松永の必要性は今季も変わらない
昨季は、2年連続でチームトップの25ホールドをマークしたロッテの松永昂大。イニングの頭や走者を背負った場面など様々なシチュエーションでマウンドに上がり、淡々と仕事をこなす姿はまさに仕事人。貴重な左のサイドハンドとして、ブルペンには必要不可欠な存在だ。
昨オフに積極的な補強を敢行したロッテは、元広島のジェイ・ジャクソン、楽天からフランク・ハーマンといった日本で実績のあるセットアッパーを獲得しブルペンの層を厚くしたが、それでも松永の必要性は変わらない。今季も試合を左右する均衡した場面での火消しが期待される。
スライダーの被打率は圧巻の.163
松永といえば、投球の約40%を占める鋭くキレのあるスライダーが最大の武器。また、昨季の最高球速148kmと、サイドハンドから繰り出す直球にもそれなりの速さがあり、主にこの2つの球種で投球を組み立てる。
右打者には膝元に食い込むスライダー、左打者にはアウトコースへ逃げていくスライダーや外角低めの直球で仕留める。スライダーの被打率は圧巻の.163で、直球も.227と優れた数値をマークしている。
配球を示す投手ヒートマップをみると、左打者には外角低め、右打者には内角低めへの投球を徹底。特に、対左打者の外角低めは、被打率.105、コース別最多となる13個の三振を奪っている。まさに左キラーだ。
リーグを代表する左打者との対戦成績をみても、そのことは証明されている。
被安打数の少なさもさることながら、三振を奪えていることも大きい。走者を背負った場面で最も欲しいのが三振であり、ピンチの時に松永の真骨頂が発揮される。
元西武の秋山翔吾(現レッズ)や日本ハムの近藤健介といった球界屈指のヒットメーカーも、松永の外角に逃げていくスライダーはほとんど攻略ができなかった印象だ。また、外角のスライダーをマークするあまり、真ん中付近の緩めのスライダーを見逃して三振を喫するシーンも散見された。
対右打者の対策が急務
プロ入りから7年連続で40試合以上に登板し、132ホールドをマーク。概ね安定した投球を見せてくれるが、時折四球で走者をためてしまい、カウントを取りに言ったところを痛打される場面もある。その一方で、初球から簡単にストライクを取り、カウントが有利になれば相手を圧倒してしまう。
改善すべき課題は対右打者。対左打者の被打率は.116とほぼ完ぺきに抑えているのに対し、対右打者では.321と打ち込まれている。このことが松永をイニングの頭から登板させるか、ワンポイントで登板させるかの判断基準のひとつになっている。
プロ・アマ合同の野球規制委員会は、2020年シーズン終了後に「ワンポイントリリーフの禁止(少なくとも打者3人、イニング終了まで投げることが義務づけられる)」について検討していくことになっており、松永のような投手には大きな影響を及ぼすはずだ。
このことから、現在投球の割合が少ないフォーク、チェンジアップ、ツーシームといった球種のどれかひとつでも使える武器にするなど、右打者を打ち取るパターンを確立すべきだろう。
だが、今季も松永がブルペンに欠かせない存在であることは疑う余地がない。ピンチの場面を淡々と乗り切っていく投球を引き続き期待したい。
2020年プロ野球・千葉ロッテマリーンズ記事まとめ