昨季は4番・鈴木誠也にマーク集中
4連覇を目指しスタートしたはずの昨季、広島はまさかのBクラスに沈んだ。V逸どころか、シーズン最終戦に敗れ70勝70敗3分の勝率5割で終了。6連勝フィニッシュした阪神に3位を譲り、クライマックスシリーズ進出さえも逃してしまった。
2019年リーグMVPだった丸佳浩(30)が巨人に流出したとはいえ、チームとしては優勝するだけの戦力はあったはず。丸の人的補償で巨人から長野久義(35)が加入。4番の鈴木誠也(25)は健在だった。だとすれば何が足りなかったのか。V逸の背景には、期待されたプレーヤーが、目論見通りの活躍ができなかった事実があることは否めない。
数々の要因がある中で、自らひしひしと責任を感じているのは松山竜平(34)だ。昨年は特に序盤、チームとして5番を固定できず、4番・鈴木にマークが集中する状況があった。5番として期待されていた松山は、前半戦の打率が2割を切るほどに苦しんだ。
松山は「去年は誠也が一人ずば抜けている状況で、勝負を避けられる場面も多かった。そこで自分が打てていれば」と振り返る。その悔しい経験をバネに、オフはパワーアップにまい進。特に長打力の向上に努めた。「僕が5番で相手から怖がられるようになれれば」と、2020年は5番打者としてのリベンジを目指している。
理想とする形が心の中にある。松山は少年時代、巨人で活躍していた松井秀喜さん(45)の姿に心を震わせた。「打順的には違うのですが、僕の中では高橋由伸さんと松井秀喜さんの3、4番コンビが最強。4番の誠也と5番の自分で相手投手から恐れられるような打線になれば」と思いを馳せた。
田中広輔の不振も誤算
もちろん、松山の前半の不振だけが敗因ではない。1番・田中広輔の不振も大誤算だった。打撃不振に止まらず、守備でもミスを連発する場面が目立ち、1番打者から外されこともあった。交流戦終盤からはルーキーの小園に遊撃のポジションを譲る形となっていただけに、巻き返しへ気合が入っている。
不動のセカンドの菊池涼介が、ポスティングシステムを利用しての米移籍を断念しチームに残留したことも、広島にとってはプラスに働くだろう。
投手陣に関しては3年連続2桁勝利の大瀬良大地や、2年連続11勝のクリス・ジョンソンが安定的な仕事ぶり。チーム防御率はリーグ2位の3.68、救援陣の防御率は3.63のリーグ3位と悪い成績とはいえない。かつての守護神・中崎翔太の離脱や、ジャクソンの退団の影響を感じさせず、フランスア・菊池保則・中村恭平・レグナルト・一岡竜司らがフォローした。
佐々岡監督の「優しさ」を不安視する声も
緒方前監督から佐々岡新監督に体制が変わった。監督が変わるタイミングでは、チームの雰囲気もグッと変わる。それまでの先入観から解放され、燻っていた戦力が日の目を見ることもままある。
あるOBは「佐々岡監督はいい意味でも悪い意味でも優しいんだ。選手がその優しさを取り違えて、甘えることのないことを望みます。そして、その優しさで采配や選手起用の判断が遅れることは大問題。勝負に優しさは大敵です。そういう部分をコーチ陣が支えてやってほしい」と話す。
昨季は主力の不振や、バティスタの薬物使用問題での出場停止など、アクシデントが相次いだ。そして最後にはツキにも見放され、自力で試合ができないままBクラス転落としりすぼみのシーズンだった。
そもそも4連覇以上したセ・リーグのチームはV9時代と1955〜1959年(5連覇)の巨人しか存在しない。それだけ難しいミッションを逃したからといって悲観することはないだろう。逆に4連覇という呪縛から解き放たれた広島が自然体で2020年に臨む状況は、他球団には脅威だろう。
2020年プロ野球・広島東洋カープ記事まとめ