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内角をさばけることが高打率の条件?内角の打率を比較

2020 2/23 11:00浜田哲男
西武の森友哉選手と巨人の坂本勇人選手ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

高打率をマークした選手を比較

打撃において、どのコースでも満遍なくさばけるのであれば、それに越したことはない。しかし、どんな打者でも得意なコースと苦手なコースがあり、内角に強い打者もいれば外角に強い打者もいるし、低めは得意だけれども高めが苦手な打者など実に様々だ。

今回は、その中でも内角に強い打者に注目。昨季、両リーグの打率ランキングベスト3に入った打者をはじめ、どの打者がどれだけ内角を打っているかなどを比較してみる。

内角を含め、苦手なコースがない鈴木誠也

2019年セ打率ベスト3内角の打率比較ⒸSPAIA

まずはセ・リーグ。

昨季打率.335をマークし、初の首位打者のタイトルを獲得した広島・鈴木誠也。ゾーン別データでは、内角球に対しては高め.333、中程.313、低め.280と、高低関係なく高打率を残している。その他のコースでもハイアベレージで(最低でも外角低めの.263)、際だって苦手としているコースがない。

次は、打率2位の.315をマークした中日・ビシエド。内角に対し、高めは.258とやや打ちあぐねているが、中程は.300、低めは.327と高打率だ。また、高低・左右で9分割したど真ん中には滅法強く.510のハイアベレージを残している。打率3位の阪神・糸井嘉男の内角のデータでは、高めが.250、中程.276、低め.162と、内角は高低関わらず苦手にしている。一方で、真ん中低めに対して.477など得意なコースと苦手なコースが比較的はっきりしているタイプだ。

内角は全て3割超えの森友哉

2019年パ打率ベスト3内角の打率比較ⒸSPAIA

次にパ・リーグ。 同リーグの捕手として54年ぶりに首位打者を獲得した西武の森友哉の内角ゾーン別データをみると、高めは.300、中程は.333、低めが.302と全て3割超え。その他のコースも鈴木同様、特に苦手なコースが見受けられず、その優れたバットコントロールが数字でも実証されている。

打率2位の.322をマークしたオリックス・吉田正尚。内角中程の打率が.342と際だっているほか、高めに関しては、外角の.473をはじめ、真ん中.326、内角.306と滅法強いことが分かる。打率3位のロッテ・荻野貴司の内角中程の打率は、吉田を上回る.357。軸回転で打つ打撃スタイルが、内角球をとらえる上で功を奏している。

両リーグの打率上位者は、総じて内角を苦手にしていないことが分かる。糸井のように内角が苦手でも他のコースで率を稼げればいいが、内角もさばけることが高打率を残すための条件のひとつといえそうだ。

どんな打者でも、外角低めの攻略は困難

そのほかの打者で、内角球に対して特徴的な数字を残した打者をみてみる。まずは、昨季36本塁打、96打点とブレイクしたヤクルト・村上宗隆。10代の最多本塁打新記録をマークした一方で三振が多く、打率は.231にとどまった。その打率が示すように苦手なコースも多いのだが、内角に関しては中程でコース別では最も多い9本塁打を放ち.396と高打率だった(高めは.176、低め.118)。「ここに球が来れば打てる」と自信を持つゾーンがあることは強みだ。

また、球界を代表する内角打ちの名手・巨人の坂本勇人は、内角中程の打率が.386とさすがの数字(低めは.315)。しかし、高めは.212と苦手としており、内角であれば高低に関わらずさばいているというわけではないようだ。それでも、普通に打てばファウルになってしまうような内角の厳しい球をさばく打ち方は芸術的。坂本がこれまで安打を量産してきている大きな要因といえる。

どの打者にも通じていえるのは、外角、特に低めで率を残すのは困難だということ。両リーグの打率上位に入った前述の6選手のうち、糸井以外の5選手は外角低めの打率がコース別で最も低い。「困った時には外角低めの直球」という野村克也氏の言葉にもつながってくる。つまり、ある程度の打率を残すためには外角低めに対応する技術を磨くというよりも、真ん中寄りはもちろん、内角をうまくさばけるようになることが大きな条件となるだろう。

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