昨季はプロ入り初の二桁勝利
プロ入り5年目の昨季、初の二桁勝利(10勝6敗)を挙げ、チームのリーグ2連覇に貢献した髙橋光成。2018年シーズンは序盤から右肩の状態が上がらず、自己最少の3試合の登板に終わっていたが、昨季は一転。シーズン終盤の9月に右肘を故障して離脱したものの、開幕から先発ローテーションを守り、21試合に先発登板。123回2/3を投げ、同じく二桁勝利を挙げたニールとともに先発投手陣を牽引した。
状態が良かったのは交流戦の6月。3試合に登板し2勝(0敗)防御率1.71と抜群の成績を残した。特に6月14日のヤクルト戦では10安打を浴びたものの粘りの投球を見せ、9回を1失点に抑える好投。3年ぶり4度目となる完投勝利をマークした。
この2月に誕生日を迎えるが、それでもまだ23歳。高卒でプロ入り後、故障で苦しむことが多かったが、そうした試練を乗り越えての二桁勝利は価値があるし、何よりも10勝を挙げたことは自信につながる。身長190cmの恵まれた体格から繰り出す力のある直球は魅力的。今後、西武の先発ローテーションの柱、エース候補の一人であることは間違いない。
対左打者が大きな課題
二桁勝利を挙げたとはいえ、課題は多い。8月以降、故障で離脱するまで5試合に登板しているが、8月17日のソフトバンク戦で7回2/3を投げて6失点。9月7日の楽天戦では6回を投げて5失点と不安定な投球が続いた。6失点した試合でも打線の援護を受けて白星を挙げるなど、8月以降の5試合で3勝(1敗)の成績を残しているが、安心して試合を任せられるという域には達していない。
昨季の防御率は4.51。月別にみると、6月に防御率1.71の好成績を残したものの、7月は7.71(4試合登板)、5月は4.61(5試合登板)、8月に3.86(4試合登板)と少々持ち直したものの、好不調の波が激しかった。
また、対右打者の被打率.252に対し、対左打者が.354と打ち込まれており極端に悪い。ゾーン別にみると、内角高めの被打率が.462、真ん中高めが.375、外角高めが.435と、高めを打たれている。対右打者には直球、得意のフォーク、スライダーをうまく散らしていることが投球割合から分かるが、対左打者になると、右打者に31.5%を投じているスライダーの割合が18.5%にまで下がり、直球が50.3%にまで上がる(対右打者には43.2%)。投球をみていても、直球とフォークの2球種に絞られるため、狙い打たれている印象だ。
高速フォークを活かす投球を
髙橋のウイニングショットは、奪った三振の40%を占めるフォークだ。平均球速は140.2kmと140kmを超えており、高速フォークを投じるオリックス・山本由伸の141.7kmに匹敵するといえる。髙橋は低めで右打者から46個、左打者から19個の三振を奪っており、トータルの奪三振数が90個であるため、3分の2以上の三振が低めということになる。いかにフォークを振らせることができているかが分かる。
しかし、右打者に比べて左打者からの三振が少ないのは課題。力のある重い直球と鋭いフォークを活かすため、山本もそうであるようにカットボールを織り交ぜていくことが必要ではないだろうか。右投手が左打者に投げた場合は内角に食い込ませて詰まらせることができ、ファールでカウントをかせいだり、ゴロを打たせたりしたい時に有効だ。特に今季最速153km、平均球速146.1kmの直球をもつ髙橋がカットボールを多投すれば、打者にとっては非常にやっかいになることは間違いない。
昨季は打線の援護で白星を拾った側面も強かったが、不安定な投球も多かった髙橋。安定感を増すためには、やはり左打者対策というのが大きな課題となるだろう。また、昨季は立ち上がりが順調な時は安心して見られることが多かったが、そうした投球をコンスタントに続けられるようになれば勝ちも自然とついてくる。
身長190cmの恵まれた体格から振り下ろす力のある直球と高速フォーク。球種別にみると、奪空振り率が19.4%と最も高いスライダー。若さを考えても伸びしろはまだまだある。昨季、二桁勝利を挙げたことは自信にもなるだろうし、今季以降の髙橋の成長には要注目だ。
2020年プロ野球・埼玉西武ライオンズ記事まとめ