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ありがとう、さようならコービー -コービー・ブライアント追悼-

2020 1/28 11:06末吉琢磨
現役時代のコービー・ブライアント
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Ⓒゲッティイメージズ

突如報じられた信じ難いニュース

24秒にセットされた時計は、その時間を減らしていく。会場は誰もが深い悲しみに包まれていた。

普段なら興奮と熱狂に包まれているはずのNBAの試合会場では、そうやって偉大なレジェンドに哀悼の意を表していた。日本時間1月27日午前3時ごろ、元ロサンゼルス・レイカーズのスーパースター、コービー・ブライアントが、ヘリコプターの事故で亡くなった。享年41歳。まだこれから多くのものをバスケットボール界、いや、スポーツ界全体にもたらしてくれるはずの存在だった。

ジョーダンの後継者として

思えばNBAファンにとって、マイケル・ジョーダンがいなくなった後のことを考えるのは憂鬱なことであった。偉大過ぎるが故に、彼の後継者としてNBAを牽引する選手がもう出てこないのではないか、そんな思いがよぎってしまうからである。実際、ジョーダンの後継者として期待されたペニー・ハーダウェイやグラント・ヒルは、もちろん素晴らしい選手ではあったが、それでもジョーダンにはなれなかった。

しかし、彼がNBAに現れた。18歳と158日という当時のNBA最年少先発記録を塗り替えたコービーは、ジョーダンの軌跡を追って、その後多くの偉大な足跡をNBAに残していくことになる。

通算33,643点は、5位のジョーダンを上回るNBA史上4位の記録であり、レイカーズのチーム史上最多得点記録でもある。NBAチャンピオンに5度輝き、2度のファイナルMVP。そしてオリンピックの金メダルも2つ獲得した。

その実績、そしてプレースタイル。加えて稀に見る負けず嫌い。彼こそがジョーダンの真の後継者だった。

あらゆるジャンルのアスリートから憧れを抱かれる存在

コービーの影響力はNBAという枠に留まらない。多くのスポーツ関係者が尊敬の念を抱いており、それは日本のアスリートも同様だ。

テニスの大坂なおみは、LAのメルローズ通りにあるコービーが描かれたストリートアートの前で撮った写真をツイートし、また昨年の全米オープンで、コービーが彼女の試合に訪れたときも、感激に溢れたツイートをおこなっている。

MLSに今年移籍することになったサッカーの久保裕也も、インスタグラムにコービーとのツーショット写真をあげ、出会えた喜びを伝えていたばかりだった。

世界中のアスリートからコービーへの祈り

今、世界中のあらゆる分野のアスリートたちが、コービーに祈りを捧げている。PSGに所属するサッカーブラジル代表のネイマールは、ゴール後に指で24の数字を作り、その目を伏せた。

大のレイカーズファンで、コービーの友人でもあったゴルフのタイガー・ウッズは、試合後にその訃報を知り、彼がどれほどの情熱を持ってコートで戦っていたのかを語った。

フィラデルフィア生まれのコービーが大ファンだったNFLのフィラデルフィア・イーグルスも追悼のメッセージを表明。そのNFLのオールスターゲーム、プロボウルの会場には、コービーの名前を呼ぶ声がこだまし、タッチダウンを決めたダボンテ・アダムスは、24の数字を指で示し、ゴールポストに向かいダンクした。

感謝と祈りを

NBAの会場では、試合が始まってもなお追悼が続いていた。彼の背番号だった24と8。その数と同じ秒数を経過すると反則となる24秒バイオレーション、もしくは8秒バイオレーションのどちらかを意図的に両チームがおこない、それから試合は開始されていた。アトランタ・ホークスのPG、トレイ・ヤングは普段着けている11番のジャージではなく、8番のジャージでコートに現れ、45得点をコービーに捧げた。

誰もが悲しみに包まれたこの日。それはスポーツ界が大きな損失を被った日として歴史に刻まれ、そして日常は戻ってくるのだろう。しかし今はただ偉大な選手と、そのご家族のために感謝と祈りを捧げたい。