宮崎・西都で奮闘するヤクルト・畠山和洋二軍打撃コーチ
春季キャンプも中盤戦。ドラフト1位の新人や、鳴り物入りでやってきた大物新外国人、FA移籍の選手など新加入の選手たちがメディアを賑わせている。
首脳陣でも新しく就任した監督・コーチは取り上げられる機会が多い。ヤクルトの二軍監督になった池山隆寛もそのひとり。現役時代をヤクルト一筋で過ごしたスラッガーが二軍監督として復帰、そして金の卵である奥川恭伸が二軍スタートとあって、例年に比べるとヤクルト二軍の情報は多い。
注目の奥川だが、1月の新人合同自主トレ期間中、右肘に軽度の炎症が残っていることが発覚。ノースロー調整でキャンプインしたにも関わらず、ヤクルトの二軍キャンプ地、宮崎・西都には初日から報道陣が多数集まった。その様子を見た池山監督は「注目していただいてありがとうございます」と笑みを浮かべていたほどだ。
そんな例年より賑やかなヤクルトの二軍キャンプで、もうひとり新たな役割を得て奮闘している人物がいる。畠山和洋二軍打撃コーチである。
打撃投手を務める姿は新鮮
畠山二軍打撃コーチは長らくチームの主軸として活躍。2015年には4番として打点王に輝き、14年ぶりのセ・リーグ制覇に大きく貢献した。その後は、度重なる故障で不本意なシーズンが続き、昨シーズンをもって現役を引退。そのままユニフォームを脱ぐことなく、二軍打撃コーチに就任した。
2000年のドラフト5巡目で指名されてから、ヤクルト一筋でプレーしてきたこともあり、新任の二軍打撃コーチといってもファンは畠山の姿を見慣れている。背番号が「33」から「85」に変わったものの、見た感じはあまり変わらない。
しかし、選手ではなくコーチとして参加しているので、当然ではあるがキャンプ中の動きは異なる。昨年までは打つ方だった打撃練習では、打撃投手も務めていた。投球フォームもさまになっており、意外にも球は速い。本職の打撃投手と比べると精度は落ちるのだろうが、コントロールの大きな乱れもない。
昨年のドラフト5位長岡秀樹、6位武岡龍世には、打撃練習をするケージの後ろでティーバッテイングの指導も行なっていた。その光景は、指導される側からする側へ立場が変わったことを感じさせる。
気になる点があるとトスを止め、なにやら話し込む姿は新鮮だ。ときには自らバットを手に持ち実践してみせる。プロ野球選手になって初めてのキャンプに挑む若い2人の表情は、真剣そのもの。畠山二軍打撃コーチの言葉を理解しよう、モノにしようという必死さが伝わってくる。新人も新任コーチも必死なのだ。
黄金魂の継承者をいつの日か
打撃練習時には音楽がかかっている。その曲目は様々だが、畠山の登場曲として長らく使用されてきた『黄金魂』が流れる一幕もあった。そのメロディーに合わせて、畠山が指導している。もちろん、そこに「はたっけ〜」のコールはない。あったとしてもファンの心の中だけだろう。
二軍のキャンプに来ているファンは、一軍キャンプに比べると圧倒的にコアなファンが多い。おそらくスタンドで見ていた50人くらいの心には、なにか響くものがあったはずだ。
いつもの見慣れた畠山が西都にいた。でもそれはかつての畠山ではない。姿かたちは同じでも選手ではなく、コーチという立場に変わったのである。
二軍打撃コーチとして奮闘する畠山が、「第2、第3の畠山」を育成し、彼らが神宮球場で豪快な本塁打を放つことをファンは待ち侘びている。
2020年プロ野球・東京ヤクルトスワローズ記事まとめ