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新打撃フォームに取り組む西武・山川穂高 昨季苦手とした内角を克服できるか

2020 2/16 06:00浜田哲男
西武・山川穂高選手ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

実力がフロックではないことを証明

圧倒的な打撃力でリーグ連覇を達成した西武。中でも打線の中核を成す山川穂高の存在は大きい。昨季は8月中旬、打撃好調だった中村剛也に4番の座を明け渡すも、終わってみれば2年連続で本塁打王のタイトルを獲得。2018年に47本塁打を放ち一気にブレイクしたが、昨季も43本塁打を放ち、その実力がフロックではないことを証明した。

内角球への対応力向上は喫緊の課題

山川の課題は明確。昨季のゾーン別データをみると、内角の打率が極端に低く、内角高めの打率が.067、中程が.122、低めが.143。ヒットゾーンも外角寄りが多く、特に右投手が投じる内角の球を苦手としている。本塁打43本中、内角の球をスタンドまで運んだのは2本のみ。

バットの軌道の問題なのか、強打者ゆえに厳しく内角を突かれているのか、いずれにせよ内角球への対応力向上は喫緊の課題といえる。また、外角低めの球で55個の三振を喫している。このことからも、いかに山川が内角を攻められ、その後外角低めの球を振らされているかがうかがえる。

また、2018年シーズンは打率.281とまずまずの数字を残したが、昨季は.256に下降。得点圏打率も2018年は.310だったが、昨季は.261と振るわなかった。昨季終盤、山川に代わって4番に座った中村は得点圏打率.350とチャンスに滅法強く、この違いが辻発彦監督に打順変更を決断させたひとつの要因と考えられる。

中村との違いは打球方向にも顕著に表れている。中村の打球方向別の打率をみると、ライト方向が.415のハイアベレージで、30本塁打のうち10本をライト方向へ放っている。一方で山川はライト方向の打率が.250で、43本塁打のうち同方向へ放ったのはわずか2本。山川の打撃が確実性を増すには、中村ほどまでとはいかなくとも、ある程度センターから右方向へ打ち返すことを意識する必要がある。

打球方向別打率・本塁打の比較ⒸSPAIA

新打撃フォームで課題を克服へ

こうした課題を意識してか、2月9日に行われた宮崎南郷キャンプのシート打撃で、これまでにはほとんど見られなかったような本塁打を放っている※。外角の球を振り抜くと、平凡なライトフライかと思われた打球がフェンスを越えた。バットを振り終えた山川の顔はレフト方向側を向いており、打った直後の本人の表情をみても打ち損じという感覚。それでも打球はギリギリで本塁打となった。

※パーソル パ・リーグTV「【ライオンズ春季キャンプ】ライオンズ・山川 シート打撃で逆方向への一発!!

打撃フォームは昨季と比べて明らかに変化。昨季よりも左足の上げ幅が小さくなり、顔の左側にあったバットの位置は顔の右側の少し高い位置へ。その効果もあってか昨季よりもスムーズにバットが出ているように見えた。振り回すというよりも最短距離でバットをコンパクトに出し、ミートする確率を上げるという感じだ。昨季までは調子が悪い時には頭が突っ込みがちだったが、このフォームは体全体の動きが昨季までのフォームと比べて少なく、頭の位置が大きくブレることも減りそうだ。今回見せたような右方向への本塁打が増えてくれば、本人が公言している目標の50本塁打到達も視野に入ってくるだろう。

球種別の打率をみると、ストレートに対し、2018シーズンは.304だったのが、昨季は.244と下降。スライダーに対しても、2018年は.305をマークしていたが昨季は.240と振るわなかった。しかし、体勢を崩されやすかった昨季の打撃フォームから一転、前述したようなフォームであればあらゆる球種への対応力も向上しそうだ。

何しろパワーがあり、そこに確実性が伴ってくると相手投手にとっては怖さが増す。苦手とする内角球に対する見極め、対応力が向上する可能性もある。山川の進化が、西武のリーグ3連覇の大きな鍵となることは間違いない。

2020年プロ野球・埼玉西武ライオンズ記事まとめ