平成以降、生え抜き大卒捕手は大成せず
今年も新人選手を含む多くの期待の若手たちが一軍に抜擢された。日本一4連覇を目指すソフトバンクでは、ドラフトで指名した5名の内、高校生の小林珠維をのぞく4人が一軍に相当するA組からスタートする。工藤公康監督も「ルーキーは即戦力で取った選手」とコメントしており、アピール次第では開幕一軍入りも見えてくる。
そのなかで注目したいのが、ドラフト2位で東海大から入団した捕手、海野隆司(東海大)である。ドラフト時には佐藤都志也(東洋大→ロッテ2位)、郡司裕也(慶応大→中日4位)とともに、大学生捕手のなかでは目立った存在だった。大学日本代表経験もあり、昨夏に行われた日米大学野球選手権では正捕手として出場している。二塁送球は2秒を切り、打撃面よりも肩を中心とした守備面での評価が高い。
現時点におけるソフトバンクの捕手事情を見ると、正捕手には甲斐拓也、サブではベテランの高谷裕亮、若手は栗原陵矢、九鬼隆平、谷川原健太といった面々がしのぎを削っている。
キャンプ2日目にして右肘の違和感で別メニュー調整となってしまったため、経過観察後の状況次第ではあるものの、2番手・3番手として開幕一軍メンバーに名を連ねることはありえそうだ。
しかし、ソフトバンク(前身球団含む)の捕手の歴史を見ると、大卒生え抜きの捕手で結果を残した選手はほとんどいないというのが気にかかる。
吉永幸一郎、城島健司、甲斐拓也ら高卒組が正捕手に
それは平成の時代となった1989年以降、ソフトバンク(当時はダイエー)の捕手を見るとよくわかる。1989年から1990年までは、阪急から移籍してきた内田強が正捕手としてマスクを被り、1992年以降は吉永幸一郎(東海大工)が正捕手を奪取する。
その後、吉永の離脱している期間に一時的に川越透(清水商店)、坊西浩嗣(三菱重工三原)のふたりがスタメンを任されたこともあったが、それも1995年の1年だけしかない。翌1996年には再び、吉永が正捕手に戻っている。
1997年からは城島健司(別府大付高)がマリナーズへと移籍する2005年まで君臨する。2000年を除いてすべてのシーズンで規定打席に到達しており、まさに絶対的な存在としてチームを引っ張った。
城島の移籍以降は山崎勝己(報徳学園高/現・オリックス)、移籍組の田上秀則と細川亨が正捕手を守ってきた。そして近年は甲斐拓也(楊志館高)が正捕手に君臨している。サブでは的場直樹(明治大)や高谷裕亮(白鴎大)が年度によって出場数を確保しているが、規定打席到達、100試合出場のいずれも経験がない。正捕手に関しては移籍組、もしくは高卒でドラフト指名した選手が勝ち取っているのである。
平成以降で26人の捕手を指名
平成以降で高卒以外の捕手の指名がなかったかというと、そんなことはない。1989年以降のドラフトで見ると2019年までに育成含め、ソフトバンクは26人の捕手を指名している。そのうち高校生が14人、大学生・社会人出身(独立L含む)は12人となる。高校生の方が多いとはいえ、ほぼ変わらない。
その他の球団を見ると、昨シーズン現役を引退した阿部慎之助(元・巨人)は中央大学出身だった。現役選手でも石原慶幸(広島/東北福祉大)、小林誠司(巨人/日本生命)、嶋基宏(ヤクルト/國學院大)、梅野隆太郎(阪神/福岡大)と大卒、そして社会人出身でも実績を残している選手は多い。球界全体で高卒以外の捕手が活躍していないわけではないのである。
はたして海野は、「ソフトバンクでは大学出身の生え抜き捕手が正捕手になれない」というジンクスを打ち破る活躍ができるだろうか。
【ソフトバンクの捕手指名】
※1989年(平成)以降
<支配下指名>
本田明浩(1991年/新日鉄大分)
城島健司(1994年/別府大付高)
的場直樹(1999年/明治大)
山崎勝己(2000年/報徳学園高)
北野良栄(2001年/星稜高)
大野隆治(2002年/日本大)
中西健太(2004年/北大津高)
加藤領健(2004年/青山学院大)
荒川雄太(2005年高/日大高)
高谷裕亮(2006年大社/白鴎大)
山下斐紹(2010年/習志野高)
栗原陵矢(2014年/春江工高)
谷川原健太(2015年/豊橋中央高)
九鬼隆平(2016年/秀岳館高)
海野隆司(2019年/東海大)
<育成指名>
猪本健太郎(2008年/鎮西高)
堂上隼人(2008年/四国・香川)
甲斐拓也(2010年/楊志館高)
笹沼明広(2011年/全足利クラブ)
飯田一弥(2011年/四国・高知)
八木健史(2012年/BC群馬)
張本優大(2013年/佛教大)
堀内汰門(2014年/山村国際高)
樋越優一(2015年/東農大オホーツク)
渡辺陸(2018年/神村学園高)
石塚綜一郎(2019年/黒沢尻工高)
2020年プロ野球・福岡ソフトバンクホークス記事まとめ