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リリーバーの資質溢れる西武・平良海馬 喫緊の課題とは

2020 1/11 11:00浜田哲男
西武・平良海馬ⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

シーズン後半にリリーフ陣の一角を担う

2019年、圧倒的な打撃力でリーグ2連覇を達成した西武。投手力を不安視されながらも、クローザーの増田達至、セットアッパーの平井克典らリリーフ陣の健闘も光った。そんな中、シーズン後半から彗星のごとく現われ、増田や平井らと共に必勝リレーの一角を担ったのが今年高卒3年目を迎える平良海馬だ。体重98kgの巨漢から繰り出す直球の平均球速は150.7km。昨年11月で20歳になったばかりの若き右腕は、強打者相手にも全く動じることなく自慢の剛速球でねじ伏せるシーンが目立った。

圧巻だったのは9月6日の楽天戦。強打者の浅村栄斗を迎えるも、2球目に155kmの直球で空振りを奪うと、4球目には外角低めにキレよく逃げていく136kmのスライダーで空振り。5球目には155kmの直球を投じて空振り三振を奪った。1球目のスライダーと3球目の直球はストライクゾーンから大きく外れるなど制球に少々難はありながらも、マウンド度胸とガンガン押していく強気の投球は未来のセットアッパー、クローザーとしての資質を感じさせるに十分なマウンドだった。

プロ入り1年目の2018年シーズンは1軍での登板機会はなく、2軍で投げたのもわずか10試合、防御率は5.40だったが、昨季7月19日にプロ入り初登板を果たすと、以降はリリーフ投手の不足もあり1軍に帯同。8月23日の楽天戦ではプロ初ホールドをマークすると、8月28日の日本ハム戦ではプロ初セーブもマーク。1軍初昇格は7月8日ながらも、その後は26試合に登板してリリーフ陣の一角を担った。

際立つのは球の速さ。8月27日の日本ハム戦では7回から登板し、西川遥輝に対しての5球目に球団史上最速タイとなる158kmをマークした。同試合では15球を投げたうちの13球が直球。そして、その全てが150km超えという圧巻の内容。ソフトバンクの甲斐野央も150km台後半の直球を連発するが、リリーフにこれだけ球の速い投手が出てくると相手チームにとってはやっかいだ。ここ数年、リリーフ陣の整備に苦慮していた西武にとっては、今後も非常に大きな戦力となるだろう。

左打者対策は喫緊の課題

2019シーズンは相手チームもほとんどの打者が初見ということもあり、直球でガンガン抑え込むことができたが、問題は今季以降だ。確かにここぞという場面で強打者を抑え込むシーンが印象的だったが、左打者には被打率.327と打たれていた(対右打者は.261)。昨季23個の三振を奪っているが、16個は右打者から奪ったものであり、左打者は苦手としている感がある。

被打数が少ないためあくまで参考ではあるが、球種別の被打率に目を向けると、カットボールの被打率は.444、カーブは.375、チェンジアップは.667と打たれている。そんな中、スライダーの被打率は.182と好成績を残しており、空振り率も約16%と持ち玉の中では圧倒的に優れた数字を記録。ゾーン別のデータをみると、右打者の外角低めでコース別では最も多い6個の奪三振を記録しているが、同コースへ逃げていくキレ味鋭いスライダーで空振りを奪うシーンは度々みられた。ただ、直球とスライダーを主として押していくスタイルだと特に左打者には厳しい。

昨季最多勝のタイトルを獲得した日本ハムの有原航平は、左打者に有効なチェンジアップの球数を増やした影響もあり、対左打者の被打率は.198に。それまではフォークをウイニングショットとして投じることが多かったが、チェンジアップの球数を増やし、決め球としても使うことで投球の幅も広がった。平良は直球とスライダーが十分な武器となっているが、左打者対策も含めて他の球種も磨くことが課題のひとつとなりそうだ。

いずれにせよ、19歳(2019シーズン中)で立て続けに150km台中盤の直球を投げられること自体が末恐ろしい。来ると分かっていてもバットに当てられない直球、前に飛ばせない直球は大きな魅力。マウンドでの度胸、そして良い意味でのふてぶてしさにもリリーバーとしての資質が漂う。今季も増田や平井らと共にリリーフ陣の一角を担うであろう若き右腕の成長が楽しみだ。

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