練習試合で嶋基宏が死球で離脱
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、プロ野球では本来の開幕日である3月20日から練習試合を無観客で実施している。選手の起用法、球場の雰囲気や熱気、モチベーションも公式戦とは異なるものの、粛々と試合は行われている状況だ。チームも選手も公式記録には反映されず、なおかつ、怪我のリスクを背負いながら、である。
そんな中、3月21日のヤクルト対阪神戦で嶋基宏(ヤクルト)が死球を受け、右手親指付近を骨折した。全治は明らかになっていないものの、一定期間離脱することは確実となっている。心機一転を図る嶋本人はもちろん、高津臣吾新監督も「まさか」の思いだろう。高津監督の「ショック」という言葉からもその無念さがよく分かる。
嶋は昨シーズンまで楽天で13年間に渡ってプレーしていたが、今シーズンからヤクルトに新加入。春季キャンプから中村悠平とレギュラーを競いながら、若手の古賀優大に指導するなど捕手陣に好影響を与えていた。また、投手陣とも密にコミュニケーションを取りながら、開幕へ向け準備を行っていただけに、この時期の離脱はチームとしても苦しいところだ。
とはいえ、嶋が離脱してもチームはシーズンを戦っていかねばならない。当面は中村を軸に松本直樹と古賀の2人を一軍で起用することが濃厚だ。もしくは、一塁での起用が続いている西田明央を第三捕手として起用することも考えられる。開幕日や嶋の状況を見ながら、やりくりしていくことになるだろう。
古賀優大はオープン戦で打率.500
嶋の離脱はチームにとって大きな痛手となることは間違いない。しかし、若手捕手、特に古賀にとっては大きなチャンスでもある。
古賀は2016年ドラフト5位でヤクルトから指名を受けた高卒4年目。昨シーズン一軍では11試合に出場し打率.200(15打数3安打)の成績を残している。一方、二軍では打率.290(183打数53安打)と前年の打率.224(259打数58安打)から大きく成績を上げていた。
今年もオープン戦では12試合の出場で打率.500(14打数7安打)、4打点と一軍でも結果を残しつつある。打撃面で大きなアドバンテージをつくることができるのであれば、守備面で多少目をつぶってでも起用し続けてよいかもしれない。
本来であれば、古賀の扱いは中村、嶋に次ぐ三番手候補だった。第三捕手として出番は少ないながらも一軍に帯同するのか、二軍で試合に出場しながら昇格の機会を待つのか。二通りの育成プランがあったわけだ。しかし、嶋の離脱によって松本との競争ではあるが、二番手捕手として起用される可能性が高まった。
そうなると一軍に帯同する意味合いが異なってくる。二番手捕手であれば、出場機会も格段に増え、自身の成長に大きくつながるはずだ。
また、正捕手の中村は今年30歳になる。一方、古賀は22歳と年齢差は8つある。今後数年をかけて、育成しつつ徐々に出番を増やしながら「世代交代」をしていくのが理想的だろう。それこそ中村が、相川亮二からポジションを奪ったときのように。
高津監督は嶋の離脱にショックを受けるだけでなく、次の一手を考えているはずだ。このマイナスを将来的に大きなプラスとできるか、新指揮官の今後の起用法に注目したい。
2020年プロ野球・東京ヤクルトスワローズ記事まとめ