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今後のソフトバンクに上林誠知の復活が不可欠な理由

2020 2/27 11:00浜田哲男
ソフトバンクの上林誠知ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

外野のレギュラー争いがますます熾烈化

2018年に自身初の全試合出場を果たし、打率.270、22本塁打、62打点、13盗塁とキャリアハイの成績を残したソフトバンクの上林誠知。さらなる飛躍が期待された昨季は、シーズン序盤に右手へ死球を受けて骨折した影響も大きく、出場99試合、打率.194と低迷した。

今季はヤクルトからバレンティンを獲得した影響もあり、ただでさえ激しい外野のレギュラー争いがますます熾烈化。昨オフのドラフトでは1位で即戦力外野手の佐藤直樹(JR西日本)を獲得したほか、5位でも外野手の柳町達(慶応大)を獲得しており、上林が再びレギュラーの座を奪還するためには茨の道が待っている。

昨季からの復活を目指す上林は、2月23日のオリックスとのオープン戦では3番右翼でスタメン出場。2打席連続で適時打を放つなど気を吐いた。それでも、分厚い選手層を誇るソフトバンクでレギュラーの座を獲得することは至難の業。今後も走攻守でアピールし続ける必要があることは明白だ。今回は、上林の復活が今後のソフトバンクにとって不可欠である理由について考察してみる。

野手の高齢化からの脱却

ソフトバンクの野手は内外野ともに年々高齢化。外野手に関しても、内外野を守れるジュリスベル・グラシアル(34歳)を含め、柳田悠岐(31歳)、中村晃(30歳)、長谷川勇也(35歳)、アルフレド・デスパイネ(33歳)、新加入のウラディミール・バレンティン(35歳)と高齢化が顕著だ。

バレンティンの加入により助っ人外国人が増えたことで、若手の起用機会がさらに減少することも懸念される。若い上林(24歳)をはじめ、昨季は86試合に出場して11盗塁をマークするなど経験を積んだ釜元豪、2軍でリーグ最多の26盗塁を決めた真砂勇介らが確固たるレギュラーとして君臨していかなければ、チームの将来は明るくない。中でも、走攻守においてポテンシャルの高さを持つ上林の復活はチームを活性化する上でも大きな要素となりうる。

守備範囲と機動力の向上に貢献

昨季のチーム盗塁数は113個でリーグ3位。全体でみるとそれほど悪くはない数字だが、その盗塁の多くはレギュラーの選手ではなく、控え選手や出場試合数の少ない選手が決めている。25盗塁をマークした周東佑京を筆頭に、11盗塁の釜元、10盗塁の牧原大成、上林と続く。やはりレギュラーが機動力を使っていけなければ攻撃パターンも単調になるし、相手にプレッシャーをかけられない。

打力では柳田、バレンティン、中村らに分がある状況において、やはり上林は脚力を活かした守備範囲の広さと強肩、盗塁をはじめとした走塁の面も含めてアピールしていきたい。入団時点で50m走6秒0、遠投は105mという類い希な身体能力は魅力的だ。2018年には12球団ダントツとなる14本の三塁打もマーク。外野の間を切り裂くようなライナー性の当たりが数多く放てるようになれば、必然的に二塁打、三塁打は増えていくはずだ。

柳田、デスパイネ、グラシアル、バレンティンらを中核に据えた1発のある打線は、確かに相手にしてみれば怖い。だが、バットが湿った時に様々な攻撃のバリエーションを持っておく意味でも、走攻守で力のある上林の存在は貴重だ。外国人頼みの打線というのも中長期的にみれば危うく、上林を筆頭とした若手外野手の台頭は欠かせない。

課題は内角および高めの球

昨季のゾーン別データをみてみると、内角と高めに弱いことが明白。内角高めの打率は.100、内角中程が.091、内角低めが.158で、真ん中高めは.182、外角高めは.125と、これらのコースは2割にも届いていない。これだけ苦手なコースがあれば率が上がらないのは当然。苦手なコースの球の見極めやさばきといった技術面での向上は必須だ。

打率.270を残した2018年と比べ、打率1割台に低迷した昨季は何がおかしかったのか。もちろん右手骨折の影響による感覚の狂いというものも大きかったと思われるが、今季はなんとか昨季の不振から脱却したい。

秘めたるスター性の開花に期待

上林の特長のひとつが、豪快さは決してないコンパクトなスイングで、スタンドの上段までライナーで運ぶ特異な技術だ。好調時は決して体が開くことなく、バットのヘッドが最も走っている箇所でボールにきれいにコンタクト。打った瞬間にそれと分かる打球は、誰もが打てる打球ではない。

また、得点圏打率は決して高くはないが(通算得点圏打率.243)、形勢不利な試合展開で一気に流れを引き寄せる1発を放ったり、勝負所で何かをしてくれるという期待感がある打者でもある。2017年のシーズンオフに開催された「アジア プロ野球チャンピオンシップ」の韓国戦、3点を追う延長10回に試合を振りだしに戻す起死回生の3点本塁打を放ったことは記憶に新しい。

その能力からすれば十分にトリプルスリーを狙える逸材でもあるし、秘めたるスター性が開花するのはこれからだ。昨季の不振を一掃し、改めてその存在感を示してほしい。

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