「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

直球の威力が増したソフトバンク松本裕樹 開幕ローテ入りを狙う上での課題とは

2020 3/21 11:00浜田哲男
イメージ画像
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

初の開幕ローテ入りのチャンス

昨季は2軍で11試合に登板し3勝(1敗)防御率1.72と好成績を残すも、1軍での登板はわずか7試合、1勝(1敗)防御率4.01に終わったソフトバンクの松本裕樹。2014年ドラフト1位で指名されプロ入り6年目を迎える今季は、千賀滉大や高橋礼が出遅れていることもあり、開幕ローテーション入りという千載一遇のチャンスが訪れた。

今季はここまでの実戦で抜群の安定感を見せ、3月14日の広島とのオープン戦では、先発として3回3安打1失点とまずまずの投球を見せた。この試合で自己最速となる152kmをマークしたのをはじめ、150km台の直球を連発。制球は多少荒れ気味だったが、今までよりも直球が力強くなったことで、変化球も生きている印象だった。

開幕ローテーション入りに向け、ライバルとなるのが二保旭。14日の広島戦では2番手でマウンドに上がり、3回1安打無四球無失点と好投した。

工藤公康監督は2投手を紅白戦で登板させるなど、競争を意識させる起用を続けている。開幕ローテーション最後の1枠は、この2人のどちらかがものにすることになるだろう。開幕が延期され調整期間が長くなったため、互いにアピールをするチャンスは増えた。今後の登板が正念場となることは間違いない。

課題は決め球の弱さ

どことなく巨人のエース菅野智之を彷彿とさせる投球フォームから繰り出す球種は、カーブ、スライダー、ツーシーム、フォークと多彩。尚且つ前述したように直球の威力もここ数年と比べると格段に増しており、今季こそはローテーションをシーズン通して守ってもらいたい投手だ。

ただ、課題は決め球の弱さ。前述の広島戦でも追い込むまではテンポよくいけるが、決め球に欠けているため打者に見極められ、粘られていた。結果として球数が多くなるため、長いイニングを投げるには不安を残す。

昨季の全投球における各球種の割合をみると、直球が約41%、スライダーが20%、ツーシームが約16%、カーブとフォークがともに約12%となっている。 直球の次に多投しているスライダーは平均球速が約125kmとそれほどの速さはなく、奪空振率が約12%で被打率は.240。決め球というには程遠い成績だ。打たせてとるのに便利なツーシームに関しても、被打率が.417と打ち込まれており、機能しているとは言い難い。

しかし、フォークに関しては被打率が.111と良く、2018年シーズンの同球種の被打率も.111をマーク。昨季の奪空振率が約14%と空振りをどんどん奪えるようなフォークではないが、投球の中での割合を増やしていくのも一考かもしれない。

決め球に欠け球数が増えると、野手のリズムにも関わるため、年間通して先発を務めるのは難しくなる。直球で押していくことができるようになってきたのだから、あとはいかにバットの芯を外し、効率良く打たせてアウトをとっていくか。ここまでの対外試合で投げているカットボールや、昨季打ち込まれたツーシームの精度向上がポイントとなるだろう。

二桁勝てれば、チームが優勝に近づく

今季のソフトバンクは、千賀と高橋が故障で出遅れているものの、開幕投手に指名されている東浜巨、バンデンハーク、和田毅、石川柊太、新外国人のムーアと既に開幕ローテーション投手が5枚揃っている。毎年のように分厚い先発投手陣を誇るソフトバンクにおいてローテーション入りするのは至難の業。

ここまでアピールに成功している松本にとっては、今季こそがチャンス。二保との争いもまだまだ決着はついていないが、6番目の枠はすぐそこにある。マウンドでの雰囲気や顔つきもこれまでとは違いブレイクの予感が漂う。

松本がシーズン序盤からローテーションに定着して二桁勝てるようであれば、ソフトバンクのリーグ優勝奪還、4年連続日本一が近づくだろう。

2020年プロ野球・福岡ソフトバンクホークス記事まとめ