「投手王国」はどこだ?
先日、「16球団構想」に賛同するソフトバンク・王貞治球団会長の発言が注目を集めた。エクスパンション(球団拡張)の話題が出ると、野球ファンの間では「新球団を作るならどの都道府県か?」と議論が交わされる。
その議論の手助けに……というわけではないが、シーズンオフの話題提供にプロ野球選手の出身地データを取り上げたい。どの出身地の選手が活躍しているのかを調べてるために2019年に一軍で出場した選手を調べてみた。
都道府県に加え、外国人選手の出身国もカウントして出身地別の人数・成績ランキングを作成している(2019年シーズンより)。前回の打者編に続き、今回は投手編だ。

※順位は人数順、同数の場合は勝利数の順。
外国人投手の主流はアメリカ、ドミニカ共和国
出身数ランキングのトップはアメリカ(29人)だ。昨季日本でプレーしたアメリカ出身選手は野手も含めると36人。外国人選手というと、打線の中で日本人選手に足りないパワーで貢献しているイメージが強いが、実はアメリカ出身選手の場合は8割が投手である。
出身地別の成績を見ても、アメリカはインフォグラフィック記載の勝利数(74)、奪三振数(1030)に加え、ホールド数(203)もトップ。最近の外国人選手は来日してから徐々に成長していくパターンや、育成契約からスタートする例も増えてきているが、アメリカ人投手はしっかり「助っ人」の役割を果たしていることがわかる。
海外勢として、アメリカの次に大きな勢力を持っているのはドミニカ共和国だ。出身人数(14人)は11位タイだが、勝利数(39)は6位、奪三振数(514)も9位にランクインしている。
【主な出身選手】
※所属は2019年シーズン
■アメリカ
ジョンソン(広島)、ニール(西武)、メッセンジャー(阪神)、ディクソン(オリックス)
■ドミニカ共和国
ロメロ、ロドリゲス(中日)、ドリス(阪神)、フランスア(広島)
野手人数で圧倒した「野球王国」大阪は……
都道府県別でトップに大阪と福岡(28人)が並んだ。20人以上は兵庫(26人)、神奈川(24人)、千葉(23人)。7位から10位は愛知(18人)、沖縄、東京(各17人)、北海道(15人)と続く。
【主な出身選手】
※所属は2019年シーズン
■大阪
上原浩治、中川皓太(巨人)、塩見貴洋(楽天)、藤浪晋太郎(阪神)
■福岡
今永昇太(DeNA)、梅野雄吾(ヤクルト)、辛島航(楽天)、中村恭平(広島)
■兵庫
能見篤史(阪神)、宮西尚生(日本ハム)、床田寛樹(広島)、甲斐野央(ソフトバンク)
■神奈川
松井裕樹(楽天)、菅野智之(巨人)、青柳晃洋(阪神)、東條大樹(ロッテ)
■千葉
高橋礼(ソフトバンク)、涌井秀章(ロッテ)、上沢直之、加藤貴之(日本ハム)
■愛知
千賀滉大(ソフトバンク)、小川泰弘(ヤクルト)、平井克典(西武)、藤嶋健人(中日)
■沖縄
東浜巨、嘉弥真新也(ソフトバンク)、多和田真三郎、平良海馬(西武)
■東京
山﨑康晃(DeNA)、秋吉亮(日本ハム)、松坂大輔(西武)、岩隈久志(巨人)
■北海道
五十嵐亮太(ヤクルト)、青山浩二(楽天)、玉井大翔、杉浦稔大(日本ハム)
前回の記事で紹介した、野手人数も含めた打者総合のランキングでは大阪(82人)が2位の神奈川・福岡(49人)に33人差をつける圧倒的トップ。「野球王国」と呼ばれるだけのレベルの高さを裏付ける結果となった、だが、投手に絞ると突出した都道府県はなかった。
「投手王国」というような都道府県は見当たらないが、あえて言うなら9位の沖縄と10位の北海道は他の地域に比べ、一軍出場した選手に占める投手の割合が高かった。沖縄、北海道出身者は投手として活躍している選手が多いようだ。
出身地別の成績を見ていくと、都道府県別で勝利数トップの千葉勢(46勝)では、昨季、高橋礼が12勝を挙げて新人王に輝いた。2桁勝利をマークしたのは高橋のみだが、昨季ロッテでプレーした涌井秀章をはじめ、上沢直之、加藤貴之(日本ハム)、高梨裕稔(ヤクルト)、榊原翼、K-鈴木(オリックス)と一軍で投げる先発投手の頭数の多さが目立つ。
広島は出身人数のランキングでは11位タイ(14人)だったが、勝利数(44)・奪三振数(692)で3位に浮上した。高校時代の広島での活躍も印象深い有原航平(日本ハム)、山岡泰輔(オリックス)とエース格が2人おり、リリーフも海田智行(オリックス)、石田健大(DeNA)、田口麗斗(巨人)など充実した投手陣容だ。
一方で、出身投手が少なかった都道府県に目を向けると、5人以下は岐阜(5人)、鹿児島、香川(4人)。富山、高知、愛媛、岩手(3人)、青森、鳥取、徳島、島根、福井、山口、福島(2人)、山梨、長野(1人)。
これら少数派の都道府県の中で、興味深いのは岩手だろう。昨季NPBでプレーしたのが3人だったが、MLBでは菊池雄星(マリナーズ)、大谷翔平(エンゼルス)が活躍した。5人中2人がメジャーリーガーという成功率には目を見張る。さらに佐々木朗希(ロッテ)という新たな岩手の怪物がプロ野球界に飛び込んでくる。
今年はどの都道府県から新たなスターが誕生するのか。選手の出身地にも注目してプロ野球を追っていきたい。