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ヤクルト・長谷川宙輝と寺島成輝 明暗分かれた同学年左腕

2020 3/3 11:00勝田聡
東京ヤクルトスワローズの長谷川宙輝と寺島成輝ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

新戦力の長谷川宙輝はアピール成功

最下位からの巻き返しを狙うヤクルトは、この春季キャンプで新戦力の投手たちが結果を残した。ドラフト2位の吉田大喜、同4位の大西広樹、そしてソフトバンクから移籍してきた長谷川宙輝である。

なかでも長谷川は、サウスポーで150キロのストレートを武器に、練習試合やオープン戦で結果を残し、移籍後初のキャンプを一軍で走り抜けた。

2016年育成ドラフト2位で指名され、東京都の聖徳学園高校からソフトバンクへ入団。高校時代に甲子園をはじめとした全国大会への出場経験はなかった。

しかし、これまでの3年間で支配下登録を勝ち取ることはできなかったものの、その潜在能力の高さは認められており、一部では「左の千賀(滉大)」と呼ばれていたほどである。このオフシーズンも育成契約の規則に則って育成再契約のオファーをもらっていた。

長谷川自身も再契約の意思を持っており、ソフトバンクの秋季キャンプに参加していたが、ヤクルトからの支配下でのオファーに移籍を決断した。

現時点で先発、中継ぎどちらの役割になるかは明言されていないが、貴重な左腕ということもあり開幕一軍の可能性は非常に高い。無観客試合となったオープン戦でどのような投球ができるか、それが念願の開幕一軍入りへの鍵となる。

一方、その長谷川が指名を受けた2016年のドラフト会議で目玉のひとりでもあった左腕が苦しんでいる。履正社高校からドラフト1位でヤクルト入りした寺島成輝である。

寺島成輝は開幕一軍の座が遠のく

寺島は履正社高校時代に藤平尚真(横浜高校→楽天)、今井達也(作新学院高校→西武)、高橋昂也(花咲徳栄高校→広島)とならび「高校BIG4」と称されていた。

金の卵であるドラフト1位左腕に与えられた背番号は「18」。1年目の春季キャンプで一軍スタートを勝ち取っており、期待は大きかった。しかし、2週間経たずして故障し離脱。結局、1年目は一軍での登板機会はわずか1試合のみ。その試合でも3回5失点と結果を残せなかった。

以降も毎年のように期待されるが、ここまでは結果を出せていない。3年間で一軍登板はわずか5試合にとどまり、勝ち星は「0」だ。

しかし今年は春季キャンプで一軍スタートを勝ち取り、4年目の飛躍を期待されていた。ブルペンでも捕手を務めた古賀優大としきりに話をしながら、フォームを確認。いつもと違うように見受けられた。視察に訪れていた江夏豊氏も、古賀の後ろから視線を送っていたほどだ。

グラウンドで行われたケースノックでは、三塁側の待機列からマウンドへ登るまでの数メートルを他の投手のように小走りではなく、ダッシュしていたのが印象に残っている。些細なことではあるが、並々ならぬ気迫を感じさせた。

しかし、現実は厳しい。ヤクルトのオープン戦が始まる2月22日の前日、21日に同じ左腕の坂本光士郎とともに二軍行き。開幕一軍入りへ向けた大きなアピールの場であるオープン戦での出場機会を失ってしまったわけだ。

もちろん、オープン戦はこれからも続くため、二軍で結果を出せば再昇格の可能性が残されている。だが、2月24日に行われた社会人野球のJX-ENEOSとの練習試合で2回3失点と打ち込まれてしまった。春季教育リーグで再びチャンスはあるだろうが、開幕一軍入りはむずかしくなったと言わざるを得ない。

高校時代は実績の少なかった長谷川が開幕一軍入りをほぼ手中に収めている一方で、世代のトップランナーだった寺島がここまで苦しんでいる。ドラフト下位指名にもチャンスはあるが、1位指名でも結果がついてこない場合も。プロ野球界の夢であり、厳しさである。

寺島はまだ4年目。一軍の舞台で輝けるチャンスは十分にある。沖縄・浦添キャンプで見せていた気迫溢れるプレーで、一軍昇格を掴んでほしい。

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