2000年代はAクラス入りが「0」
広島は1991年にセ・リーグ制覇を果たして以降、長らく優勝から遠ざかっていた。なんと2000年代の10年間はAクラスに一度も入ることができなかったのである。これは、球団創設間もない1950年代以来のことでもあった。
その呪縛からようやく逃れたのは2010年代後半のことだった。2010年に監督へと就任した野村謙二郎監督が2013年に1997年以来、16年ぶりとなるAクラス入りを果たす。その3年後となる2016年には、2015年からチームを率いた緒方孝市監督が25年ぶりのリーグ優勝を成し遂げたのである。
広島は2016年のリーグ優勝から2018年にかけてセ・リーグ3連覇を果たした。これは球団史上初めてのことであり、セ・リーグでは巨人に続いて2球団目の快挙となっている。
また、2010年代の勝率.516は巨人の勝率.551についでセ・リーグ2位。野村謙二郎監督、緒方孝市監督のあわせ技で強いチームを作り上げた。まさに直前の10年間の鬱憤を晴らすかのような、成績を収めたのである。
連覇が始まった2016年はドラマが多かった
その3連覇の初年度にあたる2016年はドラマが多かった。
連覇が始まる直前の2015年オフ。それまでエースとしてチームを支えてきた前田健太が、ポスティングシステムを利用してロサンゼルス・ドジャースへと移籍した。それまで6年連続で2桁勝利を挙げていたエースの退団もあり、2016年は苦しい戦いが予想されていたのは想像に難くない。しかし、その前評判をものともせず6月上旬に首位に立つと、一度も2位に落ちることなく、ゴールテープを切った。
なかでもセ・パ交流戦終盤から見せた32年ぶりの11連勝は圧巻だった。6月17日から始まったオリックスとの三連戦では、鈴木誠也が3試合連続決勝本塁打を放つ大活躍。緒方孝市監督から「神ってる」と称されたのもこのときだ。
4連敗でゲーム差が4.5となっていた8月7日の巨人戦でも神がかり的な強さを見せた。9回裏2死の時点で6対7と1点のビハインドだったが、菊池涼介がソロ本塁打を放ちまずは同点。つづく丸佳浩が四球を選び、最後は新井貴浩が二塁打を放ち劇的なサヨナラ勝ち。新井は二塁ベース上で渾身のガッツポーズを披露した。
この勢いは終盤まで続き、9月10日の巨人戦に勝利し25年ぶりの優勝を決めたのである。日本ハムに敗れ、日本一にはなれなかったものの25年ぶりのリーグ優勝に広島の街は大きく湧いた。
そしてもうひとつ。日本シリーズを目前に控えた10月18日に精神的支柱でもあった黒田博樹が引退を発表した。この年も規定投球回に到達し、10勝をマークしていたが身体はすでにボロボロ。ユニフォームを脱ぐ決断を下した。
チームの「世代交代」が今後のカギ
リーグ4連覇を目指して戦った2019年は出入りが激しい1年だった。4月半ばから8連勝があったものの、4月末終了時点で12勝15敗と3つの負け越し。このような苦しい立ち上がりだったが、5月から快進撃が始まる。5月11日からの11連勝などで完全に勢いに乗り、球団記録となる月間20勝(3敗1分)をマーク。一気に首位へと浮上したのである。
しかし、6月以降はすべての月で負け越し。最終的に70勝70敗3分と5割はキープしたものの、2015年以来4年ぶりとなるBクラス転落となった。この結果を受け、5年間に渡ってチームを率いた緒方孝市監督は辞任している。
2020年、連覇が終わったチームは中心選手も変化しつつある。黒田博樹、新井貴浩といった精神的支柱はすでに現役を引退。丸佳浩はFAで巨人へと移籍。菊池涼介や田中広輔、會澤翼といった中心選手たちも30歳を超え、ここから急激に成績を伸ばすことは考えにくい。
鈴木誠也を中心に小園海斗や坂倉将吾といった次世代の選手たちが、どれだけの力を発揮できるかが、今後の鍵となってくる。チームの方針から、FA選手の獲得や大物外国人選手の補強は期待薄。
育成のサイクルを回していくことが、強いカープをつくる源となる。今後も2010年代のような好サイクルを回すことができるだろうか。「世代交代」がうまくできるかが、今後のカギとなる。
2020年プロ野球・広島東洋カープ記事まとめ