将来を期待される貴重な左腕
プロ3年目の昨季、1軍での登板は6試合1勝(0敗)に終わったものの、2軍で9勝(2敗)防御率.2.35の好成績を残したロッテの土肥星也。1軍での登板数は2018年と同じ6試合にとどまったものの、防御率は2018年の5.08から3.13に改善。昨季、唯一の白星を挙げた7月7日の西武戦では強力打線を相手に5回1失点の好投を見せた。
左腕をしならせるスムーズな投球フォームから繰り出す直球は、平均球速138.5kmと速さはないもののキレがあり、主にチェンジアップとのコンビネーションで打ち取っていく。現在1軍の先発ローテーションに安定してシーズンを投げきれる左腕が不足しており、小島和哉らとともにその飛躍が期待されている。
昨季登板した6試合の中で最も長く投げたのは、8月7日のソフトバンク戦。白星こそつかなかったものの、7回無失点の好投を見せチームも勝利している。その他の試合は概ね5回程度でマウンドを降りているものの、先発として最低限「試合をつくる」ことはできており、将来を期待させる投球内容だった。
低めに集める丁寧な投球
土肥に先発投手として期待する理由のひとつが、球を低めに集める丁寧な投球だ。これは、長いイニングを投げる上で安定感を保つ大きな要因となる。昨季のヒートマップをみると、左打者に対しては外角低めに球が集まっており、右打者に対しても低め全般への投球が大きなウエートを占める。同マップを「空振り」という項目からみた場合にも、対左打者の場合は外角低めおよび内角低め、対右打者の場合は低め全般で空振りを奪っている。
また、昨季のゾーン別データをみると、球威で押すタイプではないため、真ん中よりも高めに投じた場合には被打率が良くないが、低めに集めた場合の被打率はまずまずの数字。特に対左打者の外角低めでは、投球割合は約35%を占めているが被安打はゼロ。数字の上でも、低めを丁寧についていることが実証されている。
キレ味抜群のチェンジアップが魅力
期待するもうひとつの理由は、ウイニングショットの存在だ。投球割合において直球(約58%)に次いで多いのがチェンジアップ(約18%)。特に右打者には約28%も投じており、投球を組み立てる際の生命線ともいえる球種だとわかる。特筆すべきはチェンジアップによる奪空振率が約25%と高いこと。同じ左腕でチェンジアップを得意とする楽天・松井裕樹の奪空振率は約24%であり、数値上ではほぼ互角といえよう。
土肥は先発で、松井は昨季までクローザーを務めていたため、平等な比較にはならないが、土肥のチェンジアップが優れていることはわかる。ちなみに被打率は.222。直球の被打率が.364と打ち込まれていることは課題だが、平均球速118kmで大きく鋭く落ちるチェンジアップをいかに織り交ぜていくかが、土肥の投球において最重要ポイントといえる。
昨季、唯一の白星を挙げた西武戦では、中村剛也を真ん中低めのチェンジアップで空振り三振にしとめたが、ベースよりも随分と前に落とした球を振らせた。また、森友哉からは内角に鋭く落とすチェンジアップで空振り三振を奪っており、同球種のキレが良くウイニングショットとして十分に通用することを証明した。
オフに左肘の関節鏡視下クリーニング手術を行い、心機一転万全のコンディションを整えて臨む今季は、1軍の先発左腕としてローテーションに食い込む活躍が期待される。楽天からフリーエージェント(FA)で移籍してきた美馬学や石川歩、西野勇士といった経験のある先発投手のほかは、種市篤暉、二木康太、岩下大輝、佐々木千隼、小島和哉ら年齢も近く若い投手ばかりだ。先発ローテーションに左腕は1枚でも2枚でも欲しいところ。土肥が先発ローテーションを勝ち取る可能性は十分にあるだろう。
2020年プロ野球・千葉ロッテマリーンズ記事まとめ