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名球会「特例枠」で新たに浮上する選手は?きっかけは上原浩治

2020 1/21 06:00楊枝秀基
上原浩治Ⓒゲッティイメージズ

Ⓒゲッティイメージズ

「100勝100セーブ100ホールド」でも入会?

長年、議論が重ねられてきた名球会の会員基準見直しの動きが活発化してきた。これまでは日米通算で打者が2000安打、投手が200勝もしくは250セーブ以上に限定されていた会員資格だが、名球会は新基準の導入を検討。2019年12月に米ハワイで行われた名球会総会で「特例枠」を設けることが決議された。

しつこいようだが、過去にも繰り返し、繰り返し、話し合われてきた。具体的な動きが出始めたのは2018年、オフの名球会総会で上原浩治(元巨人、レッドソックスなど)の「トリプル100(100勝100セーブ100ホールド)」の偉業を認めて入会させてはという議論が起こった。だが、その場では具体的な対応策は出ず、結論を見送った。

翌2019年に会員に対してアンケートを実施。上原に加え数名の選手の名前を列挙し、名球会会員とすることへの賛否を調査した。その中には斎藤雅樹(巨人で180勝)、西口文也(西武で182勝)、石井一久(ヤクルト、ドジャースなどで日米182勝)、日米通算900試合に迫っていた(2019年シーズン中に達成)五十嵐亮太(ヤクルト)らの名前が挙がっていた。

そして、2019年12月に行われた名球会総会では「特例枠」の設置を会員90%以上の賛成票を集め議決。今後、理事会で挙げられた候補者が総会で諮られ、会員の4分の3以上の賛成で適用されることとなった。制度の実施は早ければ2020年になる見込みだ。

大谷が「1000安打100勝」したら?

2019年の総会には体調不調の山本浩二理事長は欠席したため、古田敦也副理事長が議長役を務めた。その場で古田氏が具体例として挙げたのは、日本球界で類を見ない「二刀流」。「(エンゼルスの)大谷くんが1000安打100勝したときに名球会としては価値がないのか?自分の2000本より凄い」と見解を示した。

ただ、古参から若手会員も含めて「数字というものは絶大な判断基準。そこを変えたりというのはゴールポストを動かすようなものなので断固反対」という声もある。191勝の松岡弘(ヤクルト、1968~85年)、187勝の足立光宏(阪急、1959~79年)は認めないのかという問題が出てくるからだ。

250セーブ以上という基準は2003年に導入された。これにより救援投手の会員に佐々木主浩(横浜、マリナーズで日米381セーブ)、高津臣吾(ヤクルト、ホワイトソックスなどで日米313セーブ)、岩瀬仁紀(中日で407セーブ)の3人の会員が誕生した。従来通りの基準で見れば、今後は日米通算243セーブの阪神・藤川球児の会員入りが近いといえるだろう。

1セーブ=0.8勝で計算すれば、山本、大野、斉藤、佐々岡ら浮上

250セーブと200勝を同等と考えるなら1セーブは0.8勝(200÷250)、1勝は1.25セーブ(250÷200)に換算される。となると、あくまで机上の計算ではあるが、以下の投手は基準をクリアしていることになる。

・山本和行(元阪神)116勝130セーブ→220勝
・大野豊(元広島)148勝138セーブ→258勝
・斉藤明夫(元大洋)128勝133セーブ→234勝
・佐々岡真司(現広島監督)138勝106セーブ→222勝
・斎藤隆(元ドジャースほか)日米通算112勝139セーブ→228勝
・小林雅英(元インディアンス)日米通算40勝234セーブ→284セーブ
・藤川球児(阪神)日米通算60勝243セーブ→318セーブ

そんな中でも若手会員から強く出ているのは「上原もそうだし、大谷もそう。誰もやったことのないことをした人は、この場に加わってほしい。2000安打は50人以上いるが400本塁打は20人しかいないし、沢村賞を何度も受賞しているとか、選手としての内容の濃さも考慮に入れるべきではないか」という声だ。

斎藤雅樹は通算180勝でも最多勝に5度輝き、沢村賞を3度受賞している。世界で2人しかいない「トリプル100」の上原浩治や、日米通算905試合登板の五十嵐亮太らとともに名前が挙がっており、「特例枠」での名球会入りも遠くない状況だ。

当初は「昭和名球会」として始まったが、既に平成から令和になった。名球会も変わらなければならない時が来た。将来の大スターが目指す価値のある名球会であるためには、改革が必要かもしれない。

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