリプルダブルができるほどの卓越した能力の持ち主で、リバウンドから自らボールプッシュできるドリブル技術と機動力を誇る。身体の強さもあり、例え得点で貢献できなくてもゲームメイクとディフェンスで存在感を発揮する。
代表初の試合となったチャイニーズ・タイペイ戦では、序盤からオフェンスを引っ張り、17得点、19リバウンド、7アシストと獅子奮迅の活躍を見せた。元々、フリオ・ラマスヘッドコーチのバスケットは動きながら全員でボールをシェアするスタイル。内外角でプレーでき、なおかつパスセンスも高いロシターにとっては、アジャストしやすかったのではないだろうか。
ファジーカスはランニングバスケットを、エドワーズはハーフコートバスケットを課題にしているが、ロシターはフリースローの確率の低さ以外は大きな弱点がない。1試合で力量を測ることは難しいものの、バスケットのスタイルにおいては、現時点で帰化選手争いのトップに立っていると言っても良い。
自信を取り戻しつつあるウィング陣の活躍もカギ
昨夏のワールドカップでは、八村塁(ワシントン・ウィザーズ)、渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ)、馬場雄大(テキサス・レジェンズ)を2〜4番で起用し、彼らとファジーカスを中心に攻撃を展開した。こうして攻撃の優先度が変わったことで、これまでエース格だった#6比江島慎(宇都宮ブレックス)が4.4得点、1.2アシストと精彩を欠いた。ボールを保持する時間が少なく、本来の力を発揮できなかった。
ただチームとしては得点力不足に苦しみ、日本代表での比江島の復調は東京オリンピックに向けては不可欠だった。そして迎えた今大会は、攻撃の第3オプションとして22分の出場で10得点。成功率としても55.6%と効率良く得点を挙げた。
アメリカで活躍する選手たちとうまくプレーするためには、ボールを保持する時間が少ない中でどれだけ確率良くシュートを決められるかがカギとなる。チャイニーズ・タイペイ戦では3Pシュートが1本も決まらなかったが、コンスタントに3Pシュートを沈めることができれば共存は可能だ。
またシューターの#13安藤周人(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)も2本の3Pシュートを沈めるなど、渡邊や馬場の活躍に隠れていたウィングの選手たちが自信を取り戻しつつある。
久々代表復帰の金丸は「最後のワンピース」になれるか?
今回のシリーズでサプライズ選出だったのが、#14金丸晃輔(シーホース三河)だ。毎年、平均得点において日本人上位をキープしていたがケガが多く、選手に万能性を求めるラマスヘッドコーチの方針から、専門職タイプの金丸が日本代表に選出されることはなかった。
ただ昨夏のワールドカップで露呈した得点力不足を解決するため、久々に代表復帰を果たすと21分の出場ながらチーム最多タイの17得点を挙げた。基本的にはキャッチ&シュートが多かったが、ドライブを仕掛けるなど多彩な攻撃パターンを披露。得点源として活躍できることを証明してみせた。
ファジーカスに比べて、ロシターがスコアリング専門の選手ではないことから、得点力の高い金丸の存在は不可欠。またシュート乱発型ではなく確率を重視するシューターのため、今後合流してくる八村や渡邊へのマークが厳しくなったときに援護射撃できる選手だ。金丸がコンスタントに得点できるようになれば、攻撃に厚みが生まれることは間違いない。