50-40-90とは?
50-40-90はFG(フィールドゴール)50%、3P(スリーポイント)40%、FT(フリースロー)90%以上をシーズン平均で達成することをいう。2017-18シーズン現在(2018/02/12)のNBA平均がFG46%、3P36.1%、FT76.8%なので、これがどれだけ難しい事なのかが、わかるだろう。
さらにこの記録には、それぞれのシュートを一定以上の本数決めなければいけないという条件がある。したがって、多くの試合で活躍しながら、シュート率を維持する実力や体力が必要となる。
50-40-90は、まさにシュートのスペシャリストのみが記録できるエリートの証だ。NBAにおいて、この数字が示すことほど、シュート力を証明するものはほかにないだろう。
1946年から始まったNBAにて7人のみが記録
そもそも3Pシュートが1979-80シーズンから導入されたので、それ以前にプレイしていた選手達は対象外となってしまうが、70年を超える歴史を持つNBAで50-40-90を記録した選手は、わずか7人だけである。
惜しくも、規定のシュート本数に達していなかったり、わずか0.数%足りていなかったりと、この大記録を逃した選手達も何人かいる。
そんな50-40-90を記録した選手達のことを、50-40-90クラブと称している。このクラブのメンバーは以下の7人となっている。(カッコ内は記録したシーズン)
- ラリー・バード(1986-87,1987-88)
- マーク・プライス(1988-89)
- レジー・ミラー(1993-94)
- スティーブ・ナッシュ(2005-06,2007-08,2008-09,2009-10)
- ダーク・ノビツキー(2006-07)
- ケビン・デュラント(2012-13)
- ステフィン・カリー(2015-16)
やはり、生粋の"シューター"と呼ばれる選手達が多い。そして全員オールスター、オールNBAチームに選出された経験があり、プライスとミラー以外はシーズンMVP受賞歴がある。人類最高のシューター達と言っていいだろう。
"1980年代のレジェンド"ラリー・バードは2回達成
わずか7人しかいない50-40-90クラブで、複数回記録している選手のひとりがラリー・バードである。バードは、1986-87,および87-88シーズンに、50-40-90を達成している。
バードは、大学生のころからライバル関係であった、マジック・ジョンソンと共にNBAを牽引。ジョーダンが登場する前に、NBA人気に火をつけた選手でもあった。彼はNBAで3回のMVP、2回のファイナルMVP、NBAチャンピオン3回、※1 ドリームチームメンバー、NBA殿堂入りなど、輝かしいキャリアを送った。
彼はNBA選手として身体能力には恵まれていなかったが、持ち前のシュート力とバスケIQの高さでリーグを席巻した。シュート力は言うまでもなく記録が物語っており、バスケIQはスモールフォワードというポジションながら、ポイントガードのようにゲームをコントロールしていたほどである。
また、有名な※2 トラッシュトーカーで、NBAオールスターの3Pコンテストに出場した際には、「今日は誰が2位になると思う?(俺が優勝する)」と自分以外の選手達に聞いて回った、という逸話なども残っている。
※1 アメリカ代表チームのこと。NBAのスターが一堂に会すことから、夢のチームと呼ばれる。
※2 試合中の雑談が激しい選手。試合中の雑談をトラッシュトークと呼び、選手達はさまざまな事を話しながらプレイする。
一人で4シーズン記録 "カナダの英雄"スティーブ・ナッシュ
カナダ生まれのスティーブ・ナッシュは、なんと4シーズンで50-40-90を記録している。1シーズン記録するだけでも大変なことだが、それだけ彼のシュート力が突出していたということだろう。ナッシュはカナダ人初のMVPプレイヤーとしても有名で、史上最高のポイントガードのひとりと評されることもある選手だ。
2000年代後半のフェニックス・サンズ時代に、マイク・ダントーニHC(ヘッドコーチ)のもと、速攻を主体とするラン&ガンでサンズを一躍強豪チームへと押し上げ・自身も大ブレイクした。
ナッシュは、ポイントガードとしての素質を全て兼ね備えていた。50-40-90クラブに入るシュート力はもちろん、決して早いとは言えないスピードながら緩急をつけたドリブルで相手をスルスルと抜き、針の穴を通すようなパスでアシスト王に5度輝いた。
幼少時代には、学校へ通う際にドリブルをつきながら通い、ミスをしたら家まで戻って再スタートする、というような練習もしていたようだ。余談だが、サッカーでもセミプロ並みの実力を持っており、ダンクコンテストで見事な足技を披露したこともある。
2017-18シーズンのウォリアーズは、3選手が同時に記録する可能性も
2017-18のゴールデンステイト・ウォリアーズには、ケビン・デュラント、ステフィン・カリーという二人の50-40-90クラブメンバーと、クレイ・トンプソンという、もう一人の名シューターがいる。
トンプソンは、1Qのみで37得点を挙げたNBA記録や、わずか29分間の出場で60点(11回のドリブル)を記録するなど、持ち前のシュート力で爆発力を発揮する。ディフェンスも良く、相手のエースにマッチアップすることもたびたびある。
そんなデュラント、カリー、トンプソンの3選手が、2017-18シーズンに50-40-90を達成する可能性がある。現在(2018/02/13)の3選手の成績は以下の通りで、ほぼ50-40-90の成績となっている。
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3選手ともに50-40-90まであとわずかの数字を残している。特に3Pは3選手とも余裕でクリアしており、現在のNBAを代表する3P主体のチームということが証明されている。
もしも、同チームの3選手が50-40-90を達成すればNBA史上初となり、50-40-90クラブに新たな歴史を作ることになる。この大記録が達成されればウォリアーズの2連覇、そしてウォリアーズ王朝の勢いはさらに増すことだろう。