大きく負け越した阪神との立場が逆転
長いペナントレースを制するためには「天敵を作らないこと」が大事な要素のひとつになる。大きく負け越す相手が1チームでもいるとトータルで貯金を積み重ねることは難しく、また相手の貯金を増やすことを助けてしまい「優勝」の二文字は遠のいていく。
その意味では昨季苦戦した相手との対戦は序盤戦の見どころになるだろう。早い段階で「天敵」の意識を払拭し、良い流れを生み出していきたいところだ。
そこで各チームの苦手チームとの対戦データから、天敵攻略の鍵を探っていきたい。今回は高津臣吾監督による新体制で今季に臨むヤクルトを取り上げる。
昨季のヤクルトが最も低い勝率に終わった同リーグの相手は阪神だ。セの全チームに負け越した中で、阪神には9勝14敗2分けで勝率4割を切った。
2018年の対戦は15勝10敗でヤクルトが圧倒していたのだが、昨季は立場が逆転。リーグ順位としても最下位から3位へ躍進した阪神と対照的に、ヤクルトは2位から最下位へ転落した。明暗分かれた両軍の対決は今季どう出るだろうか。
甲子園で5本塁打 阪神戦で最も当たっていたバレンティンが退団
昨季のヤクルトの主な選手の阪神戦データを見ていきたい。
リーグ2位の656得点をマークした攻撃面から見ていくと、最も当たっていたのはバレンティンだ。阪神戦ではシーズンOPS.917 を上回るOPS.942をマークし、本塁打6本のうち5本は敵地で放ったもの。広く本塁打が出にくい甲子園でも、関係なく放り込めるパワーで頼りになった。しかしバレンティンはこのオフにソフトバンクへ移籍。苦手阪神相手への相性という観点でも主砲の退団は痛い。
そのほかの主力打者の対戦成績はシーズン成績と大きく変わらなかったが、今季からキャプテンに就任する青木宣親は打率.243、OPS.662とやや苦戦している。
投手も阪神戦3勝のブキャナンが退団
投手では、昨季10年ぶりの古巣復帰となり、今季から投手キャプテンを務める五十嵐亮太が苦戦した。シーズン全体では45試合に登板して防御率2.98をマークし、見事に戦力外からの復活を果たしたが、阪神には防御率7.27と打ち込まれた。
昨季は両リーグワーストのチーム防御率4.78と苦しんだ投手陣だが、主力の一人ひとりを見ると対阪神戦の働きがそこまで悪かったわけではない。勝ち星こそ伸びなかったものの小川泰弘は4試合を防御率2.86に抑え、近藤一樹、梅野雄吾、マクガフの勝ちパターンリリーフ陣は防御率2.00以内と大車輪の働きを見せた。
際立ってよかったのがブキャナンで、6試合で防御率1.43の3勝0敗と圧巻の数字を残している。しかし、このオフに球団は新外国人右腕を2人補強し、2017年の来日以来3年ヤクルトでプレーした右腕の放出という決断を下した。シーズン全体では4勝と振るわなかったことから、外国人投手の入れ替えはやむを得ないが、苦手の阪神相手に抜群の相性を誇ったブキャナンの退団は今季にどう影響するか。
ヤクルトが昨季大きく負け越した阪神との戦いにおいては、投打共通する課題が浮かび上がった。精神的支柱としてチームを引っ張る投打のキャプテンが苦手を克服できるか。また、退団した外国人選手の穴をどう埋めていくのか注目したい。
2020年プロ野球・東京ヤクルトスワローズ記事まとめ